世界のチャイナウォッチャーが予想を外した「胡春華氏の降格人事」

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ジャーナリストの有本香が10月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。予定よりも遅れて発表された中国の経済指標について、また最高指導部の新たな人事について解説した。

世界のチャイナウォッチャーが予想を外した「胡春華氏の降格人事」

2017年10月19日、北京の人民大会堂で記者の質問に答える胡春華広東省党委書記=写真提供:産経新聞社

中国が経済指標を日程よりも遅れて発表

中国国家統計局は10月24日、予定より遅れて7~9月期の国内総生産(GDP)を始めとする経済指標を発表した。GDPは前年同期比でプラス3.9%と予想を上回った。当初は共産党大会が行われている最中の18日に発表する予定だったが、前日に突然延期が発表された。共産党大会では習近平総書記(国家主席)の3期目続投が確定している。また、指導部メンバーからは金融改革や市場開放への支持で知られる李克強首相や、劉鶴副首相、人民銀行の易綱総裁らが外れた。

胡春華氏の降格

飯田)それから、胡春華氏が降格しました。

有本)そうですね。評論家の石平さんが「自分も含めて世界中のチャイナウォッチャーが予想を外した」と言っていました。胡春華さんに関してはまったく意外ですよね。

胡錦濤前国家主席の不可解な退場

有本)しかし最も驚いたのは、世界中に映像が配信されましたが、胡錦濤前国家主席が連れ出されたことです。

飯田)これを「退席」と書いているメディアもありましたが。

有本)全然違いますよね。「中座」と書いているメディアもありましたが。

飯田)映像を見ると、半ば連行しています。脇を掴んで。

有本)無理やり立たせていますからね。それから書類を引っ張っていました。しかも習近平氏が途中で書類に手をかけています。

飯田)「持って行くな」という感じで。

有本)ですから、いろいろな分析がされていますけれど、やはり出したのですよね。

飯田)出した。

有本)病気などと新華社は言っていますけれど、新華社の言っていることですからね。

異のある者を露骨に排除する習近平氏のやり方

飯田)全世界のメディアがいるなかで、ああやって出すというのは、意図的に見せたということでしょうか?

有本)そうなのだろうと思います。今回、意外な人事だったことも含めて、胡錦濤さんに連なると言っていいと思うのですが、いわゆる共青団系の人たちが全部排除されました。ここまで露骨な人事を行い、なおかつ世界中に見せてしまう。これほど露骨な政的排除、自分に異論のある者を全員排除したことを見せるのは、「政治的にいいのだろうか?」と思いますね。

飯田)ここまで露骨に行うことが。

有本)大きな反感を買うでしょうし、あそこまで前国家主席の面子を潰すのは、むしろ中国的ではないと思いました。

飯田)公衆の面前で面子を潰されるというのは。

有本)仮に体調の面に問題があったとしても、あの出し方はないですよね。

都市部では小売りも不動産投資も鈍い ~年間目標をクリアできない

有本)このニュースの項目で、経済指標が日程より遅れて発表されました。

飯田)共産党大会に合わせて発表される予定でした。

有本)当然、3期目続投を宣言する習近平氏にとって不都合だったということです。しかし、結果を見てみると、一応GDPの成長率は予想を上回っていました。ただ、その原因は「地方政府のインフラ投資」という中国お得意のパターンなのです。「行き詰まっていないですか?」という話です。地方にどんどんインフラをつくって膨らませていくのですが、それ自体が既に行き詰まっている。

飯田)地方にインフラをつくること自体が。

有本)都市部ではロックダウンの影響もあって、直近で比べると少しはよくなっているところもあるようですが、小売りも不動産投資も非常に鈍いです。そうすると年間目標はクリアできない。

飯田)年間5.5%が今年(2022年)の目標だそうですけれど。

有本)やはり難しいです。

飯田)10~12月期で10%以上成長しなければいけないということですよね。

有本)そうです。10%超えの成長率があって初めて達成できる。ただ、中国は統計数字の取り方も先進国と違いますし、「そもそも鉛筆舐め舐めつくっているでしょう?」という疑惑のあるものですから、どこまで信用していいものかわかりません。突如として「12%成長しました」などと言いかねないのだけれど、でもやはり無理なのでしょうね。

飯田)そうですよね。そういう華々しい数字がつくれるのであれば、党大会の間に発表していますよね。

経済に関して堅実な方向性が出せるような人を排除した人事 ~旧来モデルの地方の活性化しかなく「バラ色の中国市場」が行き詰まる可能性も

有本)意外な人事についてですが、経済面においては、これから統制が強まっていく。そうすると、いままでそれなりにあった改革開放時代からの果実はすべて溶けていき、先ほど申したように地方のインフラ投資や不動産という、いままでの成長モデルが壊れていきます。

飯田)これまでの成長モデルが。

有本)人事でも、比較的経済に関して堅実な方向性が出せるような人を排除している。では、習近平氏の新体制が何をいちばんの目玉にしているのかと言えば、やはり「積極的に地方にいろいろなものをつくって活性化しましょう」というような話なのです。

飯田)旧来モデルしかないのですね。

有本)そうです。そうすると、今後も暗いですよね。

飯田)国内経済の話は、国家主席というよりは国務院総理です。李強さんがその役割になるようですが、この方はロックダウンで上海の経済を潰してしまった人ですよね。

有本)そうですね。どちらかというと習近平氏の顔色を見るのに長けているのでしょう。

飯田)そのようですね。

有本)この方はいままでも株式市場が混乱したときなど、大体間違った手を打ってきましたからね。それがもっと加速するのではないかという感じです。その流れで1つ言いたいのは、日本企業がいままでのように「バラ色の中国市場」というような姿勢でいられるのか、ということです。

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