北朝鮮ミサイル Jアラート出しながら「どこに落ちたか」の発表がないことに疑問 元統合幕僚長が指摘

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元統合幕僚長の河野克俊が4月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月13日に北朝鮮から発射された弾道ミサイルについて解説した。

北朝鮮ミサイル Jアラート出しながら「どこに落ちたか」の発表がないことに疑問 元統合幕僚長が指摘

【北朝鮮ミサイル発射の影響】北朝鮮ミサイル発射による運行への影響を表示する電光掲示板を見る乗客ら=2023年4月13日 札幌駅 写真提供:産経新聞社

北朝鮮のミサイル、領域への落下予測は戦後初

北朝鮮が4月13日に発射した弾道ミサイルについて、自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は、日本の領域内への弾道ミサイル落下が予測された戦後初のケースだったことを明らかにした。

固体燃料となり脅威度が向上した「火星18」

飯田)記者に質問されて、「そうした認識だ」と答えたということです。北朝鮮の弾道ミサイルについて、朝鮮中央通信は4月14日、固体燃料エンジンの新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の発射実験を行い、金正恩朝鮮労働党総書記が現地で指導したと報じました。「火星18」は3段式で発射実験が成功し、金正恩総書記は大きな満足を表明したとも報じています。発射されたのは新しいミサイルなのですか?

河野)これまでは「火星17」が最新でしたので、「火星18」は最新型であり、なおかつ固体燃料です。固体燃料ということは、即応性が高い。液体であれば燃料を注入しなくてはいけないので、その間に兆候が把握できる可能性がありますが、固体燃料だと形勢の把握もしづらいのです。

飯田)移動も容易になり、どこからでも撃てるようになるということですか?

河野)そうです。ですから、脅威度が向上したと言えると思います。

今回の全国瞬時警報システム(Jアラート)発信は間違っていない ~危機管理において「空振り三振」はいいが、「見逃し三振」は許されない

飯田)今回の発射に関して、最初はJアラートが出て日本の領域内、北海道の南西部に着弾する可能性があると言われていました。落下の可能性があったということですか?

河野)私も詳細が掴めていませんが、報道によれば、確認した直後にレーダーから消失したということです。それだけで(落下地点を)北海道だと予測できたのかはわかりませんが、いずれにしても、何らかの解析で北海道と結論を出したのだと思います。

飯田)何らかの解析で。

河野)結果として「違った」ということになりましたが、危機管理は「空振り三振」はいいけれど、「見逃し三振」はいけないと言われます。何らかの解析で「北海道だ」と結論を出し、見失った。見失ったということは自分が把握していないわけですから、そこで警報を出すことは間違っていないと思います。

飯田)万が一ということで。

河野)レーダーで掴んでいて、北海道ではないことがわかれば解除しなくてはなりません。ただ、最初の段階で北海道と結論を出し、見失ってしまったのであれば、自分たちが把握できないわけですから、万が一を考えて警報を出した判断は間違っていなかったと思います。

日米韓が連携してミサイル発射という事象は把握していた

飯田)地球は丸いので、日本のレーダーでは、ある程度まで打ち上がらないと捕捉できない。解析できたということは、ある程度まで上がったと考えてよいのでしょうか?

河野)北海道という地点を割り出したわけですから、そうだと思います。それには韓国とアメリカの情報も必要です。日米韓が連携して発射の事象を把握したので、発射されたこと自体は絶対に間違いありません。北朝鮮も発表していますからね。

「どこに落ちたか」の発表がないのはなぜか

河野)ただ今回、不思議なのは、「どこに落ちたのか」の発表がないのです。

飯田)いまのところ出てきていませんね。

河野)普通ならば「排他的経済水域(EEZ)の外でした」、「内でした」という発表があるのですが、それが出ていないのはおかしいと思います。

飯田)一部報道などでは、レーダーから消失しているので、粉々に分解してしまったのではないかという指摘もありますが。

河野)分解したのであれば、破壊や爆破、自爆など、いろいろ考えられます。日米韓3ヵ国が見ているわけですから、絶対にそういうことも把握できているはずです。

アラートを出したのだから、どこに落ちたかを発表するのは国の責任

河野)その発表もない。しかも、北朝鮮の発表が正しいかどうかは別にして、北朝鮮側は発射実験が成功し、金正恩総書記が大きな満足を表明したとまで言っているわけです。どこに落ちたのか国民には発表するべきだと思います。

飯田)レーダーから消えた地点はわかりますものね。そこで何が起こったかは分析するべきだと。

河野)消失した以降の発表が一切ないので、そこはきちんと情報を出すべきです。アラートが出て、北海道では必死に逃げた方々もいたわけですから、結果がどうだったのかをお伝えするのは国の責任だと思います。

北朝鮮の脅威がさらに上がっていると認識するべき

飯田)弾道ミサイルの発射は、当然ながら国連安保理決議違反です。しかし、安保理で非難決議を出そうとすると、中国やロシアの拒否権があって機能しないという流れが、もう20年以上続いています。日本がどう対処するかを考えると、ある程度の独自の抑止力と反撃能力で対応することになります。

河野)今回、吉田統合幕僚長のコメントが出ていますが、領域内に落ちると予測されていて、それは「戦後初だ」と言っている。確かに、領域内への落下が推定されてアラートを出したのは、おそらく今回が初めてです。

飯田)戦後初めてであると。

河野)アラートを出したことに問題はなかったと思いますが、訂正するのであれば、「実際はこうでした」という情報が今回はないので、きちんと出してもらいたい。また、領域内に落ちるという予測が出るような事態であれば、私の現役時代よりエスカレートしていますので、北朝鮮の脅威がますます上がっていると認識すべきです。

疑問が残るイージス・アショア配置のキャンセル

飯田)河野さんが任に就かれていた2017年当時は、北朝鮮が次々とミサイルを撃っていました。それがあったからこそ、イージス・アショアで守ろうという話になったわけです。

河野)いろいろ経緯はあったと思いますが、いまはイージス・アショアがキャンセルになって、イージスシステム搭載艦の方に移りました。イージス・アショアの導入を決めたとき、私は統合幕僚長でしたので、イージス・アショアのキャンセルについては疑問に思いました。当時も申し上げたのですが、イージス・アショアをキャンセルしたころは、北朝鮮からのミサイルはあまり飛んできていなかったのです。

飯田)なるほど。

河野)日本人の目には見えていなかったので、脅威感が薄れていた時期でしたが、決して北朝鮮の脅威が消えたわけではなかった。核もミサイルも一切放棄していないわけですから、そこは冷静に分析し、対応していただきたかったです。

飯田)当時は米朝首脳会談などがあって、情勢的に撃たなかっただけでした。

河野)まさにそういうことです。

防御だけでは100%守ることはできない ~有事に「想定外」は通用しない

飯田)ミサイルでの防衛も、反撃能力的な抑止力もそうですが、「どちらを取りますか」という議論をずっとこの国はしていたのかも知れません。しかし、本来であればどちらも必要ですよね。

河野)世界各国、どちらも必要です。防御も大事ですが、それだけで100%にはなりません。場合によっては根元を叩くことも必要です。「想定外」は通用しない世界ですので、万全を期すという意味でも両方持っておく。ミサイル防衛で対処するのが基本ですが、対応しきれずに日本の国民の方々に犠牲が出るなら、やむを得ず叩くこともあってしかるべきです。やはり両方持っておく必要がある。今回の安保3文書で反撃能力に踏み込んだのは、そういう観点だと思います。

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