国内不満を外に逸らすため「台湾侵略」を行う可能性が高くなった中国

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ジャーナリストの須田慎一郎が12月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ミシェルEU大統領との会談のなかでゼロコロナ政策緩和の可能性を示唆した中国・習近平国家主席について解説した。

国内不満を外に逸らすため「台湾侵略」を行う可能性が高くなった中国

中国の習近平国家主席(タイ・バンコク)=2022年11月19日 EPA=時事 写真提供:時事通信

中国の習近平国家主席、ゼロコロナ政策緩和の可能性を示唆 ~無謬性に傷がついた中国共産党

中国の習近平国家主席は12月1日、北京でEUのミシェル大統領と会談し、現在主流となっているオミクロン株の致死率が比較的低いことから、ゼロコロナ政策を緩和する可能性を示唆した。また中国各地で起きた抗議活動について「感染が約3年続き、人々が不満を抱いているからだ」と説明していたことがわかった。

飯田)会談の内容については、EU関係筋の話として報じられています。PCR検査場が一部閉鎖になるなどしているようです。

須田)政策緩和をしなければ、場合によっては中国共産党政権が危うい状況になると判断したのだと思います。「絶対に過ちをしない」という無謬性によって政権を維持する正当性を得ていた中国共産党ですが、その無謬性に傷がついた。共産党政権下で初めての状況ではないでしょうか。これによって、どの程度の影響が出てくるのかは注目です。

一般市民からの抗議活動に危機感を抱いた習近平政権

飯田)最初はウルムチでの火災がきっかけだったと言われますけれども、いろいろな都市で抗議活動が起こっていますものね。

須田)いちばんショックを受けたのは上海です。上海市民は政治問題に関してはほとんど無関心な市民なのです。

飯田)上海の市民は。

須田)加えて、経済成長を謳歌してきた。それゆえに政治問題に口を挟まないことを是としてきた市民です。そこで抗議活動が起こったというところにショックを受けたのだと思います。天安門事件がありますけれども、あれは一部の学生を中心とした抗議活動であり、さほど強い危機感を持たなかったのです。

飯田)1989年6月4日ですか?

須田)そうですね。それに対して、今回は一般市民にまで動きが広まっていったというところで、強い危機感を持ったのかなと思います。

経済成長に陰りが見え、政権が弱気になってきた

飯田)当時は胡耀邦元総書記の死去に伴って人が集まり、当時の趙紫陽総書記が学生に会いに行ったことが権力闘争に火を点けたところもありましたものね。

須田)弱腰の対応を取ったということで、以降、中国の政権は強硬策を取り続ける対応になりました。その大きな転換点を迎えたのかなと思います。

飯田)今回のことで。

須田)これまでは生活が経済的に豊かになっていくことで、政治問題については口を挟まないという、ある種のバーターが中国では行われてきました。

飯田)経済成長することで。

須田)ところが、ここへ来て経済成長に陰りが見え始め、政権としても弱気になってきた。あるいは市民が強気になってきたところがあるのだと思います。

国内の不満を外に逸らすために台湾侵略を行う可能性も

飯田)それをどうコントロールしていくのかということですが、体制転換にまで及ぶものなのかどうか。

須田)その前に、いまの習近平体制が「何を判断するのか」ということに欧米は強い警戒感を持っているのです。

飯田)欧米が警戒する。

須田)過去の中国共産党の動きを見ると、国内の不満を抱えたときには、対外的に海外へ目を逸らせる方法をよく使ってきたわけです。いちばん大きな懸念は、台湾に対する侵攻を現実問題として考え始めるのではないかということです。

飯田)台湾侵略。

須田)中国国内の不満が拡大し、その不満を外に逸らす方向になってきたときに、それを取り囲んでいる西側諸国にも飛び火するかも知れない。それに対しての強い警戒感が出てきています。

中国がアメリカのGDPを抜くことは難しい状況になってきた

飯田)安全保障の専門家の人たちは、台湾有事がいつ起こるかということだけが問題で、起こるか起こらないかは既に問題ではないと言っています。必ず起こるけれども、それがいつ起こるかだという話をしていて、もしかすると時計の針が早まるかも知れないのですか?

須田)かつて中国が大きく喧伝してきた「近い将来、中国のGDPがアメリカを追い抜く」というキャンペーンがありました。

飯田)ありました。

須田)経済強国になるという。しかし、ここ最近はまったくそういう話が共産党サイドから発信されなくなったのです。100周年を迎えたのにも関わらず。

飯田)確かに。

須田)計算しても、いまの状況だと無理なのではないかと。

飯田)抜く前にピークを迎えてしまうかも知れない。

須田)もうピークアウトしているという状況もあります。あるいは人口減少などを考えると、中国のGDPがアメリカのGDPを抜き去ることは、相当難しい局面に入ってきています。逆算すれば、成長率も相当低い。市民の不満はかなり拡大してくると考えられます。

経済成長が鈍り、市民の不満を抑えるためにデジタルテクノロジーを使って管理社会を強化する ~強化すればするほど市民の不満が爆発

飯田)経済成長できなくなり、求心力が衰えてくると政権が弱体化し、ますます外へ出るインセンティブが高くなってしまうのですね。

須田)外へ出ると同時に、管理社会の強化です。デジタルテクノロジーを使った管理社会の強化。そうやって不満を抑えていかないと、政権が倒れてしまう。しかし、強化すればするほど市民の不満が爆発してくるという悪循環に入るのではないかと思います。

市民へのガス抜きを図る一方で管理政策の強化を進める

飯田)この先、衰退することが見えているとなれば、「いまやらずにいつやるのか」ということになってしまう。ここ数年は、リスクが高い時期に差し掛かるかも知れません。

須田)PCR検査などを含めて、ゼロコロナ政策緩和というガス抜きを図っていく一方で、管理政策の強化を車の両輪として進めていくのだと思います。

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