巡航ミサイルを1000発配備しても、中国との「ミサイルギャップ」を埋めることにはならない

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筑波大学教授の東野篤子が8月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。政府が1000発以上の保有を検討している長射程巡航ミサイルについて解説した。

巡航ミサイルを1000発配備しても、中国との「ミサイルギャップ」を埋めることにはならない

台湾島周辺で空前規模の実戦的合同演習 東部戦区〔新華社=中国通信〕=2022年8月5日 中国通信/時事通信フォト

長射程巡航ミサイル

政府が中国への抑止力として導入を決めている長射程巡航ミサイルについて、1000発以上の保有を検討していることがわかった。台湾有事も念頭に南西諸島から九州を中心に配備し、弾道ミサイルを多数配備する中国との「ミサイルギャップ」を埋める狙いがある。

中国とのミサイルギャップを埋めることにはならない

飯田)複数の政府関係者の話として昨日(8月21日)、読売新聞が1面で報じています。こちらは巡航、相手は弾道というところですが、これでギャップは埋まるものなのですか?

東野)この記事ですが、既にいろいろなところから首を傾げるような動きが、特に安全保障の関係者からは出ています。いくつか論点はあるのですが、2つだけ申し上げます。先ほどおっしゃったように中国は弾道ミサイルを持っていますが、日本は巡航ミサイルということで、もともとミサイルの種類が違うのです。それではミサイルギャップを埋めたことには恐らくならないと思います。

飯田)ミサイルギャップを埋めることにはならない。

東野)これをもって「ミサイルギャップを埋めることを目指す」と言い切ってもいいのかどうかということです。

何をもって「ミサイルギャップ」と言うのか ~もう少し多くの情報が必要

東野)もう1つ、この記事に書かれていたのが、対艦ミサイルの長射程化ということです。紙面を割いて書かれています。必要なことなのですが、これもまた、ミサイルギャップには関係がないということです。

飯田)長射程であっても。

東野)何をもってミサイルギャップと言うのかということで、さまざまな情報としては正しいのでしょうが、今後、どういう議論として整理するのかに関しては、もう少し私は情報が出てくるのを待ちたいと思っているところです。

飯田)情報がもう少し欲しい。

東野)こういう場合、どんな説明をするのかということは非常に大事なことで、あまり議論が混乱したまま進むのはよろしくないだろうと思います。

もう少し整理した政府からの説明が必要

飯田)階層として長射程の巡航ミサイル、対艦ミサイルを撃つとなると、それは「そこに入って来られなくする」という戦術的な概念です。一方で弾道ミサイル相手にと考えると、かなり戦略的な部分になります。

東野)そうですね。

飯田)このままだと、階層が違う議論を無理やりひとまとめにされる可能性があります。

東野)単純に数が増えればギャップが埋まるというような話ではないわけです。記事の書き出しも、巡航ミサイル1000発以上の保有を検討しているのだと、これがミサイルギャップの解消なのだというような書き方にも読めます。

飯田)そうですね。

東野)もう少し整理した理解が、我々の方としても、また政府側の説明としても必要なのだろうと思います。

ウクライナ戦争をきっかけにこのような議論が盛り上がることを日本への警鐘として活かすべき

飯田)あえて弾道ミサイルに触れていないのか、それは記事の書き方にもよりますが、弾道ミサイルの話をしてしまうと「専守防衛からはみ出してしまう」というような思惑が、チラチラ見えるような気がするのですが。

東野)それはおそらくあると思います。また、いますぐ現実的に可能かと言うと、そうでもない部分もあるというような、苦しいところもあるのだろうと思います。

飯田)かと言って、外からおいそれと持ってくることができるものでもない。ロシア、北朝鮮、中国と、これだけ核弾頭も載せられるミサイルをたくさん持っている国があるなかで、日本をどう守るかということは、喫緊の課題です。

東野)ただ、やはりウクライナ戦争をきっかけとして、よくも悪くもこうした議論が盛り上がっている。戦争は決して起きてはならないことですけれど、日本に対する警鐘として、これは活かさなければならないと思います。

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