ロシアがザポロジエ原発を占拠する「本当の理由」

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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也と、青山学院大学客員教授でジャーナリストの峯村健司が8月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシア軍が占拠しているウクライナのザポロジエ原子力発電所について解説した。

2022年4月27日、議会関係者との会合で演説するプーチン大統領=ロシア・サンクトペテルブルク(タス=共同) 写真提供:共同通信社

ウクライナのザポロジエ原発をめぐり、松野官房長官が国際原子力機関(IAEA)の取り組みを後押ししたいと述べる

ロシア軍が占拠し砲撃が続いているウクライナ南部ザポロジエ原子力発電所で、原子炉から約100メートルにある廃棄物の管理や水処理などを担う特別な建物が被弾した。国際原子力機関(IAEA)は声明で、原発で安全を保つシステムは稼働しており、放射線量の増加や水素漏れを示すデータはないとしている。こうしたなか、IAEAのグロッシ事務局長は8月29日、ザポロジエ原発に派遣団を率いて「いま向かっている」とツイッターで明らかにした。現地での活動は今週末に実施する方針。このような動きについて、松野官房長官は29日の記者会見のなかで、「取り組みを後押ししたい」と述べた。

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松野官房長官)我が国はウクライナにおける原子力施設の安全等の確保に向けたIAEAの継続的かつ不断の努力を評価しており、引き続きG7各国と緊密に連携しつつ、IAEAの取り組みを後押ししていきたいと考えております。

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飯田)IAEAの調査団をどのように入れるのかで揉めていましたが、何とか動き出したというところです。

野村)本当に危機的な状況だと思います。我々は福島の原発事故を経験していますが、わかっているのは、電源がないときの恐ろしさですよね。

飯田)電源が送られなくなったときの。

野村)周りには送電線がありますが、そこが被弾して電気が送られなくなったときに、何が起こるのかということです。

原子炉は動かす人が命 ~これから冬になり、電力が足りなくなるというところも人質にするロシア

野村)また、あまり報道などでは言われていませんが、実は原子炉は動かす人が命なのです。その方々が負傷したり亡くなったりしているという報道があります。ローテーションを行いながら、緊密な計画のもとで原子炉は動いているものなので、人員を欠くということの恐ろしさについて、「ロシアは一体何を考えているのだ」という気がします。

峯村)ザポロジエ原発は欧州で最も大きい原発で、総出力は600万キロワットになります。もし冷却装置などに不具合があれば、一気に大事故になり欧州にも被害がでかねない。ロシアは二つの意味で原発を「人質」にしているのです。

飯田)2つの意味で。

峯村)1つは事故になるかも知れないということと、もう1つは電力です。これから冬になり、欧州では段々と電力が足りなくなってくるという状況になっています。「電力不足」を人質にしているのです。二重の意味で深刻な問題がありますから、国際社会として団結し、「このようなことはやってはいけない」というメッセージを出す必要があると思います。

原発を軍事利用するロシア ~戦争中でも原発は管理して運用しなくてはいけないという約束を、国際社会のなかで守っていかなければならない

野村)原子炉の周りでは、蒸気の力でタービンを回して発電しています。ロシアはそのタービン建屋のようなところに武器を隠しているようです。そうすれば攻撃されないではないですか。ウクライナがいくら武器に向けて攻撃しようと思っても、そこに隠してしまえば攻撃されない。最大の隠し場所として扱っているのです。

飯田)原子炉の近くに武器を隠す。

野村)原発というものを、場合によっては核爆弾に準ずる兵器として利用したり、格納庫として使っている。これは軍事利用です。国際社会のなかで、戦争中であったとしても原発はきちんと管理、運用しなければいけないという約束事を守る必要があると思います。

ヨーロッパがウクライナに軟化を促す契機にする狙いも

飯田)ウクライナとロシアの双方が「向こうから攻撃してきたのだ」と言っています。一部、日本の国会議員の方でも、「ウクライナの持ち物なのだから、占拠しているところを攻撃することはあり得ないだろう」というような内容を書く人もいます。しかし、ロシアはそういう常識が通用するような国ではありませんよね。

峯村)そもそもロシアが攻めてきているわけですので、どちらが占拠していて、どちらが悪いのか、という話ではないのです。ロシアの侵略行為が問題なのです。ロシア側は「原子炉の屋根に穴が空いている」というようなことを言っていますが、これまでの状況を見ていると、ロシアは自作自演のようなことをやっている可能性が高いと思います。

野村)偽旗の可能性がものすごく高いですし、エネルギーを抑えることによって戦争を有利に持ち込もうという動きは強いです。今回も冬という季節を意識していて、冬に電力がないという状況がどれだけ過酷かわかっているので、そこを人質にとっている。

飯田)冬ということを。

野村)また、ヨーロッパにも本来は電力が連携して提供されるのですが、それをすべて断ち切ることにより、ウクライナを動揺させる。つまり、ヨーロッパがウクライナに軟化を促すための契機にしようという動きが強いです。

2022年7月19日、イラン首都テヘランで会談し、握手するロシアのプーチン大統領(右)とトルコのエルドアン大統領(タス=共同) 写真提供:共同通信社

節目を迎えているロシアとウクライナの戦い ~ヨーロッパの「ウクライナ疲れ」を助長し、長期戦に舵を切るロシア

飯田)天然ガスの話もそうですが、ロシアはヨーロッパに圧力を掛けています。ドイツやフランスは、どちらかと言うとそちら側になびいてきてしまっているのかな、とも思えます。「和平を促す」というような方向になっています。

峯村)「ウクライナ疲れ」をわざと助長するような動きにも取れますし、ロシアとしては長期戦に舵を切ってきています。どちらが音を上げるかという持久戦に移行しつつあり、今が欧米や日本にとってみれば正念場です。

日本にもエネルギーで攻撃するロシア ~原発再稼働の問題に向き合わなければならない

野村)エネルギーの話で言うと、日本にもエネルギーで攻撃してきているのです。サハリン2の話もありますし、国際的にエネルギー不足になるからということで、我が国が天然ガスを最も輸入しているオーストラリアの方でも、輸出規制を掛けざるを得ない状況になってきています。

飯田)オーストラリアでも。

野村)そうなると、我々は原発再稼働の問題を真剣に考えざるを得ない状況になってきます。これは物価高にも影響しています。物価高対策でもあるし、貿易赤字が燃料の購入によって生じているので、それを解消すると円安対策にもなります。やはり原発の問題に向き合わなくてはならない。ただ、再稼働の問題については安全性がいちばんですので、福島原発のような沸騰水型のものについては、未だ1基も動いていません。

避難計画について、自治体の理解を促進させるための政策をもう1本打たないと再稼働は難しい

野村)それをどうするのかという問題と、避難の問題もあります。避難の問題についての信憑性が原子力規制委員会によってチェックされていないのです。原子力規制委員会は原子力の技術だけを見ていて、「避難の話はアウトオブミッションだ」と言っています。

飯田)各自治体にお任せするというような。

野村)ここは国がきちんと前に出て、避難計画の認証、「これで大丈夫だ」というお墨付きを与える。そのような仕組みを一刻も早くつくらないと、自治体と電力事業者だけで向き合っていてはダメだと思います。

飯田)特に東海第二原発については、周りの人たちを合わせると、避難対象は100万人にのぼるのではないかということも言われています。

野村)まさにその通りです。避難計画についての自治体の理解を促進させるためにも、政策をもう1本打たないと再稼働は難しいと思います。

中間選挙で大負けすることが予想されるバイデン政権 ~アメリカに頼るだけでは厳しいフェーズになる可能性も

飯田)国内の話とウクライナの話は、すべてつながっているということですね。アメリカは大きなプレイヤーですが、バイデン政権はどうなのでしょうか?

峯村)アメリカもガス供給を積極的に行おうという話になっていますが、1つ気を付けなくてはいけないのは、中間選挙が控えているということです。おそらく与党・民主党が大負けするだろうと言われています。

飯田)民主党が。

峯村)そのような状況で、いろいろと意思決定が遅れたり、内向きになってしまったりする可能性もあります。「あとはアメリカさん、よろしく」ということだけでは厳しいフェーズになってくるかも知れません。

飯田)価値観を同じくするところで、やれることはみんなでやらないと、ということですね。

峯村)そう思います。

飯田)我々にとって原発というものは、1つ助けることになるかも知れない。

野村)そこで議論になるかも知れませんし、中国が出てきて、ロシアの売り先がないのなら「安く買ってあげるよ」という感じで漁夫の利を得ようとしているところもあると思うので、注意して見ていかなければなりません。

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