ウクライナ情勢についてドイツは「本当はどう考えているのか」 ドイツ公共放送・プロデューサーが解説

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ドイツ公共放送プロデューサーのマライ・メントライン氏が3月24日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ドイツにおけるショルツ首相の存在とウクライナへの考え方について語った。

ウクライナ情勢についてドイツは「本当はどう考えているのか」 ドイツ公共放送・プロデューサーが解説

2023年3月18日、握手を交わす両首脳~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202303/18germany.html)

日独首脳会談を総括

ドイツのショルツ首相は3月18日、岸田総理大臣と首脳会談を行った他、日本との間では初めてとなる閣僚も交えた「政府間協議」を行った。ドイツはレアアースなどの重要な資源や貿易で中国に依存していることが指摘されているが、ドイツは中国依存から脱却できるのか、日独首脳会談の成果と課題を総括する。

ロシア・中国との関係に懐疑的な緑の党に対し、様子見的なショルツ首相の社会民主党

飯田)日本とドイツの関係ですが、ショルツ首相になり、これまでと変わった部分はあるのでしょうか?

メントライン)あると思います。今回の政権は3党の連立政権なのですが、そのなかでいちばんロシアや中国との関係に懐疑的なのが緑の党です。

飯田)ロシア・中国との関係に懐疑的なのは。

メントライン)外務大臣を務めている緑の党のアナレーナ・ベアボックさんは、いままでの中国への依存を問題視していて、「中国との付き合いを考え直すべきではないか」と発言しているのです。ただ、いちばん大きな政党はショルツさんの政党である社会民主党です。

飯田)ショルツさんの出ている政党。

メントライン)ショルツさんの政党はどちらかと言うと様子見する感じがあって、外務大臣の方が中国との問題をプッシュしている印象があります。

飯田)緑の党はもともと人権の部分で、ウイグル問題などがあるため、中国を強く批判していました。欧州議員個人に対して中国側が制裁を掛けるようなことを、緑の党の議員に対して行っていた覚えがあるのですが。

メントライン)その通りです。「緑の党は環境」という印象が大きいと思います。ロシアや中国に関しては、難しいかも知れませんが「関係性を考え直した方がいいのではないか」というスタンスです。ウクライナ情勢に関しても、ベアボック外相は「ロシアとの戦いだ」と発言していますが、ショルツ首相は「表現が直接的すぎる」と批判するなど、あまり関係はよくありません。外交については緑の党が前に出ているところがあります。

連立政権が崩壊することは考えにくい ~ショルツ首相がどう決めるかがポイント

外交評論家・宮家邦彦)ドイツの政治は、選挙制度のこともあるのかも知れませんが、比較的政権が安定しており、新たな政権が誕生すると長く続きます。今回は連立政権で、若干内部でも温度差があるという話ですが、ショルツ政権も長く続くものと考えていいのでしょうか? 最近の地方選挙などを見ていると、必ずしも票が獲れているわけではないようですが、外交にどのような影響を与えると思われますか?

メントライン)ドイツの連立政権は確かに、連携がうまく取れていないようなところが最近目立っていますし、社会民主党も支持率が下がっている部分はあると思います。

飯田)社会民主党の支持率も。

メントライン)ただ、ドイツの場合は1度政権が始まれば、誰かがそこから抜けるとか、総選挙を途中で行うなどということはいままでありません。急に連立政権の崩壊が起こると思うドイツ人はいません。

飯田)ドイツの場合は。

メントライン)ただ、政権内に3つの政党があるので、それぞれ意見が違う部分があります。特に対中関係をどうするのかは、ショルツさんによるところがあると思います。首相が決めなければいけないので、そこがポイントなのではないでしょうか。

ウクライナ情勢に関してオープンな議論を避けるショルツ首相 ~ドイツはウクライナを本当はどう思っているのか

宮家)ウクライナ戦争に関して、ドイツはもちろんウクライナを支援していますが、必ずしもアメリカのように全面的な支援ではありません。ロシアにノルドストリームなどで依存していたことも事実ですし、簡単には切れないわけです。ドイツはウクライナをどう考えているのでしょうか? クリミアを含めて領土を獲り返すまで徹底的に支援するのか、それとも「戦争はそろそろやめた方がいいのではないか」と考えるのか、どちらだと思いますか?

メントライン)そこはドイツのなかでも議論になっています。特に年明け、ウクライナ戦争が始まって間もなく1年になるタイミングで、「終わらせ方はどうすべきなのか」という議論がありました。

飯田)1年を迎える前に。

メントライン)いろいろなシナリオがあるのですけれども、クリミアはロシアの領土となっても仕方ないのではないかという意見もあります。「戦争を続けて、これ以上の被害が増える意味がどこにあるのか」という議論がありました。

飯田)なるほど。

メントライン)政権からいろいろな声は出ているのですけれど、結局、明言を避けている感じがします。

飯田)明言を避けている。

メントライン)「ウクライナの皆さんはどうしたいのか」ということです。ただ、緑の党は積極的に話題にしていますが、ショルツさんはどちらかと言うとオープンな議論を避ける部分があります。

ショルツ首相はいつ武器供与を実行するのか ~フラストレーションの溜まるドイツ国民

メントライン)ショルツさんは様子を見る部分があって、武器供与に関しても、(武器供与の発表はしたけれど)「いつ決めるのか」という思いがドイツ国民にはあります。主力戦車を含めて。

飯田)レオパルト2という。

メントライン)世論調査を見ても、「武器供与をしてもいいのではないか」という意見が多いのですが、ショルツさんは何を考えているのかわからない部分があります。それが国内ではフラストレーションにつながっていて、「ショルツ首相の再選はないのではないか」と思うところもあります。

若い人に支持される緑の党

飯田)次の選挙で再選しないのではないかと。そうなると、キリスト教民主同盟(CDU)などの大連立のようなことも、先々は視野に入ってくるのですか?

メントライン)考えられますね。メルケル元首相の政党で、最後はかなり支持率が落ちていましたが、それには国内のさまざまな出来事が影響していました。いまは社会民主党の人気が落ちているので、また支持率が上がる可能性もあります。

飯田)キリスト教民主同盟の。

メントライン)ただ、若い人たち、特に大卒の高学歴と言われる層が緑の党を支持しています。最近は支持率が上がっているので、次の政権の第1党はもしかしたら緑の党になるかも知れません。

飯田)それほど変わるかも知れないのですか?

メントライン)これからのドイツが、環境や気候変動に関してもっと力を入れるようになるのか、外交はどうなるのかというところも影響すると思います。

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