株式会社「Ashirase」代表取締役の千野歩氏が12月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。視覚障害者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」の今後について語った。
視覚障害者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」
新行市佳アナウンサー)視覚障害者の外出をサポートする最新技術についてですが、番組では1年前に視覚障害者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」についてお伝えしました。2021年4月、本田技研工業株式会社(Honda)からベンチャー企業として株式会社「Ashirase」が誕生。「Ashirase」が開発したデバイスを靴に装着することで、ナビ情報を足に振動として伝え、行きたい場所に誘導するというものです。
2022年度「グッドデザイン賞」金賞を受賞
飯田)1年前に、私と新行アナウンサーも実際にスタジオで「あしらせ」の体験をさせていただきました。その「あしらせ」が2022年度グッドデザイン賞の金賞を受賞されたということで、おめでとうございます。
千野)ありがとうございます。
クリップで取り付けるなど、さまざまな部分を改良
新行)去年(2021年)から今年にかけては、どのような改良が行われたのでしょうか?
千野)もともとは足の甲などに、本来の硬い部分が靴の外側に取り付けられる形だったのですが、視覚障害者の方が紐の部分に取り付けるのは難しいということがありました。
飯田)紐の部分に取り付けるのが。
千野)試行錯誤して、足の甲と横側の間ぐらいのところに、クリップで簡単に取り付けられるようになったのが大きく変わったところです。
飯田)クリップで。
千野)ナビゲーションとしては、もともと道順を伝えるもので、曲がり角などをお知らせすることをメインにつくってきました。しかし、それだけではなく、どちらの方向に進めばいいのかディレクションするような、終了地点や迷ってしまったときなどに簡単に確認できる機能も追加されました。細かい機能をアップグレードしてきましたが、そのような大きな変更なども追加しながら開発を進めてきました。
2023年からベータ版を200台程度稼働させる予定
飯田)いつごろからの商品化を考えていますか?
千野)ベータ版として、200台程度を2023年の頭ごろから出したいと思っています。2022年度中にはサービスを開始したいですね。
飯田)いよいよ最終段階、社会に出す直前まで来ていますが、課題なども相変わらずいろいろと出ていますか?
千野)充電についても、1日90分ぐらいの使用で1週間程度もてばいいなと思っているのですが、もう少し短くなってしまうかも知れません。
飯田)充電がどのくらいもつのか。
千野)さらにそれを担保するということで、デバイスの大きさやバッテリーのサイズとの相関もあります。足の小さい女性の靴になると、本体を小さくする方が「見た目としても好まれるのではないか」というような議論もあります。いろいろな議論のなかで、「これが正解ではないか」というようなものが複数出てくることもあります。
アメリカの見本市にも出展
飯田)まずは国内からになるとは思いますが、目の不自由な方は日本だけではなく、世界中にもたくさんいらっしゃいます。世界展開なども考えていらっしゃいますか?
千野)私たちの製品は、アプリケーションの操作としての言語はあるにしても、インターフェースとしては言語レスです。「障害に国境はない」と言われますが、特に自立的な方、歩行能力が高い方には使っていただきやすいと思います。アメリカやヨーロッパなどとは相性がいいかも知れません。まず2023年1月には、「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」と言われるアメリカの見本市にも出展させていただきますので、そのようなところから海外にも徐々にアプローチしていきたいと思います。
旅先で「あしらせ」をレンタルできる仕組みも
飯田)それが広がっていけば、「あしらせ」発で「このようなプランがある」という旅行の提案ができるなど、いろいろなことにつながっていきそうですね。
千野)ショッピングモールや遊園地に、視覚障害者向けのナビゲーションルートをつくることができないか、というような試みも行っています。また、鉄道会社さんなどとも組んで、「あしらせ」を持っていない方でも旅先などで簡単にレンタルできるような仕組みなど、長距離の移動先で使えるような新しいビジネスの形もお話しさせていただいています。さまざまなケースで「あしらせ」を使っていただく機会が増えればいいなと思っています。
「あしらせ」を使うことで安心して歩くことができ、「行動してみようという気持ちになった」という声も
飯田)いろいろ進化していますよね。
新行)1年半くらいの間に、150人ほどの方々が使用したそうです。これまで弱視の方は、歩きながらスマートフォンの画面を拡大して行き先を確認していたのですが、「あしらせ」を使うことによって、歩きスマホをする必要がなくなったという声もありました。
飯田)拡大してスマホを見る必要がなくなった。
新行)また、音声ナビを使うと音声を聞きながら歩くのですが、周りの音が耳に入るなかで、音声ナビの音も聞かなければいけないのです。「あしらせ」の開発はそのような課題の解決にもつながっているのだなと感じました。安心できるので「行動してみようという気持ちになった」という前向きな声も寄せられたという話が印象的でした。
飯田)ハード面でもサポートしていくことは、行動範囲が広がってクオリティ・オブ・ライフが上がることにもなりますよね。
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