ようやく予算特別枠に防衛関係費として計上 空港・港の防衛対応
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が11月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。空港・港の防衛対応について解説した。
空港・港の防衛対応
政府は防衛目的で活用できる公共インフラ(社会基盤)の整備促進に向け、予算の特別枠を創設し、防衛関係費として計上する方向で調整に入った。有事に自衛隊の派遣や住民の避難が想定される南西諸島などの空港や港湾の整備を図る狙いがある。空港や港湾の整備は国土交通省などが所管していることが多く、自衛隊の利用など、安全保障上の視点が欠けていることが課題として指摘されている。
有事の際、日本の空港・港をどう使うか ~これまで長年、手つかずの問題だった
飯田)有事の際に使えるかどうか。
宮家)これは過去60年間、ずっと手つかずの問題でした。私が北米局の日米安保条約課長だったときも、それて歴代の課長が、みんなこの問題で悩んでいたのです。
飯田)この問題で。
宮家)有事のときに、日本の空港・港が使えるかどうかわからないわけです。もちろん自衛隊もそうですけれど、米軍が使えるかどうかがわからない。例えば、米軍の戦闘機が飛んでいって、基地がやられてしまったら、日本の空港に降りようとしますよね。しかし、「ダメです。ここには米軍は入れません」ということになってしまうわけです。……でも、それは違うだろうと。
飯田)空港は国が所管しているイメージがあるけれど、そうではない。
宮家)必ずしもそうではなく、地方自治体が管理している場合もあります。そのなかにも防衛上、本当に重要な施設があるわけですし、船の場合も有事の場合はどこに行けるかわからないから、いろいろなところに入れるようにしておかなければならないわけです。補給も必要ですし。
有事を前提に法律をつくらなかった日本 ~「有事の際、国内の空港・港等の公共施設をどうやって使うか」ということを安全保障条項に入れていなかった
宮家)本来は有事を前提に法律をつくるはずなのだけれども、日本では全然できていないのです。私もできなかったことですが、「有事の際、国内の空港・港等の公共施設をどうやって使うか」ということを、法律できちんとルールをつくらなければならない。安全保障条項に入れなければならないはずですが、どうしてもできなかったのでしょうね。これ以上、理由を言いたくはないけれども・・・。
飯田)できなかった。
宮家)人気のある政策ではないですからね。
ようやく予算の特別枠を創設し、公共インフラ(社会基盤)の整備に向けて防衛関係費として計上することに
飯田)特に昔を思うと、いろいろな岸壁に護衛艦をつけようという場合も……。
宮家)大反対運動が起きるではないですか。
飯田) 国連平和維持活動(PKO)派遣のときもデモがありました。
宮家)ミサイルがいつ飛んでくるかわかりませんし、台湾で何が起きるかわからないのに、「日本はこんなに浮世離れした状態でいいのですか」と思います。
飯田)こんな時代に。
宮家)ようやく予算の特別枠を創設して、公共インフラ(社会基盤)の整備に向けて防衛関係費として計上される。ただ計上するだけではなく、実際に使えるようにしていただきたいですね。
飯田)計上するだけではなく。
宮家)そうしないと、いざというときに我々は自分自身を守れませんよ。「敵基地攻撃」と言う前に、自分たちをどうやって守るか、というところです。
阪神・淡路大震災の際も自衛隊の出動を要請しなかった
飯田)そう言われると、港に関してもいろいろなことが思い出されます。阪神・淡路大震災のときも「護衛艦が行って災害支援しよう。でも港を使わせてもらえるかわからない」というようなことで悩んでいたのですね。
宮家)自衛隊の出動を要請しなかったのでしょう。
飯田)陸上自衛隊も伊丹でずっと待っていたけれど。
宮家)いまはあの発想と違い、我々は考え方を変えなければいけない時期にきている。その意味では、今回の方向転換はいいことだと思います。
通常の国であれば、憲法上の緊急事態条項に最初から入っている
飯田)それぞれの法律に安全保障の条項をつけていくというのも、予算をつけるだけではダメかも知れないわけですからね。
宮家)ひと昔前ならば、必ず国会で問題になるでしょうね。でも、いまはそんな時代ではありません。
飯田)諸外国であれば、憲法上の緊急事態条項的なものに入っているかも知れませんけれど。
宮家)普通の国であれば初めから入っています。主要国で入っていないのは日本だけですよ。
飯田)この国を自分たちで守る。すべて、普通の国になるための努力かも知れませんね。
宮家)その通りです。
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