ジャーナリストの佐々木俊尚が7月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。離婚後の子どもの親権について解説した。
「共同親権」と「単独親権」
離婚後の子どもの親権は父母の双方が持つべきか、どちらか一方に限定すべきか。離婚後の子どもの養育について検討する法制審議会の家族法制部会は7月19日、父母双方が親権を持つ「共同親権」の導入と、現行の「単独親権」の維持を併記する形で論点整理をした。
飯田)8月末にまとめる中間試案のたたき台という位置付けで、中間試案ができあがるとパブリックコメント、広く一般から意見を募るという形で議論していく方向になります。既にいろいろなことが言われていますが。
佐々木)これは「どちらが絶対にいい」とは言えない難しい問題なので、国会でも議論し、皆さんのパブリックコメントも合わせて、議論を積み重ねるのが大事だと思います。いろいろと言われていますが、単独親権だと、どちらかに親権が完全に移ってしまうので、片方は切り離されてしまうのです。
飯田)親権を一方に限定すると。
佐々木)お母さんの方が親権を取るケースが多いのですが、お父さんに親権がないという状態になると、離婚時にどちらが親権を取るかで争いが起きてしまう。
飯田)そうですね。
佐々木)その争いが子どもに対して影響し、「お父さんとお母さんがこんなに喧嘩している」となってしまうのは可哀想ですよね。
親権のない父親が養育費を払わない ~共同親権にするとDVの親から逃げられない
佐々木)お母さんが親権を取って、お父さんに親権がなくなった状況になっても、お父さんは養育費を払う義務があります。でも親権がないのだから、養育費を積極的に払うという気持ちが薄れてしまう。しかも単独親権の場合は面会交流の回数が減って、ほとんど会えない状況になってしまいます。「会えないのに養育費を払うのか」と言うお父さんも出てきてしまい、母親が養育費を払えないという状況が続いてしまうような問題もあります。
飯田)父親からの養育費が届かないので。
佐々木)共同親権であれば、面会交流も拒否できなくなるわけです。それなら共同親権にした方が、お父さんもお母さんも子どもに会えるというメリットはあるのではないでしょうか。
飯田)共同親権であれば。
佐々木)ただ、一方でデメリットもある。よく言われているのは、DVやハラスメントです。お父さんがお母さんを殴ったりしている状況の場合、共同親権だと、そこから逃れられなくなってしまうという問題があるのです。それならば単独親権の方がまだいいのではないかという話もあります。
それぞれのメリット、デメリットを計算する必要がある
佐々木)また、常にお父さんとお母さんがいるということになれば、子どもにとってはどちらがいいのかわからない。「自分はいったい誰の子どもなのだろう」と、遠くに離れたお父さんとお母さんが両方いることに対して、割り切れなさのようなものが残るのではないかと、懸念を口にする人もいます。
飯田)なるほど。
佐々木)「海外では共同親権が当たり前なのだから、海外に合わせろ」と言うのは乱暴すぎるのではないでしょうか。両方のメリット、デメリットを計算する必要があるということだと思います。
欧米での共同親権のメリット、デメリットの現状を踏まえて研究する必要がある
飯田)現行の単独親権であっても、きちんと「安全に会える機会をつくる」という担保ができるかも知れないし、共同親権にした方がいいのかも知れない。まだリスクとデメリットにおいて、「双方のメリットを強調する部分がある」ということですかね。
佐々木)海外で「共同親権が一般的だ」と言うのであれば、実際にヨーロッパやアメリカでどういうメリット、デメリットが出ているのかということを具(つぶさ)に調べることが必要だと思います。
飯田)実際に起きているメリット、デメリットを。
佐々木)未だに日本は欧米信仰が根強くて、「海外でやっているのだから、そうすべきだろう」となるのだけれど、そうではない議論を行うべきだと思います。
子どもの意向を聞き、ケースバイケースでどちらかを選択する
飯田)「子どもの意向をどこまで尊重するのか」というところにも関わってきますよね。
佐々木)子どもの側から見ると、単独親権でお父さんかお母さんのどちらかについている方がいいのか、離婚しても常にお父さんとお母さんが両方いる方がいいのか。議論する側には「単独親権でお父さんとお母さんがバラバラに住んでいるのを見せられるよりは、1人の方がいいのだ」と言う人もいるし、逆に「両方いる方がいいのだ」と言う人もいます。しかし、それはお互いのメリットを声高に言っているだけであって、子どもの目線がありません。
飯田)子どもの目線が。
佐々木)ケースバイケースなわけです。どちらが正しいというよりも、もう少し単独親権と共同親権のハイブリッドのような形で、いいとこ取りができる制度設計はないのでしょうか。
飯田)ケースバイケースで、どちらかを選択できるやり方がいいのかも知れません。
佐々木)子どもの意向も聞きつつということですよね。
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