数量政策学者の高橋洋一が7月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozy up!」に出演。7月12日に行われた日米財務相会談について解説した。
日米財務相会談が開催、円安など協議
鈴木財務大臣と来日したイエレン財務長官が7月12日、財務省内でおよそ1時間半会談した。両国は為替市場での急速な円安を踏まえ、為替の問題について適切に協力すると記した共同声明を発表した。
飯田)もともとは7月12日~13日の予定で来日して、15日からはインドネシアで開催される「主要20ヵ国・地域(G20)財務省・中央銀行総裁会議」へ行く予定だったのですが、イエレンさんは1日前倒して11日に日本に入り、安倍元総理のお通夜にも参列したということです。
高橋)私もお通夜と告別式に行きましたが、外国の方も多かったです。私の周りにも、UAE(アラブ首長国連邦)の方でしょうか、政府の方が来られていました。
飯田)アメリカからは、ブリンケン国務長官も急遽、来日しました。
自国通貨安=円安は「近隣窮乏化政策」 ~通常ならばアメリカは文句を言う
高橋)ようやく円安の話が出ました。通常であれば、円安はアメリカにとって、いつも問題にしなくてはならない話なのですが、今回は国際情勢が多くてほとんどスルーだったのです。円安、つまり自国通貨安は、「近隣窮乏化政策」と言われるのですが。
飯田)近隣窮乏化政策。周りを……。
高橋)周りを貧しくさせる。自国通貨安になると、その国はGDPが伸びて、他の周りの国がマイナスになるということなのです。これは否定できないくらい正しい答えです。昔から自国通貨安は近隣窮乏化政策と言われていました。ですから、アメリカは円安になると文句を言ってきたのです。今回はあまり言われなくて、はっきりと言うと「ラッキー」なのです。
円安について日本から言い出すのはおかしい
飯田)今回、鈴木財務大臣の側から為替について言い出したというような報道もありますが。
高橋)本当は出してはいけないのです。日本は円安の側ですから、アメリカが言ってくるのであれば、そのときに対応するのです。こちらから言い出すのはおかしい。
飯田)わざわざ出す必要はなかった。
高橋)出す必要はありません。引き締めをしたい考えの人がいるから、そのような話をするのですよ。
円安でメリットを受けるのは大企業 ~21年度の税収は過去最高の67兆円
飯田)いまは、「円安はダメではないか」と言う人たちもたくさんいるのですが。
高橋)GDPが増えるのに、なぜでしょうか?
飯田)円安になると輸出がよくなり、その分、企業は業績を上げられるという話なのですが、輸入価格が高くなるため「円安はよくない」と言う人もいます。
高橋)しかし、円安でメリットを受けるのはエクセレントカンパニーと言われるような大企業なので、確実に法人税収が増えます。もう増えていますが。結果的に、上場企業で最高益決算が多いでしょう。
飯田)2021年度の税収は67兆円で、過去最高だそうです。
高橋)3月決算に反映されますので、すぐに出てしまうのです。3月決算の企業が多いでしょう。3月決算だと為替の影響がすぐに出てしまう。ほんの少しでもすぐに出てしまうので、税収が増えるのです。
増えた税収を困っているところに分け与えればいいこと
高橋)単純に、増えた税収を困っているところにあげればいいのです。そのくらいの話です。GDPは増えるのですから、対策は簡単です。GDPが減るときの対策は難しいけれど、全体が増えるのであれば、増えたところで必ずいい話がある。例えば税収なら、中小企業や消費者へ分け与えればいいのです。
飯田)円安で厳しい状況のところへ。
高橋)日米協議で日本が話題に出してはダメです。
飯田)アメリカが言ってくるまでは、黙って稼ぐと。
高橋)それが国益です。
飯田)引き締めたい人たちがいるのでしょうか?
高橋)そういう人たちが多いのです。内なる敵なのです。
円安によって増えるGDP
飯田)為替の問題で、よく「日米金利差が」というようなことが言われます。日本の方が金利が低くて、アメリカの方が金利が高いため、「日本円で調達してドルに替え、みんなが儲けるから円安になるのだ」というようなことが言われますが。
高橋)「だからいいでしょう」で終わってしまいます。GDPが増えるのだから結構ではないですか。そのおかげで日本の経済成長率は、さまざまな国際機関の見通しでも、世界のなかで高い方なのです。
飯田)円安のために、世界のなかでも経済成長率が高い。
高橋)円安で下駄を履かせてもらえるのです。「2割くらいの円安になると、2%くらいの下駄を履かせてもらえる」という感じです。こういうときにGDPを1~2%稼げる政策はあまりないので、大きいですよ。私などは(円安については)黙って、ひたすら国益を追求するというタイプです。でも、日本政府のなかには、そうではない人がいるのですね。
ロシアへの制裁についてはG7と歩調を合わせざるを得ない ~日本だけが果実を得ることはできない
飯田)ロシアへの制裁について共同声明も出ていますが、歩調を合わせていくしかないですね。
高橋)G7のなかで合わせないと、日本がいざというときに、G7の方で欧米が助けてくれなかったら困りますからね。ある程度は仕方がないと思います。
飯田)ここの部分は、ロシアからのガスが入ってこないことにもなります。
高橋)確実になります。しかし、ロシアからガスが入ってこないのは織り込み済みです。ロシア国債はデフォルトですから、ロシアに投資した人が大変になるということです。そういう意味で、「日本だけが果実を得るのは難しい」ということは、事実として覚悟せざるを得ません。
原発の再稼働や既存住宅の省エネ改修などでエネルギー対策するべき ~節電、節ガスを要請する必要はなくなる
飯田)アメリカがインフレで、中東にバイデン氏が7月13日から行き、原油調達を調整するということです。日本は日本で、エネルギー事情をきちんとして欲しいというのも、圧力としては掛かってきますよね。
高橋)しかし、国内問題ですからね。バイデン大統領も自分の国内問題があって、いろいろな意味で避けるから、日本には何も言わないと思います。そうなると、日本が原発を再稼働するとか、既存住宅の省エネ改修などで対策した方がいいのです。
飯田)既存住宅の省エネ改修などで。
高橋)対策すれば、省エネを要請しなくても事前にできてしまうではないですか。節電や節ガスを要請しなくて済みます。お金を使わないでやろうとしているから、要請することになるのです。
財政出動しなければ雇用が失われてしまう
飯田)財政出動に対して反対する人などは、「財政出動するとインフレ率が高まる、賃金が上がる。またインフレが高まり、オイルショックのときのようにイタチごっこになるのではないか」と言うような人もいます。
高橋)需給ギャップを解消するまで、そうはなりません。
飯田)いまは需要が低い状態だから。
高橋)低い状態だから、30兆円くらい真水で出しても、簡単にはそうならないということはわかります。
飯田)そのくらい、いまは余裕がある。
高橋)余裕があるというか、出さなくてはいけないのです。出さないと雇用が失われるから。
飯田)それでいいのかという話ですね。
高橋)そうです。そういう議論は数字がないから、そのような話になるのです。
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