千代田区が広報紙の表紙を「ゴジラ」「エヴァ風」にした理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月18日放送)では、Cozy「冬の防災ウィーク」と題し、防災をテーマとした東京・千代田区の広報紙について、あるいは帰宅困難者について、新行市佳アナウンサーがリポートした。

千代田区が広報紙の表紙を「ゴジラ」「エヴァ風」にした理由

千代田区の広報誌「広報 千代田」

千代田区の広報紙(2022年8月5日号)がエヴァ風に

新行)去年(2022年)の夏、産経新聞で千代田区の広報紙が「新世紀エヴァンゲリオン風の紙面で防災を喚起している」という記事を見つけて、「これは面白い」と思い、番組のオープニングで紹介しました。手元に2022年8月5日号の千代田区の広報紙があるのですが、千代田区のビル群の写真になっていて、空が赤く染まり、文字の雰囲気からしてもエヴァンゲリオンという感じです。

飯田)太い明朝体のような字が、いかにもエヴァンゲリオンです。

新行)「使徒襲来」という感じがします。今回、千代田区が防災をテーマにした広報紙にどんな工夫をしたのかが気になって、いろいろと調べてみました。例えばこれまでの防災特集の紙面を見ると、2021年は「僕のヒーローアカデミア」(ヒロアカ)を表紙にしています。

飯田)アニメですね。

新行)アニメです。そして2020年のものだと、ゴジラが表紙になっているのです。

飯田)これはシン・ゴジラですか?

新行)シン・ゴジラです。インパクトのある防災特集を出していました。

飯田)広報紙ではないみたいですね。

千代田区の広報紙の表紙をエヴァンゲリオン風に ~多くの区民に手に取ってもらうため

新行)まるで雑誌のようなのです。まずは千代田区の広報担当・市川託也さんにその狙いを伺いました。

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市川)当時、広報紙の閲読率が23区でもそれほど高くなかったという現状もあり、落ちてきていることが世論調査ではっきりわかっていたので、区民の方に読んでいただける広報紙を目指そうと、紙面改革が始まりました。

新行)多くの方に読んでいただこうと。

市川)その際に、広報課の皆さんと区役所の屋上で区内の風景を撮影していたのです。そこで夕焼けを目にしたときに、アニメのワンシーンにとてもシンクロしたため、この段階で「エヴァ風でいこう」と決めました。

新行)上の方々の反応はどうだったのですか?

市川)広報広聴課のなかでは、「いいね」という意見が多数派でした。区長からも「エヴァ風だね」と、好評な意見をいただいたと耳にしていたので、続けていきました。

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新行)紙面改革は2019年10月ごろから始まったそうですが、まず表紙をインパクトのあるものにして手に取ってもらい、中身を読んでいただく。そのきっかけのために「表紙は特にこだわっているのです」とおっしゃっていました。

飯田)なるほど。

ジャーナリスト・佐々木俊尚)昔であれば、「アニメを広報紙に使うなんて何事だ」と言ってくる年配者が多そうですが、エヴァンゲリオンもそうだけれど、アニメは日本を代表する国民文化になったので、いまは中年の男性でもわかる。時代の変化は面白いなと思います。

新行)「命を守る取り組み」として各自治体、いろいろ行っているのですが、それをどうやって知ってもらうかが大きな課題になっています。知ってもらうための1つの取り組みが「読まれる広報紙」ということです。エヴァ風の広報紙は、先ほど話したように産経新聞でも取り上げられていたのですが、実はSNS上でも大きな話題になりました。

地震の際に避難せず、安全な施設に留まる「地区内残留地区」 ~千代田区などが「地区内残留地区」に指定

新行)紙面のなかで訴えていた千代田区の防災対策ですが、特に肝になってくるのが帰宅困難者についてです。

飯田)帰宅困難者。

新行)東京都では調査によって、建物が燃えない……不燃化が進んで大規模な延焼火災の危険性が少ないと認められた地域を「地区内残留地区」に指定しています。つまり地震が発生したとき、すぐに避難を開始するのではなく、会社や家、施設に留まることを求めているのです。

飯田)そういう施設に留まる。

新行)千代田区は、区内全域が「地区内残留地区」に指定されています。他にも中央区、江東区、港区などの湾岸地域、西新宿のオフィス街なども、全域ではないですがそのまま留まるように指定されています。

千代田区が広報紙の表紙を「ゴジラ」「エヴァ風」にした理由

千代田区を取材した、ニッポン放送・新行市佳アナウンサー

千代田区の昼間人口は90万人 ~帰宅困難者になる50万人に地区内残留地区に待機してもらう

新行)千代田区の場合、区内の会社や学校に通う人、たまたま地震が発生した際に千代田区に来ている人などが、大地震に見舞われたときにどうしたらいいのか、千代田区災害対策・危機管理課の古橋さんにお話を伺いました。

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古橋)千代田区は国内でも有数のオフィス街で、令和2年度の国勢調査によると、昼間人口は約90万人にのぼるとされています。地区内残留地区は不燃化が進んでいますので、基本的にはその場で待機していただき、安全を確認していただくことをまずご案内しています。その上で、発災後72時間については、救急の方々による負傷者搬送などの活動が優先されるべき時間帯ですので、一斉帰宅を抑制し、会社などに留まっていただくこと。

新行)会社などに。

古橋)留まっていただくためには、3日分程度の備蓄を各会社で準備していただくことが大事です。一斉帰宅が起きないよう、事前にしっかり周知していくような取り組みを重視するようになりました。

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千代田区では6万人の受け入れスペースが足りない

新行)「昼間人口が90万人」という言葉が出てきました。ただ、全員が帰宅困難者になるわけではなく、そのなかでも50万人の帰宅が困難になると言われています。対策として、千代田区では区内にある省庁やビル、一般企業などに対し、建物のエントランスやロビーなどの開けた場所で、一定の人数を受け入れるように協力を呼びかけています。

飯田)なるほど。

新行)帰宅困難者の受け入れ場所の協定を結んだ施設は、東日本大震災をきっかけに101施設まで増えたのだそうです。ただ、千代田区は東京都の他の地域よりも協力関係が進んでいるのですが、あと6万人ほど受け入れのスペースが足りないということでした。

飯田)6万人分のスペースが足りない。

千代田区内で29%の事業者が「地区内残留地区」であることを知っている

新行)千代田区が地区内残留地区になっていることをどれくらい知られているのか、2020年に区が調査したところ、区内の事業者の29%が「知っている」、71%が「知らない」という回答でした。

飯田)7割が知らない。

新行)知っていると答えた人の割合は、従業員の規模が大きくなるほど高くなって、300人以上の事業所、会社や団体、病院などの組織では64%になったということです。

飯田)64%。

新行)まだまだ区内の認知度が足りていないところがある。だから「残留地区なのだ」ということを知ってもらい、その上で「帰宅困難者を受け入れてもいい」という企業をさらに増やしていくことも、今後の課題になってくるのかなと思います。

佐々木)確か千代田区の区民は6万人くらいしかいないのです。しかし昼間人口が90万人ということは、15倍ぐらいの人数がいるということです。一般的には区の広報紙というと、住んでいる人が読むような印象ですが。

飯田)そうですね。

佐々木)「自分の勤務先の広報紙」を読むイメージはないですよね。だから表紙を目立たせて、会社のオフィスなどに置いて目につかせるという工夫は、大事なのではないでしょうか。

新行)実際に去年の8月号を開いてみると、企業や地域、学生の防災に対する取り組みを特集しています。

飯田)神田には大学も多いですよね。

新行)そうなのです。

東日本大震災時にも多くの帰宅困難者が出た

飯田)東日本大震災のときも、多くの帰宅困難者が出ました。

佐々木)大行列で道を歩いていましたね。

飯田)夜通し歩いていたという人も多くいらっしゃいました。

佐々木)ツイッターでどこにトイレがあるとか、どこのバスが動いているなどという情報交換がされたりですとか。

新行)お住まいの地域の防災対策や避難所は知っていても、勤めているところの詳しい事情は知らないなと、私も「ハッ」としました。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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