ウクライナ侵攻を続けるロシアに接近するイランの思惑 「泣きつかれ、断れなかった」国際政治学者が解説

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中東情勢に詳しい放送大学名誉教授で国際政治学者の高橋和夫氏が11月14日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。ウクライナ侵攻を続けるロシに武器の供与などで接近するイランの思惑について、「アメリカからいじめられて、仕方なく」と解説した。

ウクライナ侵攻を続けるロシアに接近するイランの思惑 「泣きつかれ、断れなかった」国際政治学者が解説

2022年7月19日、イランのテヘランで開催されたシリアに関する 3 カ国首脳会議で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領 (左) がイランのエブラヒム・ライシ大統領 (右) と握手。EPA/SERGEI SAVOSTYANOV / KREMLIN POOL / SPUTNIK POOL / EPA=時事

イランのアブドラヒアン外相は11月5日、ロシアに無人機(ドローン)を提供したことを初めて認めた。こうした中、アメリカのCNNテレビはイランがロシアに対して核開発に関連した支援を求めているとの見方を報じている。一線を越えた行動を取るイランの思惑は一体どこにあるのか。

辛坊)イランとロシアは、もともと今のように近い関係にあったのでしょうか。

高橋)いえ、イラン人はロシアが嫌いです。なぜなら、19世紀にはペルシア帝国とロシア帝国は争っていて、現在のアゼルバイジャンとアルメニアがロシアに奪われてしまったことがあります。また、第2次大戦中には旧ソ連軍がイランの北半分を占領していたこともあります。さらに、イラン・イラク戦争では、イラクがイランにスカッドミサイルをどんどん撃ち込みました。そのスカッドミサイルは旧ソ連が輸出したものです。

こうした歴史を背景に、イラン人はロシアを好きではないし、信用もしていません。しかし、アメリカにこれほどいじめられていると、イランとしてはロシアくらいしか頼るところがなくなってしまっているんですね。

辛坊)イランは対アメリカとの比較からロシアに近づいているということですか。

高橋)そうです。「仕方なしに」という感じなのでしょう。

辛坊)ロシアがウクライナに対する攻撃に使っているドローンがイラン製ではないかと、日本でも話題になっています。

高橋)イランは当初、否定していましたが、証拠が次々に出てきて隠しようがなくなったため、認めました。ただ、ロシアに輸出したのはウクライナ侵攻の前で、ロシアが約束を破って勝手に使ったというような言い方をしていましたね。しかし、実際には最近、輸出したものです。

辛坊)イラン製ドローンの性能は、どの程度なのでしょうか。

高橋)トルコ製、イスラエル製、アメリカ製と比べると、トップの性能とはいえません。ただ、価格が最も安く、1基当たり約200万円です。ドローンの種類はいろいろありますが、ロシアが使っているイラン製は「カミカゼ・ドローン」といわれているもので、爆弾を抱えていって、そのまま目標を爆破するタイプです。目標の上空周辺をずっと回って、目標が定まると落ちていって爆破します。業界用語では「徘徊型」ともいわれています。

辛坊)イランがドローンをロシアに提供する目的は何でしょうか。

高橋)おそらくロシアに泣きつかれ、断れなかったということだと思います。それと、アメリカとの対立です。特に核問題の交渉で、ロシアはずっとイランの味方をしてくれたので、あまり冷たくもできないという事情があるのでしょう。加えて、ロシアから何らかの見返りをもらえると思っているのかもしれませんね。

辛坊)今後、イランはこの勢いでロシアに近づいていくのでしょうか。

高橋)イランとしては、ロシアがウクライナで始めたことは「戦争であり、違法行為だ」と主張しています。ただ、ロシアから嫌われたくはないので、「ロシアをやむにやまれないところに追い込んだのは北大西洋条約機構(NATO)の拡大であり、双方が悪い」というようなことも言っています。とはいえ、イランとしてはロシアのプーチン大統領と一緒に泥船に乗りたいとは思っていないはずです。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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