「増税」は避けるべき 将来の明るい展望が開けるまでは

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元内閣官房参与で元駐スイス大使の本田悦朗と前日本銀行政策委員会審議委員でPwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士が4月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後の経済政策について解説した。

「増税」は避けるべき 将来の明るい展望が開けるまでは

※画像はイメージです

第3の矢「成長戦略」が飛ばなかったアベノミクス

飯田)アベノミクスの経済政策が行われた当時、第1の矢「大胆な金融政策」はよく飛び、第2の矢「財政政策」も、ある程度は飛びました。しかし、第3の矢「成長戦略」はさほど飛んでいないではないか、と批判されたという話があります。

本田)1回目の消費税増税は5%から8%へ。そして2019年10月に行われた2回目の消費税増税は、軽減税率が付いていたものの、8%から10%へ上がりました。この2回のショックは我々の予想をはるかに超えて大きかった。特に2回目の消費税増税です。

飯田)2回目。

本田)1回目は「影響が出るだろう」と覚悟の上でやったのですが、2回目は安倍さんもいろいろ工夫されて、「全世代型社会保障政策をやる」と。増税するけれども、お返しをするという方向で組んだのです。しかし、増税されて所得が減っていくことの効果が、非常に大きかった。

将来の明るい展望が開けるまでは増税はやめるべき

本田)そのあと、2019年の第4四半期、10~12月期にマイナスになりました。そこからコロナ禍が続いてしまった。結局、増税なのかコロナなのか原因がはっきりしないまま、低調が3年間続いたのです。

飯田)原因がわからないまま。

本田)ですから消費者と企業経営者のマインドが安定し、将来に対する明るい展望が開けるまでは、増税はやめて欲しい。特に消費税の増税はやめて欲しいと思います。

競争を喚起しなければ第3の矢は飛ばない ~需要がなければ競争は起こらない

飯田)日銀なり内閣府なりが計算している需給ギャップ、需要と供給のバランスで見ると、まだまだマイナスが続いています。やはり需要がなければ、どんな政策も難しいですか?

本田)難しいですね。第3の矢は基本的には規制緩和を行い、そして競争を喚起する。それから政府のやるべき公共的な事業に投資し、それによって競争を喚起する。とにかく競争を喚起しないと第3の矢は飛ばないのです。ところが、需要がないと競争は起こらない。

インフレになれば「他社と違うことを行う」努力をしなければ持たなくなる ~それが生産性を上げることにつながる

飯田)需要がないなかで競争しようとすると、「価格を下げよう」となってしまうのですね。

片岡)価格が上がるなかで、どう企業が工夫するか。どのように価格上昇をお客さんに納得してもらうかという形で、工夫が生まれるのだと思います。

飯田)価格の上昇をお客さんに納得してもらう。

片岡)そのためには、もちろん政府の政策も大事なのですが、企業自身による「この環境を生き残っていくのだ」という主体的な動き、努力も合わせて必要になるのです。

飯田)企業に。

片岡)これまでは景気がまったく温まっていない、物価が上下しないなかで、「経済が価格によって動く」という現象が起こっていなかった。そのため政府頼み、または同業他社を見て、同じようなことをやっていればよかったわけです。

飯田)これまでは。

片岡)今後、インフレの時代になっていくのだとすれば、競争を働かせて「自社が他社と違うことをやっていく」という努力をしないと、持たなくなってくると思います。

飯田)値段以外で付加価値をつける。

片岡)それがまさに「生産性を上げる」という話につながるのだと思います。

日本の生産を損なう可能性のある「正規職員と非正規職員」の区別

飯田)その意味では、日本はこれからがチャンスなのかも知れない。

本田)チャンスだと思います。日本は昔からの風習が多く続いている。例えば正規職員と非正規職員の区別は、世界中にはありません。私も世界銀行に3年間、欧州復興開発銀行に3年間いましたけれど、基本的には不定期で雇う形と、フィックスターム……例えば3年契約~5年契約で雇うという、2種類しかないのです。

飯田)2種類だけ。

本田)ところが日本では、待遇がまったく違います。社会保険の手当もそうです。同じ労働をしているにも関わらず、正規と非正規で違い過ぎる。そういうことが非生産性を生んでしまいます。逆に言えば、本当は非正規職員の方がいつクビになるかわからないのですから、場合によっては高い賃金を払わなければならないのです。

飯田)本来であれば。

本田)でも日本ではそういうことが起こらない。ベースアップは基本的には正規職員だけです。私が特に気にしているのは定年制です。アメリカでは州によりますけれども、「定年制は年齢による不当な差別だ」として、違憲判決が出ている州が多いのです。

飯田)憲法違反にあたると。

本田)定年制が必要な職業もあります。警察官や消防士だと、70歳~80歳の人が火を消しに行くのは難しいですから。しかし、例えば国家公務員のような仕事は、定年を超えても普通に続けられるのです。もちろん若い人に手伝ってもらわないといけないことも多いでしょう。しかし、そういうことを一切抜きにしてクビになってしまうのは、日本の生産性を損なうのではないでしょうか。もったいないです。

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