「送迎バス問題」に必要なのは「安全装置の義務化」だけではない
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ジャーナリストの鈴木哲夫が10月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。全国の保育所や幼稚園の送迎バスに安全装置の設置を義務付けることを盛り込んだ政府の緊急対策について解説した。
政府、全国の保育所や幼稚園の通園バスに安全装置義務化へ ~2023年4月から
政府は10月12日、静岡県牧之原市で3歳の女の子が通園バスの車内に取り残されて死亡した事件を受け、2023年4月から全国の保育所や幼稚園などの送迎バス約4万4000台を対象に、安全装置の設置を義務付けることなどを盛り込んだ再発防止へ向けた緊急対策を決定した。
飯田)違反した場合は業務停止命令の対象になるということです。牧之原市で起こった事件ですが、少し前には福岡県でも同じようなことがありましたよね。
送迎バスでの送り迎えは幼稚園の仕組みの外にある「有償サービス」に位置付けられている
鈴木)安全装置を付けるというのは、もちろん付けないよりは付けた方がいいけれど、もっと根本的な対応が必要だと思うのです。
飯田)根本的なところで。
鈴木)知人に幼稚園の園長さんがいて、いろいろ話を聞きました。送迎バスでの送り迎えは、幼稚園の仕組みの外にあるそうです。「有償サービス」という表現をしますが、あくまでも「サービス」なのです。
飯田)サービスなのですか。
鈴木)本来は幼稚園や保育園に保護者が子どもを連れて行く、あるいは迎えに行くのですが、仕事をしていたりお子さんが2人いる場合は難しいではないですか。そういうときに迎えに来てもらう。ある種の有償サービスであり、外側に位置付けられているわけです。
飯田)本来の業務ではないというような。行政的にはそこを切り分けます。
自治体ごとにルールをつくり、安全について報告させるところもあるのが現状
鈴木)法律で厳しく規制できるかというと、そうではない。ざっくりと言うと「気を付けてください」という話になるわけです。ただ、これだけ事故が多いのはまずいということで、自治体ごとにルールをつくり、安全について報告させたりしています。それをやっている自治体もあれば、やっていない自治体もあるわけです。
飯田)なるほど。
鈴木)そういう隙間のようなところに「送迎バス問題」があると思います。
送迎バスの運転は専門職
飯田)国全体の規制としては、例えば「何歳児には何人に1人の保育士さんをつけなさい」という決まりがあります。
鈴木)0歳児では、子ども3人に対し保育士1人だと思います。
飯田)少人数で行われますけれども、そことは範囲が違うのですね。
鈴木)違うのです。「送迎バス」と簡単に言うけれど、小さなお子さんをまとめて乗せ、送り迎えするというのは1つの専門職だと思います。
飯田)確かにそうですね。
鈴木)タクシーの運転手さんとは違う。乗せているのは子どもたちであり、しかも複数です。乗り降りのところから見て、きちんと座っているか、そして安全運転を含め、降りるときにも確認する。車内で子どもたちに何かあったとき、どう対処するかなども考えなければならない。これは専門職だと思います。
飯田)専門職ですね。
鈴木)しかし現状、「専門職」という意識ではありませんよね。今回の事件もそうだけれど、人手がないから園長が運転する。あるいは誰かがいれば「ちょっと手伝って」「では、ついて行きましょう」などというのは、そもそも甘いと思います。
国がルールをつくり、助成・補助も考えるべき ~民間のタクシー会社などに専門職として発注するなど
鈴木)専門職としてきっちりやるのであれば、当然、国が法律やルールをつくらなければならない。そしてルールをつくるということは、助成・補助も考える必要があるかも知れません。
飯田)助成ということも。
鈴木)子どもの送迎の専門職です。民間のタクシー会社などがそういうことをやっていれば、そういうタクシー会社に発注してもいいと思うのです。しかし、それにはお金がかかります。そこで、そのお金は国や自治体が補助するとか。
飯田)必要な専門職にかかる費用に対して。
鈴木)もう少し送迎というものに集中し、国の仕組みとしてルールをつくる。子どもたちの安全を守るのであれば、そこまでしてもいいと思います。いまは幼稚園・保育園に預けたくても受け入れが難しく、待ちが出るくらい必要なところです。
飯田)待機児童が。
鈴木)いまの社会では、お父さんもお母さんも仕事をしていて、子どもたちを預けることが社会の当然の仕組みになっているではないですか。だから、私は送迎バス問題について、国が統一でルールをつくり、補助を行うようなものにするべきだと思います。
安全装置が義務化されて終わる話ではない
飯田)安全装置が義務化されて終わるような話ではありません。
鈴木)安全装置を付けるのは基本中の基本くらいの話です。それを大袈裟に「やりますよ」と言っていては、全然足りないと思います。
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