金融政策の違いを強調したくない日本
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経済アナリストでSBI FXトレード社外取締役のジョセフ・クラフトが7月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。24年ぶりとなる円安について解説した。
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東京外国為替市場の円相場は1ドル=135円台後半となり、日経平均株価は2万6517円台となった=2022年7月8日午後、東京都港区 写真提供:産経新聞社
24年ぶりの円安ドル高水準
週明け7月11日のニューヨーク外国為替市場の円相場は、円がドルに対して大幅下落して一時1ドル=137円75銭と、1998年9月以来、約24年ぶりの円安ドル高水準を付けた。
飯田)一時、1ドル137円後半までいったということです。現在、足もとも137円40銭台という取引になっています。週明けにどのようになってしまったのでしょうか?
クラフト)基本的にこれまでの流れとしては、日米の金利差の拡大が大きいですね。8日にアメリカの雇用統計が出て、予想よりも堅調な内容となっています。アメリカの中央銀行には2つの使命があります。1つは完全雇用、もう1つは物価の安定です。8日の雇用データから見ると、物価8.6%のCPIに比べて、雇用の方は比較的堅調である。従って米中銀は引き続き利上げを継続していく。逆に11日になって、黒田総裁が異次元緩和を維持していくことを表明し、日米の金利差が開いていくのではないかという目論見から、市場が円売りに転じたということだと思います。
飯田)そうすると、円でお金を用意して、それをドルに変えて運用すれば儲かるぞという。
クラフト)金利差の面で言えばそうですね。12日にイエレン財務長官が来日していますので、おそらくならないとは思いますが、円安が議論の土台に乗るかどうかも注目ですね。
財務省が介入して円安を阻止することは難しい ~アメリカが同意しなければ為替介入はできない
飯田)アメリカではインフレをどうするかということが問題になっています。ただ、あまりブレーキを踏みすぎると雇用にも影響が出るのではないかとも言われています。
クラフト)いい塩梅で利上げを行ってインフレを抑えたいけれども、過度な経済減速にはしたくない。非常に難しいですね。
飯田)ブレーキとアクセルを何度も踏みかえて、というような感じになる。
クラフト)そうですね。日本では財務省が介入して円安を阻止するという見方もありますが、これも厳しい。というのも、アメリカが同意しないと介入は難しいのです。アメリカからしてみると、いまは過度なインフレなので、ドル安はインフレを助長しかねません。そのため、アメリカが同意することは考えにくい。
金融政策の違いを強調したくない日本 ~「日本も柔軟な金融政策を取れる」というメッセージを発信すれば円売りの速度が弱まる
飯田)為替介入して円安を阻止することが難しいとなると、このまま円安基調が続くということでしょうか?
クラフト)基本的には円安基調です。そのペースをどこまで緩められるのか。政府としては、あまり「金融政策の違いを強調したくない」のではないかと思います。
飯田)「基本的には同じ方向を向いている」としておきたい。
クラフト)「日本も、もう少し柔軟な金融政策を取れるぞ」というメッセージを発信すれば、多少は円売りの加速が弱まるということだと思います。そのタイミングがいつなのかが注目されています。