ジャーナリストの佐々木俊尚が10月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。10月1日に設立された「日本ファクトチェックセンター」について解説した。
日本ファクトチェックセンター
偽情報や誤情報対策を行うファクトチェック機関「日本ファクトチェックセンター」が10月1日に設立された。日本ファクトチェックセンター(JFC)はGoogleとヤフー株式会社の支援を受けており、テレビや新聞は対象外となっていることが議論を呼んでいる。
飯田)テレビというか、電波、新聞は対象外と出ています。
テレビや新聞の報道が対象外となる理由
佐々木)誤解されているところがあるのですが、「Google、ヤフーの支援」と書いてあるでしょう。Googleやヤフーの支援ということは、ニュースなど、いろいろなインターネット上の言論のプラットフォームになっているわけです。
飯田)そうですね。
佐々木)そういうプラットフォーム企業は、ネット上のSNSなどで広まるいろいろなデマを含めて、「どこまで責任を持つのか」という難しい議論があります。
「なぜ新聞、テレビは除外なのか」をもう少し説明するべきだった
佐々木)実際、ヤフーが中心となっている「セーファーインターネット協会」という、インターネットの安全について考える協会があります。そこが「Disinformation対策フォーラム」という、間違った情報に関してのフォーラムを設置して公表したのです。ただ、そこでは「新聞やテレビなどの報道機関についてはまた別の話だ」ということを言っているわけです。
飯田)新聞、テレビでの情報は。
佐々木)それを背景にして、ファクトチェックセンターでは、「報道機関という統制された機関ではないネットで広まってしまうデマをどうするか」というところを、まず取り上げる流れになっています。だから報道機関は除外するという話なのだと思います。
飯田)統制されている報道機関は除外と。
佐々木)その流れを知っていれば「そうなのだろうな」と思うけれど、「ファクトチェック」という名前を全面に出して、それだけをネット上で見ると「なぜ新聞、テレビは除外なのか」という疑問が出てくるのは当然です。そこはもう少し説明した方がよかったのではないでしょうか。
ネットやSNS上でのデマは専門家が否定して「正しく公正な解答」が提示される
佐々木)実際にDisinformation対策フォーラムでの報告書には、「新聞やテレビなどの報道機関は、日々の取材や発信内容の多重チェックを通じて健全かつ多元的な言論空間を支える役割を担ってきたけれど、インターネットやSNSでは、それに比肩するシステムが不十分であるとの現状認識がある」と書いてあります。
飯田)インターネットやSNSではシステムが不十分であると。
佐々木)この認識が正しいかと言ったら、「正しくない」と思うのです。難しいのですよね。インターネットはすごく広大な世界で、テレビや新聞のように小さくありません。もちろんデマやフェイクニュースもたくさんあって、それを信じ込んでいる人もたくさんいるのだけれど、一方ではデマが広がった瞬間、追い打ちをかけるように専門家が出てきて強く否定するのです。
飯田)ある意味、専門家が自発的にファクトチェックしてくれているところがある。
佐々木)注意深く見ていれば、デマは否定されていますし、正しい公正な解答がきちんと提示されているのがわかります。
新聞報道には意図的な誤報も ~ALPS処理水を「汚染水」と呼ぶなど
佐々木)一方で、報道機関には多重チェックがあり、誤報は少ないと言われています。でも意図的な誤報のようなものもたくさんあるのです。例えば、ある新聞は福島原発事故のALPS処理水を延々と「汚染水」と呼び続けていて、最近では「処理済み汚染水」という変な言い方をしている。あるいは甲状腺がんが福島県の子どもの間で多発しているという報道もありました。
飯田)ありました。
佐々木)あれも過剰診断だと言われているのですが、それを言わずに、ただ「増えている」と。ああいう報道に関して、何の自浄性もないわけです。どんなに批判されても無視している。そうすると、デマを打ち消す力が新聞にはなさすぎる問題があると思います。そこを解消しなければ、ファクトチェックセンターはうまくいかないのではないでしょうか。
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