胸や背中が痛むときは「大動脈解離」を疑え
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東京都医師会監事で「さいとう医院」院長の斎藤寛和氏が2月28日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。「胸痛と大動脈解離」について解説した。
胸痛 ~狭心症や心筋梗塞の場合は火箸でえぐられるような激しい痛みを伴う場合も
新行市佳アナウンサー)先生のご専門である心臓や血管に関する症状、病気について伺います。まずは胸痛について教えていただきたいのですが、胸痛は体のどの辺りで起こるのでしょうか?
斎藤)胸のどこが痛んでも胸痛なのですが、心臓に関連した痛みで言うと、ほとんどが胸の少し下、真ん中から左の方にかけて痛くなります。痛みの特徴としては締め付けられる感じや、狭心症、心筋梗塞の場合は火箸でえぐられるような痛みを感じることが多いと言われています。
背中が痛い場合、血圧の高い人や糖尿病の人は「大動脈解離」の可能性も
新行)胸だけではなく、背中が痛むこともあると思いますが、そういうときも循環器科で診てもらえばいいのでしょうか?
斎藤)背中の場合は、整形外科的な疾患や呼吸器疾患なども考えなければいけません。特に血圧の高い方や糖尿病をお持ちの方は、大動脈解離という、動脈の壁が裂けていく病気があります。この場合、胸の方で痛みが始まることもありますが、背中が激しく痛むことが多いです。
動脈の内膜に亀裂ができる大動脈解離 ~即死の場合もある
新行)大動脈解離について詳しく伺いたいのですけれども、原因は何なのでしょうか?
斎藤)そもそも動脈は3層構造になっており、内側から「内膜」、「中膜」、「外膜」の3層に分かれています。
新行)3層に。
斎藤)内膜は直接、血液に接していますが、高血圧の期間が長いと内膜に亀裂が入ると言われています。亀裂、あるいは病変ができてしまう。そこに裂け目ができると、高血圧によって裂け目から血液が壁の間に入ってきてしまい、「グジュグジュ」と裂かれていくのです。考えるだけでも恐ろしいですよね。
新行)想像するだけで恐ろしいです。
斎藤)酷い場合は、そこから血液が外に出て行ってしまい、外膜も破られてしまうと即死する場合もあります。
新行)即死ですか。
斎藤)逆に血液が心臓の周りの方に出て行く場合もあります。そうなると心臓からの血液の拍出ができなくなり、非常に重篤な状態になってしまいます。
大動脈解離になると病院に運ばれるまでの生存率は約50% ~生活習慣病の管理が重要
新行)大動脈解離の場合、症状が出たときでも治療すれば助かるものなのですか?
斎藤)病院に来るまでに50%ぐらいの方が亡くなっているのではないかと言われています。私は死体検案医という警察のドクターも務めていますが、亡くなった方のなかには「大動脈解離ではないか」と思われる方もかなりいらっしゃいます。ある先生のデータだと、50%ぐらいは当てはまるのではないかということです。
新行)約半数が。
斎藤)石原裕次郎さんは、最終的には肝臓がんで亡くなられましたが、その7~8年前に大動脈解離で重篤な状況に陥っています。生存率約10%と言われるような手術だったそうですが、手術を受けて生還されました。当時、病院の屋上から手を振っている写真を見て、すごいなあと思いました。
新行)大動脈解離は徐々に進んでいくものではなく、「ある日突然起きる」ことが多いのですか?
斎藤)前兆はあまりないです。ですから血圧や糖尿病の管理と、いわゆる生活習慣病の管理が大切です。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます