作家で自由民主党・参議院議員の青山繫晴と数量政策学者の高橋洋一が12月23日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ・ゼレンスキー大統領の訪米について解説した。
絶妙なタイミングでの訪米 ~流暢な“米語”でアメリカ国民に訴えかけたゼレンスキー大統領
アメリカのバイデン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は12月21日、アメリカ・ワシントンのホワイトハウスで会談した。2月のロシアによるウクライナ侵略開始後、両首脳の対面会談は初めて。会談後、バイデン氏は新たに地対空ミサイルシステム「パトリオット」1基や航空機搭載の精密誘導弾を含む約2500億円の軍事支援と、約500億円の人道的支援も表明した。
青山)絶妙なタイミングの訪米ですよ。(2023年)1月から、アメリカの議会下院は共和党が握ることになります。その共和党はウクライナ支援に否定的です。しかし、大統領は変わらないわけですから、新しく始まる直前に、大統領や議会に対して直に訴える。しかも流暢な英語です。あんなに流暢だとは思いませんでした。
飯田)英語で演説しました。
青山)「米語」です。アメリカ人はああいう方法に弱いのです。下院の半数以上を占める共和党の頭を飛び越して、アメリカ国民に訴えかけた。これで共和党は動きにくくなりましたよね。最高のタイミングです。
年明けに大攻勢をかけようとするプーチン大統領 ~素晴らしい政治センスを持つゼレンスキー大統領
青山)米軍はF15で護衛までして、米軍機で迎え入れた。もはやアメリカも引くに引けないですよね。いま行っていなかったら、プーチン大統領の思うつぼになっていたでしょう。プーチン大統領は年明けに大攻勢をかけるつもりですから。
飯田)キーウを襲うなどという読みも出ています。
青山)おそらく中国などと裏で協議した結果だと、私は思っています。キーウに市民生活が戻っている。もう市民を虐殺する方向にずっと動いているでしょう。
飯田)ロシアは。
青山)それを食い止めるためにも、いま行かなければいけなかったのです。先ほどのご質問の主旨はよくわかるのですが、常識を覆して訪問した。そのためには米軍を出すということで、連携が取れているのですよね。大した政治センスだと思いますよ。
無理やりベラルーシを巻き込み、キーウを攻めようとするロシア
飯田)メドベージェフ氏が習近平氏と会ったことが報じられました。
青山)台湾有事を考えて、いまのウクライナ戦争をいちばん研究している国の1つが中国です。いままでの中国の作戦予定計画を変えるとすればですが、台北の直撃も考えているわけです。
飯田)中国は。
青山)それをそこはかとなく水面下で受け取り、キーウをもう1回攻めて落とすという。ベラルーシに近いのですが、いままでベラルーシはいろいろと言い訳しながら協力しなかったので、プーチン大統領はそれを屈服させ、ロシア軍だけだと弱いのでベラルーシを巻き込むつもりなのです。
飯田)今週、ベラルーシのルカシェンコ大統領とプーチン大統領が会っていますよね。
青山)ルカシェンコ大統領は、本当は協力したくないのです。それを無理やり引き込むつもりでもあるし、そうするとまたチョルノービリ(チェルノブイリ)原発の問題が出てくるのです。
飯田)まさにベラルーシから南、キーウに向けて攻めていくところにある。
ロシアの多くの人が未だにチョルノービリ原発事故を知らないという驚異の事実
青山)ロシアに関して酷いのは、チョルノービリ原発周辺にある「赤い森」が最も汚染されているのですが、そこでロシア軍の兵士に塹壕を掘らせ、入らせたのです。
飯田)塹壕のなかに。
青山)おそらく強い放射線障害になっていると思います。それでわかったのですけれども、ロシアの多くの人がチョルノービリ原発事故を知らないのです。
飯田)知らないのですか?
青山)知りません。
飯田)あの当時、情報が隠されていたからですか?
青山)ずっと封鎖されているのです。改めて独裁国家の怖さに気付かされています。その国とゼレンスキー大統領は戦っているのですから、常識外の作戦も取らないと、とても国を守れません。
コミュニケーションで世界を味方につけるゼレンスキー大統領
飯田)一方で戦費については、G7の財務相会合がオンラインで開かれたということです。アメリカだけではなく西側、特に先進諸国全体としても、お金の部分で援助していくと言われています。日本も当然ながら支援していくということですよね?
高橋)G7ですからね。ゼレンスキーさんは世界とのコミュニケーションがうまいですよね。ワールドカップで最後に話をしたいという要望は拒否されてしまったのだけれども。
飯田)カタールでのサッカーワールドカップで、FIFAが拒否したという話ですか?
高橋)そうです。年明けに備えて、ゼレンスキーさんはコミュニケーションで世界を味方にするしかないし、そのときにアメリカはいちばんの要素なのでしょう。
青山)その通りですよ。
高橋)アメリカを入れないと話にならないですしね。G7と言っても、基本的にはアメリカですから。
青山)そうです。
直接、“米語”で訴えた効果は大きい ~元俳優という能力も発揮した
飯田)今回、上下両院の合同会議でゼレンスキー氏は英語で演説しました。インパクトは相当大きかったのでしょうか?
青山)米国人は特に直接、米語で言われるのが大好きなのです。しかも先ほど言った通り、予想以上に上手でしたよね。
高橋)インベストメントのところなど、すごく聞き取りやすいですよね。俳優ということもあるのかも知れませんが。誰でもそうだけれど、直接英語で話してくれた方がいいですよね。日本人だって、外国人が日本語を話してくれたら聞くでしょう?
青山)その通りです。
飯田)それだけで優しい気持ちになりますよね。
青山)親近感が湧きます。練習のあとがありましたね。
高橋)練習していましたね。昔はそんなにうまくなかったと思うのです。
青山)高橋さんがおっしゃった通り、俳優だから事前の準備に慣れていて、自分の能力をよく活かしていますよね。
弱者の生き残り戦術
飯田)拍手をもらうところは「スッ」と止めてみたり、少し顔をしかめてみたり、涙ぐみそうになっているところもありました。
青山)あの声のしゃがれ方も、いまやいいのです。高橋さんの言う通り、カタールでうまくいかなかった宣伝作戦を、ワシントン訪問で取り返しましたよね。
高橋)年明けに備えて、いろいろなことをやろうと思っていたのではないでしょうか。
飯田)今回はいろいろな仕掛けのうちの1つであった。
高橋)そうではないかなという気がしました。
青山)弱者の生き残り戦術なのですよ。
米上下両院合同会議で演説し、日本の地位を高めた安倍元総理
飯田)もし東アジアで何かあったときには、我々の総理があそこに行って、同じような演説をする機会もあるかも知れません。
青山)しなくてはいけないですよね。
飯田)世界を味方につけるために。
青山)米語で。
飯田)安倍さんは上下両院合同会議で演説しました。
青山)あれは日米同盟だけではなく、決定的に日本の地位を高めたのです。
飯田)“Alliance of Hope”と言っていました。希望の同盟。
青山)アメリカが偉いという話ではなく、アメリカを通じて発信すると、世界のどこでもニュースにするのです。ローカルでやっていたらニュースにならないけれども。
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