ジャーナリストの須田慎一郎が10月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田内閣の経済対策について解説した。
真水ベースでどれだけの財政出動が行われるのか ~30兆円は必要
飯田)経済対策について岸田政権は9月30日、閣僚に対して閣議で指示したということです。人への投資など、さまざまなメニューが出ていますが、どんなところがポイントになりますか?
須田)唯一の焦点は、「真水ベースでどれだけの財政出動が行われるのか」というところにかかっていると思います。新型コロナ感染症の収束が遅れたこともあり、個人消費もまだまだ少ないですし、企業の投資も思わしくない状況です。
飯田)個人消費も企業投資も。
須田)やはり公的セクターが需要を支えていくことは必要です。日本がデフレ基調から脱出できないのは、圧倒的な需要不足だからです。では需給ギャップがどれだけあるのかと言うと、皆さんが認識している通り、30兆円です。
飯田)30兆円。
須田)これを「埋めるのか埋めないのか、どの程度埋めるのか」ということがポイントです。ですから、大規模な実額ベースと言ったらいいでしょうか。これについては茂木敏充幹事長が「15兆円くらい」と小刻みにしていますが、それでは圧倒的に足りませんよ。
飯田)15兆円では。
須田)自民党内の積極財政派は、参議院選挙前に当時の高市早苗政調会長に対して、「真水で50兆円規模の財政出動を」という提言書を提出しています。のちに政調会長が代わりましたが、まだそれは生きているわけです。では、「真水ベースでどれくらいの規模が出てくるのか」というところが、1つの焦点だと思います。
飯田)よく数字で出てくるので、真水……実際の政府の財政出動でという部分と、もう1つ、事業規模のものがあって、要は事業規模で30兆円。そうすると、企業投資なども全部ひっくるめた話になってしまいますよね。
須田)利子補給で「1億円出しました」となれば、利子分でその100倍、100億円という事業規模ベースで計上してしまうわけです。
飯田)なるほど。
須田)「本当に借りるのか?」と。それは「お金の総量が増えているわけではないよね?」ということになりますから、何の意味もない。ですから「真水ベース」というところを、ぜひ見ていただきたいのです。
10月末に補正予算が成立しても年内には間に合わない ~「全国旅行割」が活用されるための体制を取る必要がある
須田)もう1つ、隠されたポイントがあります。10月上旬から補正予算の審議が始まりますが、どう急いだとしても、成立するのは10月末です。過去の経験則から考えると、それが世の中に出回り始めるには、最短でも2ヵ月かかるわけです。
飯田)予算をつけて、すぐに使うわけにはいかないですものね。
須田)仮に10月末に成立したとしても、年内には間に合わないのではないでしょうか。
飯田)年内に間に合わない。
須田)そうなのです。これから年末に向けて大丈夫なのでしょうか。予算執行を伴わない形で政策を総動員して、失速を防ぐ必要があります。例えば、名称が「全国旅行割」に変更されるらしいですが、「Go To トラベルキャンペーン」です。その予算、制度があるわけですから、「Go To キャンペーン」を行う。
飯田)去年(2021年)か一昨年の予算がついていて、それが執行停止になっているわけですものね。
須田)11月末~12月頭にかけて、秋の行楽シーズンは紅葉の時期です。そこで使われるような、活用してもらえるような体制を取る必要があるでしょうね。
「全国旅行割」が10月の3連休後からスタートするのは菅政権での失敗がトラウマに
飯田)報道ベースだと、10月11日からスタートするということですが、8日~10日の3連休が終わった直後に開始となります。なぜこうなるのでしょうか?
須田)菅前総理の失敗がトラウマになっているのです。2021年にGo To キャンペーンを再開したとたん、感染者が増加してしまった。結果的に「拙速なGo To 事業の再開によって国民の命がリスクにさらされた」というような報道が出て、支持率が下がるということがあったではないですか。
飯田)同じようなことにはなりたくないと。
須田)岸田総理には、覚悟を決めて欲しいと思います。大丈夫ですから。
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