ジャーナリストの鈴木哲夫が10月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ここ数年、これまでにない被害を起こす台風への対策について解説した。
令和元年東日本台風
記録的豪雨をもたらした2019年の台風19号(令和元年東日本台風)の上陸から、10月12日で3年となった。災害関連死1人を含めて11人が亡くなり、1人が行方不明となった宮城県丸森町では、町主催の追悼式が営まれた。午前10時に追悼のサイレンが町内全域に1分間流され、参列した73人が黙祷し、祭壇に献花した。
飯田)丸森町に関しては、阿武隈川が氾濫しました。また長野県では千曲川の堤防が決壊し、JR東日本の車両センターが水没。北陸新幹線も水に浸かりました。
鈴木)新幹線が水浸しになった映像が記憶に残っています。
想像を超えた台風が来ることが当たり前に ~行政はそれに対応しなければならない段階にきている
飯田)毎年のように台風が起こり、被害をもたらしています。
鈴木)毎年発生しますし、しかも前年の教訓を超えている。台風の質が変わっているわけです。地球温暖化を含めて、自然現象がトータルで変わっています。台風もいままでの経験値では測れなくなってきている。
飯田)変わってきているから。
鈴木)台風19号も大きな被害だったけれど、今年(2022年)の台風だって、考えられない雨の降り方でした。「未曾有の」「経験のない」というような言い方をしますが、そろそろ「経験がない」や「かつてない」、「未曾有の」という表現を政治・行政はやめなければいけない。想像を超えてくるのが当たり前になっているのだから、それに対応しなければならない段階にきていると思います。
日本海側を走る台風から離れた太平洋側で大雨が
鈴木)今年の台風11号ですが、この台風は東へ向かって進んでいたのだけれど、急に西の方向に転換して……。
飯田)「迷走台風」などと言われました。
鈴木)沖縄の辺りでずっと止まってしまった。
飯田)そうでしたね。9月の頭くらいでした。
鈴木)そのあとの台風14号も、日本海側を通っていたのだけれど、離れている太平洋側で大量の雨が降りました。これも低気圧や前線などが刺激し合っているのだけれど、いままでにはないことです。
飯田)台風の進路から離れた静岡県の清水区で、大きな被害がありました。
政治・行政がするべきは河川の一括管理
鈴木)そういう意味では、台風の質が変わっています。気を付けなければいけないのは、いままで自然と共存してきたような分野、例えば農業や漁業などです。そういう仕事をしている人は、「風の方向がこうだから、台風がどこにある」というような経験値を持っているわけです。しかし、近年では「風がこの方向だから台風は行ったかな」と思ったら、先ほど言ったように戻ってくるわけです。そういう我々の生活のなかにある経験値の意識を変えなければいけない。
飯田)これまでの経験値ではあり得なかったことが起きている。
鈴木)行政に関して言うと、雨ということは河川です。
飯田)河川。
鈴木)いつになったらここを一括管理するのか。河川はご存知のように一級河川、二級河川、さらには支流があって、それぞれ管理が違うのです。
飯田)管理がそれぞれ違う。
鈴木)一級河川は国交相が管理して、下流にいくとある区間から都道府県の管理になる。さらに支流になると市町村の管理なのです。これまでの被害を見たらわかるのですが、必ずそういう管理が変わっているところを中心に、被害が出るケースがものすごく多いわけです。
飯田)ここまでは堤防があるけれど、そこから先は堤防がない。よく見たら、その先は市町村の管理だったというようなことがあります。
鈴木)その通りです。川を海側から湧き出ているところまで歩いていくと、あるところまではきっちり堤防もあるのに、ある橋から急に何もなくて、野晒しになる。そしてまた、ある橋からは堤防があったりする。それは管理するところが違うからなのです。
飯田)管理がそれぞれ違うから。
鈴木)そうすると、自分が管理しているところは堤防で固めていて、そこでは水が外に漏れず、一気に下流へ流れていくわけです。そして、その先の堤防がないところで一気に氾濫してしまう。
飯田)堤防がないために。
鈴木)河川の一括管理は、頑張ればできることなのです。それをこの数年間でやってきたかというと、まだ手がついていません。そういう意味では、台風に備えて政治・行政がいますぐやるべきことはたくさんあると思います。
菅政権が行った「ダムの一括管理」はいい例
飯田)菅政権のときに、ダムに関しても発電用のダムや農業用水用のダムなど、いろいろあるけれど、全部まとめて管理できるように変えました。これは一括管理のいい例です。この夏も台風がたくさん発生したけれど、被害が少し抑えられたのは、ここに要因があるのではないかと指摘されています。
鈴木)あれは画期的だったのです。そして、やろうと思えばできることなのです。管理方法を変えればいいのに、腰が重くてできていない。そうすると、また被害が出ます。
飯田)菅さんはそこをぶち抜いたのですね。
鈴木)これを行うことは、岸田さんの責任です。
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