ジャーナリストの佐々木俊尚が2月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。行政が新たに指導することとなる「管理不全空き家」の指定について解説した。
管理不全空き家
全国で増え続ける空き家の問題で、国土交通省は管理が不十分な物件を新たに「管理不全空き家」に指定し、行政が指導を行うよう法律を改正する方針を固めた。指導で改善されない場合は、空き家の固定資産税を減額する措置を解除し、適切な管理を促す。
飯田)「特定空き家」の制度は現在もあります。危険なほど荒れている建物のことです。
空家等対策特別措置法により自治体が行政代執行で取り壊し、あとで請求 ~さまざまな事情で進まない
佐々木)「空家等対策特別措置法(通称)」という新しい法律が2014年にできました。放置されていまにも崩れ落ちそうだったり、火事になったら大変な建物などは、自治体が勝手に行政代執行で取り壊す。
飯田)行政代執行で。
佐々木)取り壊し費用は所有者にあとから請求できます。一般的な一戸建てを取り壊すのに、だいたい150~200万円掛かると言われています。
飯田)200万円。
佐々木)親から相続して田舎に放置していたら、ある日突然、地元の自治体から「200万円払いなさい」と言われる可能性があるのです。
飯田)そのままにしておいたら。
佐々木)ただ、これもなかなか難しい。実際に請求しようと思っても、お金がないなど、いろいろな問題があって請求できないケースが多く、それほど取り壊しは進んでいないのです。行政もそこまで手を出しにくいところがある。
飯田)そうですよね。しかも相続の権利が細かく分かれていたりします。
空き家の固定資産税を減額する措置を解除し、適切な管理を促す
佐々木)手続きも大変です。これではうまくいかないということで、「管理不全空き家」の方針を固めた。普通は家が建っていれば、固定資産税は更地の土地より安くなります。その安くなる措置をやめて、「空き地同然の固定資産税を請求しますよ」という方向に変えましょうという話です。
飯田)それによって処分や売却を促す。
なぜ空き家が増えてしまったのか ~更地にしても買い手がつかない地方の事情
佐々木)そうは言っても、もし使い道があったり、売れるのであれば、みんなとっくに壊しているのです。
飯田)そうですよね。
佐々木)私は福井に家を借りていますが、そこで空き家対策を行っている友人がいます。よく話を聞くのだけれども、だいたい1戸壊すのに200万円掛かるという話ではないですか。最初は3000万円くらいで家を建てたわけで、高いお金を掛けて家を建て、一国一城の主になったのだから、おいそれと安くは売れないとみんな思うらしいのです。
飯田)安く売れない。
佐々木)町も寂れているので500万円~1000万円くらいで売り出すのだけれど、もはや田舎では住む人がいないので、全然売れない。だんだん切羽詰まってきて、持っていると固定資産税も払わなければいけないし、ときどき掃除に行くのも面倒くさいので、取り壊して更地にして売ろうと思うらしいのです。
更地費用の200万円で売りに出しても売れない
佐々木)更地にするのに200万円くらい掛かるから、更地にする費用だけ出ればいいということで、200万円で売りに出すパターンが多いそうです。
飯田)なるほど。
佐々木)ところが、それでも買い手がつかない。更地になった土地を買っても使い道がないですから。東京や大阪のような大都市圏であれば、みんな買いますよ。
飯田)大都市圏であれば。
佐々木)でも、人口1~2万人くらいの地方の町で、若者も流出して過疎化が進んでいるような地域では、30坪~50坪の土地があっても「買ってどうするのだ」という話です。国道沿いの大規模な土地なら、まだ「ホームセンターをつくるか」など、やりようがあるのだけれども、街道からも外れたような古い集落では使い道がない。
飯田)古い集落では。
佐々木)田舎に行くと、更地にしたけれど使い道がなく、仕方がないからベンチを置いて、高齢者が日向ぼっこしているという景色をよく見ます。結局、200万円では売れないわけです。
自治体や空き家NPOにタダで引き取ってもらう「譲り受け物件」が増加 ~それでも条件がよくなければ引き取ってもらえない
佐々木)最後は自治体や空き家NPOなどに行って、「頼むからタダで引き取ってくれ」と言うらしいのです。
飯田)最後はそうなるのですね。
佐々木)「譲り受け物件」と友人は言っていました。
飯田)譲り受け物件。
佐々木)しかし結局、NPOも年間予算が決まっていますから、たくさんお金があるわけでもないし、固定資産税は払わなければならない。取り壊さないのであれば、放っておくと特定空き家にされてしまうので、その建物を管理しなくてはいけません。お金も人手も必要になるので、(NPO側も)もらわない。
飯田)今度はもらわないと。
佐々木)たくさんある空き家のなかから、「これはリノベーションしたら使えそうだ」とか、何とかなりそうなところだけは譲り受ける。それをつくり直して綺麗にし、誰かに貸すなり転売するらしいのですが、そうでない家に関しては「すみません。いりません」ということになるのだそうです。
空き家を受け取ったら最後、誰にも渡せない「ババ抜き」状態の地方の空き家状況
佐々木)そうなると、行き場のない空き家が大量にあって、受け取った側が「受け取ったら最後、もう誰にも渡せない」ということになるのです。
飯田)ババ抜きのようになってしまう。そうなるともう一段、補助金を付けるなどの施策がなければ難しいのかも知れませんね。
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