「経済安保版2プラス2」とも言える内容の日米経済版2プラス2
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東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が7月28日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。7月29日に予定されている日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)について解説した。
日米経済版「2プラス2」が開催へ
日米両政府は経済分野の議論を行う外務・経済閣僚による日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)の初会合を、7月29日に米ワシントンで開催すると発表した。日本からは林外務大臣と萩生田経済産業大臣が、アメリカからはブリンケン国務長官とレモンド商務長官が出席する。
新行)日米の経済版2プラス2ですが、どうご覧になりますか?
井形)日本は2~3年前から経済安全保障対策を強化しているのですが、国内だけではなく、外交でも重要視していこうということです。
新行)外交でも重要視する。
「経済安保版2プラス2」とも言える内容
井形)日本とアメリカの間で「経済版2プラス2」という言い方になっているのですが、実は「経済安保版2プラス2」と言ってもいいのではないかなと思えるような内容になっています。
新行)経済安保版2プラス2。
井形)半導体の問題をどうするのか、レアアースを含む鉱物資源のサプライチェーンをどのように構築していくかという話や、先端技術をどう守るのかというような、経済安全保障として語られている内容を、日米でも協力できることがあるのではないかという方向で議論する場になっています。
サプライチェーンにおける強制労働に関するルールのたたき台を日米経済版「2プラス2」でつくる
新行)いろいろなことについて話し合うとは思うのですが、人権の部分について、サプライチェーンにおける強制労働の問題もあります。
井形)6月にアメリカは「ウイグル強制労働防止法」を施行しました。これは何かと言うと、もし日本でつくっているTシャツの綿が「新疆ウイグル自治区から来ています」ということになると、サプライチェーンの一部に新疆ウイグルが入っていることになります。それに対して、アメリカ政府としては「新疆ウイグルでつくられたものは強制労働を使ったとみなします」と言ってしまう法律なのです。
新行)ウイグル強制労働防止法。
井形)そのTシャツを日本からアメリカに輸出しようとすると、「これは強制労働でつくられたものなので、輸出できません」と止められてしまうという、すごい法律なのです。
新行)輸出できない。
井形)そうなると日本としても困りますし、アメリカの企業も困っているのです。なかには、「我々は新疆ウイグル自治区に工場があるかも知れないけれど、その工場が強制労働を使っていないことを証明できます」という企業もあるのです。
新行)新疆ウイグル自治区に工場があっても。
井形)そうすると、どのくらいの証拠があれば強制労働が使われていないと認められるのか。また、サプライチェーンをチェックする際に1次でいいのか、2次でいいのか、それとも原材料までしっかり見ないとダメなのかなど、「ルールを一緒に決めていきましょう」ということを日米の「2プラス2」で話し合うのだと思います。
日米で決めたルールを民主主義国間のルールに発展させる ~日本がリーダーシップを示すことに
井形)G7でも去年(2021年)、サプライチェーンにおける強制労働の問題について、「我々で何かしらのアクションを取るべきだ」ということは合意しています。
新行)G7でも。
井形)日米である程度ルールのたたき台をつくり、それをG7のルールにし、民主主義国間のルールに発展できるのであれば、「日本がリーダーシップを示して国際的なルールをつくった」ということになります。そのようなたたき台をつくれる場にして欲しいと思います。
インドから買った綿が「実は新疆ウイグル自治区の綿だった」ということもある
新行)強制労働がサプライチェーンに入っていないかどうかを見ていくという部分では、日本の企業も関わってきますよね。
井形)最近の報道を見ると、「我々は新疆の綿を使うのをやめました」と宣言する企業も増えてきたようですし、ビッグデータやAI分析を使って「サプライチェーンを可視化するサービス」を提供するところも増えてきています。
新行)そういう形で、自分の企業の目が届いていない部分を解消していく、改善していくということですか?
井形)ある中国の中間業者が、「いやいや、我々の綿は新疆ウイグル自治区から来ていないですよ」と言って、それを信じて買ったとしても、実は裏で新疆ウイグルの綿を使っていたということもあり得るのです。
新行)中間業者がそう言っても。
井形)イギリスのシェフィールド・ハラム大学の方が最近出した報告書を見ると、中間業者が綿のロンダリングを行っていて、新疆ウイグル自治区の綿がまず中国の中間業者に行く。それがバングラデシュやインドなどの第三国へ行き、その第三国に行ったものを日本企業や欧米企業が買う。「我々は中国から買っていない」と思っていても、実は辿っていくと新疆綿を使っていたということが、オープンソースで一般の研究者がその証拠を握ってしまえるような時代になっているのです。そうなると、日本企業としても「知りませんでした」とは言えなくなってしまいます。
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