ジャーナリストの佐々木俊尚と、衆議院議員の平将明が9月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国連人権高等弁務官事務所が発表したウイグル報告書について解説した。
国連のウイグル報告書
国連人権高等弁務官事務所は8月31日、中国新疆ウイグル自治区を視察した結果をもとに、新疆の人権状況をまとめた報告書を発表した。報告書はウイグル自治区で「深刻な人権侵害」が発生していると指摘した。一方、中国外務省の汪文斌副報道局長は報告書について「偽情報のごった煮」であり、まったく信頼性がないと主張した。
飯田)バチェレさんがトップを退任するタイミングで、この報告書が出てきたという形です。中身としては、これまで報道されてきたことがある意味、国連のお墨付きになったということですか?
佐々木)そういうことですよね。ウイグル、チベット、あるいは香港や台湾もすべて、中国は「内政問題」として対処しようとしています。これはまさしくロシアがウクライナについて、他国ではなく「旧ソ連だったところに侵攻しているだけだ」と言っているのと同じ構図です。
飯田)そうですね。
佐々木)強権国家というのは領土を拡張しながら、内側へ内側へと向かい、自分たちの支配の論拠にしていく。そういう構図は非常に似ているなと思います。
国連に代わる新たな国際秩序をつくる必要がある
飯田)中国に対して、日本はどのような関係性を持てばいいのでしょうか?
平)まずはロシア・中国を含め、国連の常任理事国が機能していないということです。それを我々は真剣に考えなければいけません。
飯田)国連が機能していない。
平)いままではアメリカが強かったから何とかなってきたのだけれども、アメリカも相対的に力が弱まっているので、新しい国際秩序を考える必要があると思います。
飯田)新たな国際秩序を。
NPO、NGOと連携しながらウイグルへの人権侵害に関心を持ち続けることが重要
平)一方で国連幻想があるのですが、国連は世界政府ではないので、強制力はありません。それで各国がせめぎ合いをしている現実がある。まず、いちばん大事なのはウイグルへの人権侵害に対して関心を持ち続けるということです。
飯田)関心を持ち続ける。
平)例えば「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」という力のあるNGOでは、日本の土井香苗さんが高いリーダーシップを取っています。そういうNPOやNGOと連携しながら、関心を持ち続けることが重要だろうと思います。
国連に代わる組織を議論しながら、国連も存続するという多重構造にしていく
佐々木)平さんがおっしゃった国際秩序をどうするかということは、なかなか難しい問題です。「G7をベースにロシア・中国を排除した国際秩序を」ということを言う人もいますが、結局それは対立を煽るだけであって、秩序にはならなくなってしまう。どのように中国・ロシアを抱え込みながら、機能しない常任理事国システムではない新しい国際秩序をつくるかというのは、なかなか難しいですよね。
平)多層構造と言うのでしょうか。国連が全部やるとか、アメリカが有志国と全部やるというよりは、ミルフィーユのようにいろいろな構造をつくっていくということだと思います。
飯田)ミルフィーユのように。
平)1つ言えるのは、「常任理事国が核兵器を持っていい」というのは、あの5ヵ国で世界秩序を守るという前提にあるのです。だから「核不拡散」として一応、大義が立つのです。
飯田)これまでは。
平)しかし今回、ロシアが核を脅しに使っている時点で、戦後の秩序を自ら崩壊させている。そういった意味では、国連に代わる組織についても議論しながら、だからと言って国連をやめるということではなく、多重構造にすべきだと思います。
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