ジャーナリストの鈴木哲夫が1月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が年頭記者会見で挙げた「異次元の少子化対策」について解説した。
自民党と立憲民主党の国対委員長、1月23日召集の通常国会をめぐり会談
自民党の高木国対委員長は1月11日、国会内で立憲民主党の安住国対委員長と会談し、通常国会を1月23日に召集する方針を伝えた。政府は13日に開く衆参両院の議院運営委員会の理事会で正式に伝達する。
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飯田)23日召集の国会がどうなるのか、というところですが。
鈴木)ある意味、安住さんの言う通りです。重要な防衛の問題、安全保障の問題。防衛費の増税ばかり言われているけれど、3文書の問題がありますよね。
飯田)安全保障関連の。
鈴木)日米首脳会談で国際公約のようにして、「国会より先に話してしまうのではないか」と私は心配していますけれど、こういう話は一切、国会では行われていません。
「異次元の少子化対策」の具体的な内容の提示がない ~これから「異次元の検討」か
鈴木)特に気になるのが少子化対策、子育てについてです。1月4日の年頭記者会見で「出た!」と思いましたが、「異次元」という表現をしました。
飯田)「異次元の少子化対策」。
鈴木)厳しい言い方かも知れませんが、言葉が先行していて、「やります」感は出るのだけれど、どうなのでしょうか。これまでに「子育て支援」など、具体的に3つぐらい挙げたのだけれど……。
飯田)お子さんを出産した世帯に対する、1人あたりの給付金など。
鈴木)異次元と言われると、「それを10倍にするのかな」などと思うのですが、具体的なことは出ていません。結局、担当大臣に「3月末までにまとめろ」と指示しているわけです。「いやいや、異次元の中身はどうなのですか?」と。
飯田)「異次元だ」と言うならば、中身が詰まっているのかと思いきや、これからと。「異次元の検討」ですよ。
防衛、少子化などの重要な問題を国会で徹底的に議論して欲しい
鈴木)防衛費も含めて、1度も国会で議論していません。
飯田)していません。
鈴木)だから、安住さんが「それをやらなければならないのだ」と言っているのは、もちろん正しいと思います。問題はどこまで徹底して対応するかということです。
飯田)どこまで徹底するのか。
鈴木)政局が絡んできたり、統一地方選挙が近くなってくると、「ここまであえて攻める」とか、「ここは引く」などという駆け引きが国会では始まるでしょう。
飯田)駆け引きが。
鈴木)今回は防衛から少子化まで、重要な問題ですから、それをなしにして、国会で徹底的に議論して欲しいと思います。
これまで少子化問題に手を打ってこなかった ~早くからの河野太郎氏らの提言を誰も相手にしなかった
鈴木)少子化対策と子育ては、次元が違うと思うのです。同じにしてしまうけれど、総合的にやらなければいけない時期にきている。しかし、そもそもですが「いまさら? 」という気持ちが私のなかで非常に強いのです。
飯田)いまさら。
鈴木)2004年くらいから、現在のデジタル担当大臣である河野太郎さんを中心に、「少子化は絶対に止まらないから早く手を打たなければいけない」と言われていました。少子化のいろいろな対策、例えば社会保障や年金など、既に勉強して提言してきていたのです。
飯田)河野太郎さんを中心に。
鈴木)しかし、「いま手を打たなくても政府がいろいろやれば少子化は止められるだろう」と、誰も相手にしなかった。また、社会保障を改革するといろいろ問題が起きるわけです。だから政府は動かず、自民党も動かなかった。「少子化はいまやる話ではない」と先送りしてきたわけです。
飯田)当時は団塊ジュニアの世代が20代で、ちょうど結婚して子どもを産み、育てる時期でした。「ここが本気を出したら少子化なんてすぐに解決するのだ」というくらい、世代的にもボリュームの多い層だった。
鈴木)そうです。あのときにやらなければいけなかったことを、何もしなかったのです。
「こども家庭庁」がどこまで横串を刺せるか
鈴木)そういう意味では「いまさら」という感じがあるのですけれど、本気で取り組むのならば、本気で取り組む。「こども家庭庁」ができたけれども、ここが幼稚園や保育園の問題に対し、「どこまで横串を刺せるか」ということです。
飯田)こども家庭庁が。
鈴木)いまの子育て支援でも、おむつのお金ではないのです。教育費なのです。教育費は子どもが大学を出るまで、2000万円くらいかかってしまいます。そこが不安で、「どうしても子どもを産むことができない」という問題があるのです。そのために両親が共働きし、そこへ向けてお金を一生懸命貯めているという側面もある。
少子化対策とは「子どもが大学を卒業するまで」の政策
鈴木)少子化対策というのは、「いま目の前の子どもをどうするか」ではなく、大学を卒業するまで、22歳くらいまでの政策になるわけではないですか。
飯田)みんな「産んで終わりだ」とは思いません。「20歳まで育て上げるためにどうするか」という全体的なことを考えますからね。
鈴木)でも、いまの子育て支援のお金をいくらにするとか、いまの働く環境をどうするかという話が出ます。それも女性の環境なのですよ。そうではなく、社会を変えないといけない。「男性の育児休業が何日」などと言っているようではダメなのです。
飯田)社会全体を変えなければいけない。
鈴木)目先の支援金もいいけれど、そういう問題ではないのに、相変わらず岸田さんが指示しているのはそういう次元の話でしかないわけです。とても異次元とは言えない。
女性の生き方が変化しているのは当然のこと ~むしろ「男性社会」を変えなければならない
飯田)働き方改革も「女性の」という話が出ていますけれど。
鈴木)女性の生き方が変わっているのは当たり前のことです。女性がいろいろな選択をするのは当たり前。そうではなく、社会で育てるのならば、むしろ男性社会を変えなければいけません。
飯田)男性社会を変えなければ。
鈴木)そういうところを変えなくてはいけないのに、男性に関して「育児休業を何日増やす、増やさない」など、そんな次元です。それでは変わるわけがない。
飯田)育児休暇を増やすなどという次元ではない。
「異次元の」と言うのならば、こども家庭庁に権限も予算もすべて任せるべき
鈴木)こども家庭庁が横串を通すと言うけれど、先ほど言ったように、少子化問題は大学まで考えなければならない。そうすると、いま文科省が持っているようなものも含めて、こども家庭庁に権限とお金を集中させるなら可能だと思います。でも、結局そういうものは各省庁に残ったままで、横串と言いながら単に連絡会を行っただけでは何も変わりません。
飯田)連絡会だけでは。
鈴木)小学校、中学校、大学、幼稚園や保育園、子育て支援のいろいろな問題、厚労省が抱えているであろう働き方の問題など、そういうものがそれぞれの役所で相変わらずバラバラに存在する。それをまとめようとしても無理ですよ。
飯田)バラバラにある状態では。
鈴木)本当に異次元と言うのならば、そういうものをすべて、1から10までこども家庭庁に任せるくらいの……。
飯田)権限と予算も、ですね。
鈴木)目標は22歳、つまり大学を出るくらいまでです。そこまでやって、初めて異次元ではないですか?
飯田)省庁改革にまで手をつけることになりますね。
鈴木)そういうものが見えない。そもそも具体性が見えません。だから「また掛け声のような感じで出してきたな」という印象が強いですね。
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