ドイツでのG7外相会合で議長国の日本はウクライナ情勢に関して「何ができるのか」

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数量政策学者の高橋洋一と防衛省防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄が2月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2月18日にドイツで開催される見通しとなったG7外相会合について解説した。

ドイツでのG7外相会合で議長国の日本はウクライナ情勢に関して「何ができるのか」

2023年1月31日、共同記者発表~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202301/31nato.html)

G7外相会合、ドイツで2月18日に開催へ

先進7ヵ国(G7)の外相会合が2月18日にドイツで開催される見通しとなった。ロシアのウクライナ侵略から2月24日で1年となるのを前に、G7としての結束を示す他、ウクライナ支援策や対露制裁の強化などについて話し合われる予定。日本が2023年のG7議長国として主催する初の外相会合となる。

飯田)ドイツで行われるとなると、メインテーマはウクライナになりそうですね。

高橋洋)ドイツですから当然ですね。ウクライナがテーマにならないはずがありません。

日本が「戦車の供給をどう戦果に結び付けていくのか」を導くのは難しい ~戦車の供給には再調整が必要

飯田)ウクライナ情勢ですが、日本のメディアでもロシア軍の攻勢が既に始まっていると報じられるようになりました。現状はどうですか?

高橋杉)春季攻勢の前哨戦のような形で、ロシアが2つの方面から攻勢を強めている状況です。一方で、ウクライナに対する支援の決め手に近い西側の戦車の供給が決まったわけですが、戦車を実際に戦力化するには時間が掛かります。

飯田)実際に戦力化するには。

高橋杉)もちろん軍事援助は別の枠組みがあるのですが、せっかくみんなが集まるのだから、G7会合でも当然「戦車の供給をどう実際の戦果に結び付けていくのか」は話し合われると思います。ただ、戦車供給の主体ではない日本がそれを導くのは難しいという課題がありますね。

飯田)戦車の供与は決まりましたが、戦力化のための訓練などに時間が掛かるということですか?

高橋杉)そうですね。あとは実際にどれぐらいの量が出せるかということも再調整が必要になってきているので、国同士で話し合う必要があります。

米英独とそれぞれ異なる戦車を供給 ~混乱を避けるためにアメリカが仕切って訓練等を行うべきか

飯田)先月(1月)辺りに言われていたのは、ドイツ製の戦車「レオパルト2」を出す話です。それとは別に、イギリスは「チャレンジャー」を出し、アメリカは「エイブラムス」を出す。いろいろな種類の戦車が入ってきますが、混乱しないのですか?

高橋杉)しますね。補給ネットワークもありますし、訓練もあります。特にどういう形で訓練するのかは、多国間で決めるべきだと思います。

飯田)ウクライナが仕切るというよりは、どこかメインとなる国が仕切り役になるのですか?

高橋杉)枠組みとしてはG7というより、北大西洋条約機構(NATO)のなかでアメリカが中心になるのがいいと思います。しかし、ヨーロッパの問題なのでヨーロッパが仕切るべきという考え方もあるでしょう。その辺りを話し合う必要があります。

飯田)やみくもに何でも出せばいいというものではない。

日本で廃棄予定の「MLRS」をウクライナに供給できないのか

飯田)その辺りの調整は難しそうですね。

高橋洋)日本は議長国だけれど、何もすることがないですね。防衛装備移転三原則というものがあって、これがガチガチなのですよ。防弾チョッキを出すにも大騒ぎするでしょう? 各国は戦車を出すのに。「ヒゲの隊長」が、廃棄する予定の「MLRS」を供給すればいいと言っていますが……。

飯田)佐藤正久さんですね。

高橋洋)イギリスも使っていて、供与しているから、廃棄するのであれば出せばいいではないかと。政府内でもいろいろ動いているのだけれど、やはり難しいようです。

飯田)難しい。

高橋洋)あるのに出せないというのは、他の国からしたらわかりにくいですよね。イギリスなどは出しているのに。

飯田)「MLRS」とはどういうものですか?

高橋杉)多連装ロケットランチャーで、ロケットを撃つ発射台です。有名な「ハイマース」がありますが、MLRSはハイマースの発射ユニットを2つ付けているものです。だから弾ではありませんが、ウクライナで重要な役割を果たし得るものではあります。

ドイツでのG7外相会合で議長国の日本はウクライナ情勢に関して「何ができるのか」

ワシントンの米議会で、ウクライナ国旗を前に演説する同国のゼレンスキー大統領(中央)(アメリカ・ワシントン)=2022年12月22日 写真提供:時事通信

G7外相会合で議長国として日本は何ができるのか

飯田)それが日本では廃棄されるのですか?

高橋洋)そうです。だから「廃棄はないだろう」と。私は「廃棄するときにNATO諸国に頼んで廃棄すればいいのではないか」と思うのです。

飯田)NATO諸国に運んで、「あとはおまかせします」と。

高橋洋)「それならばきちんとしたやり方でしょう」と。冗談のような話なのだけれど、何か工夫が必要なのだと思います。こういうときに日本の総理がG7外相会合に行っても、何もできないのではないでしょうか。議長国なのに、ただ聞いているだけになってしまう可能性もある。

飯田)これに関しては。

高橋洋)防衛装備移転三原則は法律でも何でもないのだから、と私は思います。

飯田)法律ではないのですね?

高橋洋)少し法律が絡む部分もありますよ。ただ、基本的には法律ではありません。

飯田)政令や閣議決定レベルということですか?

高橋洋)基本は閣議決定レベルです。こういうときに貢献しておいた方が、いざというときに効果が高いのです。「他の国が困ったときに助けてあげないと意味がない」と思うのですが、そう思わない人もいるようですね。

飯田)「廃棄するのはもったいない」と、素人としては思うところです。

高橋洋)私も素人として思います。

日本に偵察気球が飛来した場合、「撃ち落とせない」というのは間違い ~「自動的に撃ち落とす」というのも間違い

飯田)基本的に防衛省・自衛隊は、内閣の方針や日本政府の方針に当然ながら従わなければいけませんからね。

高橋杉)そうですね。ですから政治サイドが動いて物事が変われば、その通りのことはできるかも知れません。役所でどうこうできることではありません。

飯田)内閣が方針を変えればできるものですか?

高橋洋)できると思います。できないことはないでしょう。例えば「気球が日本に来たときにどうするか」というのも、いろいろな手順があるようです。

飯田)偵察気球が来た場合。

高橋洋)自衛隊の人に話を聞くと、「最終的には静観するしかない」ということになってしまうそうです。それが方針なのだと思います。

飯田)気球について「撃ち落とせるのか、撃ち落とせないのか」という話題になりますが、どうお考えですか?

高橋杉)能力として言えば、赤外線誘導の空対空ミサイル「サイドワインダー」を、F15で目一杯上昇して撃てば当たるとは思います。

飯田)撃墜できる。

高橋杉)あとは枠組み的な話ですが、対領空侵犯措置があります。領空侵犯にあたる物体を見つけたときの権限が自衛隊にはあって、そのなかで主権や国民の生命・財産が脅かされると判断したときには、必要な措置を取る。大臣の話では、そのなかに撃墜が含まれることもあり得るそうなので、それに尽きます。実際、どういうときに撃墜するのかは表沙汰にするものではありませんが、「撃ち落とせない」と考えるのは間違いです。

飯田)間違い。

高橋杉)ただ、「自動的に撃ち落とす」というのも間違いです。そこは状況によります。

飯田)ケースバイケースである。国際法上でも手順を踏んで行われますよね。警告したり、曳光弾を撃ったり、翼を振ったり、いろいろな手続きが必要だということです。

「ポジティブリスト」を強いられる自衛隊 ~「ネガティブリスト」より裁量が少ない

高橋洋)手続きが必要なのだけれど、日本の場合は自衛隊が行政組織として位置付けられているから、「これができる」と決められているのです。ここが難しい。

飯田)「何が可能か」ということ。

高橋洋)「これをしてはいけない」ということであれば、もう少し裁量が多くなるのです。国際法のなかでは「これをしてはいけない」という考え方が普通です。だから大統領命令は横からでもできて、それに基づいていろいろなことが可能なのだけれど、行政法の観点から見ると微妙です。そこが少し違うと思います。

飯田)できることのリストを「ポジティブリスト」と言いますが、一般的な軍隊は「これをしてはいけない」という考え方で動く。

高橋洋)国際法に従うのが基本です。

飯田)「それ以外は目的のために最大限を尽くせ」という、「ネガティブリスト方式」と言われますね。

高橋洋)最大限に尽力しなかったら戦えないでしょう? 「ほどほどにしろ」というのは無理ですよ。

どういう状況で武器の使用が認められるか ~武器使用基準の訓練が重要になる

飯田)自衛官の皆さんは法律も頭に叩き込んで、常に作戦指揮などを行わなければならないのですか?

高橋杉)それは警察官も同じです。ただ、法執行ではないので、どちらかと言うと法律自体ではなく、命令や武器使用基準です。武器使用基準には「どういう状況で武器の使用が認められるか」が詳細に書かれているのですが、当然、相手に知られると穴を突かれるので、非常に高いレベルの秘密です。

飯田)高いレベルの秘密。

高橋杉)それは対領空侵犯措置も同じですので、それをきちんと叩き込んでいくというか、自分のものにしていく。例えばイラクに自衛隊が派遣されたときも、まず武器使用基準の訓練を行うことがとても重要でした。

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