ジャーナリストの有本香が4月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。安倍元総理の台湾有事をめぐる発言への質問に対して明言を避けた林外務大臣の対応について解説した。
安倍元総理の台湾有事発言をめぐり、林外務大臣が明言を避ける
4月24日に行われた衆院決算行政監視委員会の分科会で、総理大臣退任後に安倍元総理が「台湾有事は日本有事だ」と訴えた発言をめぐり議論となった。この発言について質問を受けた林外務大臣は「政府としてのコメントは差し控えたい」と述べるに留めた。
飯田)立憲民主党の原口一博さんが質問したところ、政府としての明言を避けた形になりました。
台湾で何かあったら日本の有事になることは間違いない ~中国に対しての牽制の一言があって欲しかった
有本)確かに安倍元総理も総理をお辞めになり、割と自由になってからの発言ではありました。ただ、あのときよりも情勢はさらに悪くなっているわけです。
飯田)そうですね。
有本)林外務大臣は、閣僚としては安全運転な答弁に終始したのですが、私は何か牽制的な一言があってもよかったのではないかと思います。
飯田)牽制する一言が。
有本)安倍元総理の発言の真意を閣僚が代弁する必要はないけれど、台湾で何かあったら、直ちに日本の有事ですよね。それは間違いないわけです。その部分はきちんと「そういう解釈だ」と言っていいと思います。台湾で何かが起き、台湾海峡が通行できなくなったら、日本にエネルギーは入ってきませんからね。
飯田)そういうことになりますね。
有本)私たちの生活が立ち行かなくなる可能性があるので、その辺りのことは国民にもある程度、警鐘を鳴らす意味でも言ってよかったと思います。それから「平和的に解決されることが望ましい」というような答弁をしていましたが、そういう抽象的な言葉ではなく、中国に対する牽制の一言はあって欲しかったです。
尖閣諸島の周りも常時中国公船が入り情勢が悪くなっている
飯田)去年(2022年)の末に改定された国家安全保障戦略等々、いわゆる防衛3文書でも当然ながら台湾について、地域・周りの環境に対する言及は相当あったわけです。
有本)相当分厚くありましたし、防衛白書も2021年版から台湾に関する記述が変わりましたよね。
飯田)そうですね。
有本)それまでは中国というくくりのなかで、台湾を添え物のように置いていたけれど、全部分けて記述するようになった。明らかにこの2年で環境は激変していますし、日本のスタンスも明確にしているわけです。
飯田)日本のスタンスも。
有本)そこを踏まえた外務大臣の発言、特に中国に対しては牽制するぐらいの一言は欲しかったですね。台湾の話だけではなく、尖閣諸島の周りも情勢が悪くなっているわけですから。
飯田)中国公船と称する船が領海に常時入っている。
有本)最長居座り記録のようなものも更新しているではないですか。中国が「公船と称する船」は、人民解放軍の下にある船ですからね。
飯田)指揮命令系統を見ると。
有本)限りなく軍の船ということです。
飯田)色を塗り替えただけではないか、という指摘もありますね。
有本)それが常時いるような状態になっているわけですから、寸鉄のような一言があってもよかったのではないかと思います。
2024年の台湾総統選では真打ちとも言える頼清徳氏が民進党の公認候補に ~日本はもう少し踏み込んだ姿勢を示すべき
飯田)来年(2024年)、台湾では総統選が予定されています。
有本)台湾は頼清徳副総統が出ると決まりました。
飯田)民進党は。
有本)頼清徳さんはもともと台南の市長ですが、本当の意味での台湾独立派です。台湾のことを「台湾人」という意識で考えている人たちからすれば、「真打ちが出てきた」ということでしょう。つまり、中国にとっては非常に嫌な人が出てきたわけです。
飯田)中国にとって。
有本)そういう緊張感漂う環境にこれから入っていくのです。各国でも、先日はフランスのマクロン大統領が米中対立から距離を置くような発言をするなど、よくわからないところもある。一方では、上院副議長が台湾で蔡英文総統と会談するなど、いろいろな調整をしているわけです。だから日本も、もう少し踏み込んだ姿勢を示していいのではないかと思います。
飯田)マクロンさんと一緒に、欧州連合(EU)トップのフォンデアライエンさんも訪中しました。
有本)でも、扱いが全然違います。
飯田)彼女は人権の話などをして応酬になったという報道もありましたね。
有本)そうしないと、EUとしての姿勢が問われますからね。
林外務大臣が訪中して抗議しても戻らない拘束されている日本人男性 ~国会での発言くらいはもう少し「ピリッ」と聞かせて欲しかった
有本)林外務大臣は先日、中国に行きましたよね? 一体あれは何だったのかということです。
飯田)事前の鳴りもののような報道では、中国に拘束された日本人を……。
有本)製薬会社の方。
飯田)その交渉をするのだという話でしたが。
有本)でも、何も動いていないですよね。私たちに見えるところでは何も動かないまま、かなり時間が経っています。
飯田)そうですね。
有本)林さんは中国側と相当のパイプがあるでしょうから、林さんの顔を立てるために(拘束された日本人を)返してくるのかなと予想しましたけれど、全然違いました。むしろ面子を潰されるようなことになっているではないですか。
飯田)尖閣周りの話も、最長記録をつくったのは、ちょうど林さんが中国に行っているときですからね。
有本)「話し合いをしましょう」というときに船を差し向け、圧力を掛けるというのは、日中平和友好条約のときからの中国のやり方ですけれども。こういうことをされているわけですから、せめて国会での発言くらいはもう少し「ピリッ」と聞かせてくれてもよかったのではないかと思います。林外務大臣にはそこを強く言いたいです。
飯田)なるほど。
拘束されている日本人男性が帰国するにはトップやカウンターパートに強く迫らなければならない
有本)向こうに拘束されている日本人のその後はどうなっているのですかね?
飯田)かつて北海道大学の先生が拘束されたときの話が、安倍さんの回顧録にも出てきますが、当時の国家副主席だった王岐山氏に話したら「何のこと?」というような反応だったと。
有本)全然、認識していないぐらいの状態ですよね。
飯田)やはりトップ・オブ・トップにぶつけないと、事態が動かなかったということですよね。
有本)安倍元総理はそういうことをやっています。以前の話なので知る人も少ないのですが、日本の東大にいたウイグル人が中国で拘束されたことがありました。第1次安倍政権を辞めたばかりの時期でしたが、安倍さんは来日していた胡錦濤氏との朝食会でそれを訴え、実際に救出しているわけです。日本には帰れなかったのですが。
飯田)安倍元総理が。
有本)このことから世界中のウイグル人は、安倍さんに対して恩を感じているのです。「実際にウイグル人を中国の刑務所から助け出した実績のある政治家はいない」と言っていますからね。
飯田)なるほど。
有本)そういうことも含めて、林さんは向こうのトップや自分のカウンターパートである外交責任者に対して、もっと強く迫ってもらわないと、帰って来ないですよね。
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