外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が9月9日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。インドという国について解説した。
日本とインドが防衛相会談
浜田防衛大臣は9月8日、インドのシン国防相と会談した。東シナ海や南シナ海で軍事的な影響力を強める中国を念頭に、力を背景とした一方的な現状変更の試みに強く反対し、国際法の順守が重要との認識で一致した。
新行)宮家さんは昨日(8日)の産経新聞のコラム「宮家邦彦のWorld Watch」でも、インドについて書いていらっしゃいます。
これまで謎が多かったインド
宮家)インドという国がどういう国かと言うと、私はアラビア語も中国語も勉強したけれど、インドだけは住んだこともないので実は謎の国だったわけです。ヒンズー教の寺院に行っても、多神教で混沌としていますよね。この国をどう理解すればいいのかということをずっと考えていました。更に、日米豪印4ヵ国の協力枠組み「クアッド」ができましたね。
新行)クアッドが。
宮家)日印防衛大臣会談も、ある意味では画期的なことです。もともとインド亜大陸は、インド洋に大きな大陸と小さな亞大陸があり、それがユーラシア大陸にぶつかってヒマラヤができ、インドが形成されていくのですけれど、インドは海洋国家なのか大陸国家なのか。また非同盟と言うけれど、同盟はないのか。中国とも関係を持っているし、ロシアからは石油を買っている。一体どういう国なのかということがずっと謎だったわけです。
なぜインドが重要な国なのか ~彼らは「力強く独立したインド」を求めているだけ
宮家)クアッドができて、確かに安倍晋三さんが考えた通りインドは重要な国なのだけれど、「なぜ重要なのか」ということをずっと考えていました。
新行)インドがなぜ重要なのか。
宮家)最近ワシントンに行ったときに、インド生まれのインド系アメリカ人とゆっくり話す機会がありました。「インドはどういう国なのですか?」と聞いたところ、「簡単です。インドの戦略は強力な独立したインド、力強く独立したインドを求めているだけで、それ以上でもそれ以下でもありません」と言うのです。「なるほどね」というのが私の率直な印象です。
中露も日米も同盟国ではない ~「強く独立したインド」を脅かす存在になりつつある中国
宮家)「強く独立したインドということだけを求めている」と考えれば、同盟国など必要ないのです。彼らにとっては、中国もロシアも同盟国ではありません。もちろん、アメリカも日本もそうです。なぜならば、彼らの関心は「独立した強いインド」だから。
新行)独立した強いインドであるから。
宮家)しかし、それを侵すようなものについては、当然のことながら反発する。実は中国が強く独立したインドを脅かす存在になりつつあるのです。かといって他の国とは違い、同盟国をつくって何とかしようとするのではなく、あくまでも独立して、中立な部分は中立なままで動く。
インドが真ん中にいて中露側に行かなければいい ~こちらへ来ることを期待しない
宮家)そう考えれば、クアッドすなわち日米豪印の枠組みは、決して軍事同盟ではない。確かに防衛大臣同士が話をするのは大事ですが、軍事同盟を組むことを前提としているわけではないと思います。
新行)軍事同盟を組むことを前提としてはいない。
宮家)インドが求めているのは、中国に対抗するために選択肢を広げたいのだと思います。その観点で言うと、インドを同盟国にするためにクアッドをつくったのではありません。クアッドにインドを関与させることで、インドがこちらに来ることを期待するのではなく、インドが真ん中にいて向こうに行かないでくれればいい。
新行)中国・ロシア側に。
宮家)そういう存在だということがわかって、重要な国だということを再確認しました。インドカレーも美味しいですし、文化もすごいものがあります。インドがすごい国であることを見直して、関係をさらに深める価値のある国だと思いました。
インドはインドらしくしていてくれればいい
新行)つなぎとめておくことが大切だということですか?
宮家)インドはインドらしくしていてくれればいいのです。そうすれば中国やロシアの方へは行かないですから。そう考えればインドとの付き合い方が見えてくることが、最近やっとわかりました。私はウルドゥー語やヒンディー語などを話せないので、言葉を勉強しないことには、その国のこともわからないですよね。せいぜい数年は住まないと、その国のことはわからないというのが私の主義なので、中東は少しやったし中国もアメリカも少しやったけれど、インドはまだ謎の国なのです。それでもやっと光が見えてきました。またインドに行かなくてはと思います。
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