トランプ氏に「大統領選出馬表明して欲しくない」米共和党の事情
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経済アナリストのジョセフ・クラフトが11月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。11月15日にトランプ氏が出馬表明するのではないかと言われている2024年の米大統領選挙について解説した。
トランプ氏、大統領選出馬表明か
トランプ前大統領が現地時間11月15日に2024年のアメリカ大統領選挙への出馬を表明する意向であることを、トランプ氏の顧問を務めるジェイソン・ミラー氏が明らかにした。ミラー氏は11月11日、トランプ前政権のスティーブン・バノン元首席戦略官のポッドキャストに出演し、出馬表明は「非常にプロ意識に富み、非常に管理されたもの」になると述べた。
(※編集部注:2022年11月15日午前6時50分時点の放送内容)
中道派層が共和党に流れなかった ~民主党健闘
飯田)トランプ氏の出馬ですが、中間選挙の結果を受けて、いかがでしょうか?
クラフト)トランプ氏に関して、ジェイソン・ミラー氏は「(出馬表明は)非常に管理されたもの」と言っていますが、管理できないと思うのですよね。今回の中間選挙で、民主党が予想外の健闘をしていますが、出口調査などの結果を見ると、「中道派層が共和党に流れなかった」ということが言えます。
人工中絶問題とトランプ前大統領の出馬表明を嫌がった有権者が民主党に票を入れた ~激戦州に影響
クラフト)どうして中道派層が民主党に流れたのかと言うと、2つの大きな要因があると思います。1つは、事前の世論調査よりも中絶問題に対する有権者の思いが強かった。中絶問題に対しての投票が意外にあった。
飯田)人工中絶の問題。
クラフト)2つ目は、トランプ氏の出馬表明に対する反対です。出口調査のなかで、今回投票に出向いた1つの要因は、約28%がトランプ氏への反対からだったと言われています。トランプ氏の出馬表明を嫌がって、当日、かなりの有権者が投票したということです。それが激戦州に影響した。
飯田)もともと有利なところであれば、多少、票が減っても問題はなかったけれども、激戦州では顕著に結果が出てしまう。
激戦州ではトランプ氏の推薦候補が1人を除いて負ける ~トランプ前大統領が出馬表明すればマイナスに
クラフト)ですから、激戦州5州でトランプ氏が推薦している候補は1人以外、全部負けています。
飯田)ウィスコンシン州だけ勝ったと。他のペンシルベニア州やネバダ州、アリゾナ州などは軒並み落としてしまった。
クラフト)あとはジョージア州が12月に残っています。ですから共和党としては、トランプ氏に出馬表明しないで欲しいと。
飯田)ジョージア州の決選投票は12月6日に控えていますものね。
クラフト)そうです。トランプ氏が出馬表明すると、逆にマイナスになってしまう。しかし、言うことを聞くトランプ氏ではありません。おそらく出馬表明するのではないかと思います。
大口献金者の今後の動きがポイントになる ~大口献金者がどの候補を推すか
飯田)トランプさんはおそらく大統領選挙への出馬を表明するだろうと。ただ、共和党内を見ると「一丸」という感じではありませんよね。
クラフト)むしろ、分断していますね。今回の結果を受けてトランプ前大統領の求心力が低下しています。ただ、根強い支持層がありますから、その支持層とそうでない党員たちの間で分断が起きている。1つのポイントは、2024年の大統領選に向けた候補者の状況に影響する大口献金者です。
飯田)なるほど。
クラフト)大口献金者がトランプ離れして、他の候補、例えばフロリダのデサンティス氏などに乗り換えるようなことがあると、一気に共和党内の流れが変わる可能性があります。金の切れ目が縁の切れ目と言われるように、お金が大事なので、今後は献金者の状況を見極めていきたいですね。
飯田)草の根献金のような形で、特にトランプさんは献金を多く集めたところがありますが、そうは言っても大口献金者はやはり……。
クラフト)小口の有権者の献金も重要なのですが、大口献金者は1人で100億~200億を出しますから。お金が集められる候補は求心力も高まりますので、党内では重視されています。
「賢いトランプ」と呼ばれるデサンティス氏 ~中道派層をより取り込める
飯田)デサンティスさんの名前が出ました。フロリダ州知事選も先日行われましたが、圧勝しています。野心もあるのではないかと言われていますが、どういう人なのですか?
クラフト)「賢いトランプ」と言われています。
飯田)賢いトランプ!
クラフト)トランプ氏同様、あるいはそれ以上の極右派思想なのです。ただ、言動を抑えて戦略的に動くので、そういう意味で「トランプ氏よりは賢い」と見なされています。しかも若いのでエネルギッシュです。
飯田)若い。
クラフト)2024年の大統領選挙は「どれだけ中道派層を取り込めるか」がカギになりますが、デサンティス氏の場合は、中道派層をより取り込めるのではないかと言われています。
デサンティス氏が予備選で勝てるかどうか ~本選では「負けるだろう」と見込まれるトランプ氏
クラフト)ただ、共和党のジレンマがあります。デサンティス氏は、本選では「トランプ氏よりも強い」と言われていますが、予備選はやはりトランプ氏が強い。ですから、予備選でトランプ氏に勝てるかどうかが、まだわかりません。
飯田)予備選で。
クラフト)予備選で勝たないと本選には出られませんので、そのジレンマをどうするか。逆にトランプ氏は予備選で勝っても、本選は反トランプ派が多いので「負けるだろう」と見込まれています。共和党はそれをどう解消するか、戦略が見ものです。
次期大統領候補を誰にするか、共和党以上に悩む民主党 ~民主党員の約6割が次期大統領選でバイデン氏に出て欲しくない
飯田)一方の民主党側ですが、バイデン大統領は「今回は負けなかった」という感じの結果ですか?
クラフト)事前予想よりも、はるかにいい結果なので、とりあえずバイデン政権はレームダック化せずに済む。下院を落とす可能性はありますが、当初の見込みよりはよかったと思います。
飯田)よかったと。
クラフト)しかし、今回の中間選挙の結果はバイデン氏への支持ではなく、反トランプの票だったわけですから、バイデン氏が勝ったとは必ずしも言えないのです。
飯田)なるほど。
クラフト)そして、民主党員の約6割が「2024年はバイデン氏に出て欲しくない」と言っているわけです。
飯田)約6割が。
クラフト)民主党も、次回の大統領候補をどうするか悩んでいると思います。
バイデン氏以外の大統領候補が見当たらない民主党の悩み
クラフト)普通ならバイデン氏も年齢を考えて、1期で辞めようと思っても不思議ではないのですが、残念ながら副大統領の人気がまったくない。
飯田)カマラ・ハリスさん。
クラフト)バイデン氏以上に人気がないのです。それでは戦えないから、仕方なくバイデン氏でいくのかどうかで悩んでいるわけです。
飯田)バイデン氏はここにきて、色気を見せ始めたという報道もありますね。
クラフト)明らかに元気になっています。民主党の読みでは、2024年の大統領選挙がバイデン氏とトランプ氏であれば、バイデン氏は勝てると。ただ、バイデン氏と他の候補、例えばデサンティス氏などになれば不利だと考えているのでしょう。
飯田)トランプさん以外であれば。
クラフト)共和党の出方も見ながら決めたい。共和党はなるべく早く立候補したい。一方、民主党は様子を見て、できるだけ遅く候補を出したい。そういう動きになるのではないでしょうか。
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