作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴と、数量政策学者の高橋洋一が10月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。習近平氏の側近が多数起用される中国指導部の動きについて解説した。
中国指導部が大幅交代へ ~習近平氏の側近起用の動き
中国共産党の習近平総書記(国家主席)が10月23日に発足させる次期最高指導部について、従来の想定よりも大幅にメンバーを入れ替える見通しであると、複数の消息筋が明らかにした。最高指導部のメンバー7人のうち、3~4人程度入れ替わり、続投が確実な習近平総書記の側近が多数起用される見通し。
飯田)ただ、具体的な名前はなかなか出てきません。
人事の焦点は李克強氏が政治局に留まるか、李強氏が常務委員に上がるか
青山)今回、人事の焦点は2つだけです。首相を務めてきた李克強さんが首相を辞めたあと、党の中枢、政治局に留まるのかどうかということ。もう1つは、上海でゼロコロナ政策のために大失敗した、上海トップであり習近平さんの側近中の側近の李強さんです。この人が政治局常務委員に上がってくるかどうかということです。この人が上がってきたら最悪ですよね。
飯田)大失敗したわけですよね。
青山)大失敗したのに、側近だから上げてしまうのです。中国共産党なりに、何とか自己改革をしたのが国家主席1期5年、2期10年までとした任期制でした。
飯田)これまでは。
青山)当時の胡錦濤国家主席と温家宝首相のコンビは、経済で成功して日本を抜きました。それでも、任期制があるから10年で2人ともお辞めになりました。温家宝首相は最後の演説で、前半はただの自慢でしたが、後半で「中国経済には未来がない」という趣旨のことを言ったのです。私は感心しました。
中国共産党の未来は暗い ~トカゲの尻尾切りすらしない習近平氏
青山)それをすべて、習近平さんが1人で覆しつつあります。その意味では、中国共産党、あるいは中華人民共和国の未来は暗い。既に大失敗ですよね。
飯田)既に大失敗。
青山)胡春華さんという、世襲ではないために距離がある、共産主義青年団出身の人を抜擢すればまだ少し格好はつきますが、焦点は李克強さんよりも李強さんで、この方を上げてしまったらおしまいです。
飯田)側近だということで。
青山)まだはっきりしていませんが、少なくとも上海の責任を取らせることはしない。トカゲの尻尾切りすらしない。自分が言ったことはすべて正しい。ゼロコロナも何もかも正しいのだと。「これをやったらおしまいだ」という共産党大会だと思います。
GDPの発表も延期した中国
飯田)いろいろ異例なことが起きていて、GDPの発表すら延期してしまいました。
高橋)もともと捏造された数字なのに、どうして延期するのかなと私は思っていました。大体、GDPの数字が2週間で出るわけがありません。前からインチキなのだけれど、「インチキな数字を後ろへずらすことにどんな意味があるのか」と、正直私はわからなくなってしまいました。
青山)前からそうですよね。
飯田)7月~9月の数字というと、まさに上海がロックダウンされていて、経済がガタガタのときです。李強さんを上げるというタイミングで、その数字を出さないということは、やはりまずい数字なのでしょうか?
高橋)しかし、もともとデタラメな数字ですから、なぜ変えないのでしょうか? 「忖度するなら変えて出せばいい」と私は思いました。
青山)中国がいい加減な数字を出しても、まるで本当のことのように西側メディアが報道する癖がついているので、「あまりバレバレすぎる嘘はつきたくない」というだけなのです。
高橋)そうなのだとは思いますが、GDP統計は過去統計なので、すべての基礎統計があって、そこから計算します。どうして早く出るのかがよくわかりません。いろいろなものが出たあとなので、最短でも1ヵ月~1ヵ月半ほど必要なのです。それがどうして2週間で出たのかわかりません。
飯田)そうは言っても誤魔化しが効かないのは、相手のある統計データですよね。
高橋)輸入統計は私もチェックしていますが、中国の輸入と輸出は、その他の国のものに足し算すると大体わかるのです。そこはあまり間違っていません。ただ、輸入統計が下がっているので、GDPはとても低くなっているはずです。
飯田)中国税関総署は、貿易統計の発表すら延期しましたね。
高橋)面白いですよね。
毛沢東氏の犯した罪に戻りつつある中国は世界の不安要素に
青山)中国の統計は当てにならないと、初めて言った人が李克強さんでした。
飯田)そうでしたね。首相就任の前からですか。
青山)前からですね。「自分は鉄道輸送量と電力消費量しか信用しない。中国の統計は当てにならない」と、西側の取材のときに思わず言ってしまった。
飯田)当時は「李克強指数」とも言われていました。
青山)その李克強さんを首相にしたということで、中国共産党は毛沢東時代の反省に立っていたのですが、李克強さんだけが任期を守って国家主席は守らないというのはメチャクチャですよね。
飯田)習近平氏は3期目に入る見通しです。
青山)モラル崩壊も甚だしいです。イギリスは世界とヨーロッパの大きな不安要因ですが、中国の逆コースというのも、毛沢東さんの犯した罪に戻りつつあるという状況は、大きな不安要因です。日本はしっかりしないといけません。
大統領選への意欲を初めて示したブリンケン国務長官の発言
飯田)ブリンケン国務長官が習近平氏の演説を受け、スタンフォード大学で講演したときに、「現状維持を破ったのではないか。そこをもう気にしなくなったのではないか」という指摘までしていました。アメリカ側の批判は強いのでしょうか?
青山)ブリンケンさんの発言は、私の勝手な推測ですが、大統領選への意欲を初めて示したのだと思います。そちらの意味もあるのではないかと思うのです。
飯田)そちらの方ですか。
青山)単なる国務長官としての発言を踏み越えていますよね。バイデンさん本人は出たいのだけれど、2期目に出られないことがはっきりしてきています。「副大統領もどうやらダメなので」ということもあるのではないでしょうか。
飯田)ハリスさんも。
青山)ホワイトハウスが新しいNSS(国家安全保障戦略)を発表したばかりですが、あの原文を見ても、中国とは相容れないということをはっきりさせています。中国10億人のなかで、まだものが欲しい人がいても、アメリカ車を買ってくれるとしても、ともに天を戴かずという方向性がはっきりしてきています。だからブリンケンさんも安心して発言したところもあると思います。
飯田)なるほど。
青山)そのようなアメリカに対して、どう向き合うのかということが、今回の中国共産党大会では全然、解がない。独裁を強めるばかりで、経済だけは資本主義でうまくいくようにという。鄧小平さんはいろいろな評価がありますが、「天安門広場の大弾圧があったから独裁を強化する」ということだけではありませんでした。
飯田)そのあと改革開放、南巡講話があった。
格差が広がるばかりで問題解決が何もなかった共産党大会
青山)しかも鄧小平主義とは言わずに、「鄧小平理論」と呼んだ。しかし、習近平さんは思想がないのに「習近平思想」と言っています。毛沢東さんは一応、「矛盾論」という哲学書まで書いていますが、習近平さんは何もありません。
飯田)習近平氏には。
青山)何もないところに習近平思想と言われても、格差が広がるばかりで、問題解決の糸口が何もなかった共産党大会です。5年に1回なので、5年間待った意味がないですよね。これは暗澹たることです。中国は決めてしまった以上は議論の場がないので、少なくとも次の党大会までこのままです。
飯田)また5年間も。
青山)重い5年間です。
飯田)その不安定さのまま、5年間。
青山)中小企業の社長さんの集まりで長年講演してきましたが、「中国には進出しないでください」と言い続けてきました。進出してしまったら、引き上げることもできない。「泥沼にハマってしまう」と言ってきましたが、それを実証する共産党大会になってしまいました。
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