元内閣官房副長官・松井孝治が知る 安倍元総理と野田元総理の「関係」

By -  公開:  更新:

元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が10月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。野田元総理が行うことになった安倍元総理の追悼演説について解説した。

元内閣官房副長官・松井孝治が知る 安倍元総理と野田元総理の「関係」

衆院選2012・ネット党首討論会 フォトセッションで言葉を交わした野田佳彦首相と安倍晋三自民党総裁=2022年11月29日 写真提供:産経新聞社

安倍元総理の追悼演説、10月25日で調整 ~演説は野田元総理

与野党は安倍晋三元総理への国会での追悼演説について、10月25日の衆議院本会議で実施する調整に入った。演説は立憲民主党の野田佳彦元総理が行う。

飯田)落ち着くべきところに落ち着いたというところですか?

松井)当然のことだと思います。反対政党が行うことによって、逆にウィングが広くなるのです。国会における激しい議論はあれども、亡くなった元首相に弔意を示すのは当然のことです。

安倍元総理と野田元総理の関係

松井)安倍さんについては、政策の賛否や旧統一教会の問題などがあるかも知れませんが、それと亡くなった安倍さんを悼むことは別です。野田さんが国葬に出られたのも当然だろうと思います。

飯田)野田さんは国葬にも出席されました。

松井)追悼演説では、党首討論の話もされるでしょう。それから、話の中身についてどこまで言えるのかはわかりませんが、ご譲位の問題も話されると思います。

飯田)ご譲位の問題。

松井)安倍政権的に言うと、いまの上皇陛下がおっしゃったのはいろいろとあったかも知れないけれど、そのあと内閣が引き取って国会に預け、国会も内閣も与野党を超えて話し、しかるべきところに収めた。そこは野田さんの尽力なしにはできなかったと思うのです。野田さんは堂々と議論されるし、今回の国葬儀は野田さんは反対だったと思いますよ。

国会に対する不幸な認識を変えるきっかけにして欲しい

松井)いろいろ議論があっても、長い間、日本国のリーダーとして国際的にも活躍された方に対し、弔意を示すのはとてもいいことです。大学生にも、「いろいろ議論があったとしても、最後は日本の国を担うものとして1つになるのだ」というところを示して欲しいです。多くの学生は「野党も与党もなじり合いをしている」というような、国会に対する不幸な認識ができ上がってしまっている状況です。それを変える1つのきっかけにして欲しいですね。

飯田)そうですね。

松井)国葬に野田さんが出てくださったことによって、認識はだいぶ変わったし、自民党の人たちも「そうだよね、こういう人だったよね」と思ったでしょう。

飯田)野田さんのことを。

松井)立憲民主党ではあるけれど、この人は信頼できると。「立憲民主党だけれど」という言葉がついてしまうことが国民の不幸ですよ。それを払拭していただく意味でも、きっといい演説をされると思いますし、期待しています。

飯田)どういうことを言い、それに対して議場がどう反応するかは見てみたいですよね。

松井)久しぶりに国会がいい姿を見せたな、という形にしていただきたい。野田さんに対して「与党にすり寄って」と批判する人もいますが、そうではないということを立憲民主党の人たちにも示して欲しいですね。

国民の野党像を一新させるためにも期待したい

飯田)今回、追悼演説をどうするのだ、誰がやるのだというところが議論されました。

松井)政権を運営するということは大変な仕事なのです。その大変な仕事を軽蔑するような風潮が若干あるのですが、よくない状況です。「総理、長年お疲れ様でしたね」ということを、党派にかかわらず言えるような国にしていかないといけません。

飯田)党派にかかわらず。

松井)パブリックに仕えるということは、個人的なことをすべて犠牲にして仕えるということなのです。ミサイルが飛んできたら叩き起こされる。「お前が望んでいるのだろう」ということなのですが、「パブリックに尽くす」ということについて最低限の敬意を持った上で、「おかしいものはおかしい」と言って批判する。そこは両立させなければいけないと思います。そのためにも、国民の野党像を一新する大きなチャンスですので、期待したいと思います。

元内閣官房副長官・松井孝治が知る 安倍元総理と野田元総理の「関係」

2022年10月3日、参議院本会議で所信表明演説を行う岸田総理~出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202210/3shu_san_honkaigi.html)

「対立と分断に終始するような国会像」を改める機会にして欲しい

飯田)もはや廃れてしまった言葉ではあるかも知れませんが、「末は博士か大臣か」と言われ、選挙に受かって議員になった人たちのことを選良と言った時代がありました。

松井)でも、過去形になってしまった。

飯田)過去形にしてはいけないのですが、選ばれた人たちへの尊敬というものが必要です。「誰がやっても一緒でしょう」と、「揶揄するのがいい」というような風潮が続いてしまったことは、違うのかなと感じます。

松井)野党が政権を担ったのに、政権に対する恨みというか、ルサンチマンのような感情が強すぎたのが引き金だと思います。

飯田)政権に対する恨み。

松井)与党像にも、従来の懐の深さがなくなっていました。でも今回、「敵から塩を送ってもらうことの大切さ」に自民党の方々が気付かれた。泉健太さんもやや言葉足らずで、それに対して批判的なことを言ったけれども。

飯田)泉健太代表が。

松井)本当は評価していて、ご遺族の意向があるのだなとポジティブに受け止めたのだけれど、どうしてもマスコミを含め、泉健太さんが批判しているというレッテル貼りをされてしまった。「対立と分断に終始するような国会像」を改める1つの機会にして欲しいと思います。

立憲民主党がきちんとした批判と論争を自信を持って行うべき

飯田)所信表明に対する代表質問で、泉さんは議長に対する質問があり、いろいろ注意があってというところです。あれも内幕が出てきましたけれど、泉さんは最後の最後まで迷い、本当は「やりたくないな」という気持ちもあったけれど……というような情報が出てきています。

松井)いろいろなところに遠慮しすぎですね。

飯田)いい人なのですか?

松井)いい人です。立憲民主党も泉健太さんを持ち上げたのならば、みんなでサポートしてやれよと言いたいですね。

飯田)岡田代表で泉健太幹事長のような……。「逆ではないか」という感じです。

松井)1つ間違うとそんな感じになってしまっているので、自信を持ってやって欲しい。本当は野田さん辺りが励まして欲しいと思います。

飯田)全体としてのあるべき像ですよね。

松井)立憲民主党が堂々と自信を持って、きちんとした批判と論争をしていればいいのです。まだ遠慮が目立つような気がして残念です。でも、これをきっかけに是正されることを願いたいですね。自民党にはもう少し「ピリッ」として欲しいと思います。

飯田)そうなるとね。

元総理として、安倍元総理を送る場に欠席することはおかしい

松井)岸田さんは横着というか、気持ちはわかるのだけれど、今回のマイナンバーカードの問題もそうです。

飯田)新聞事例のようなリークがあって、何となく空気をつくって発表し、「閣議決定です」というような。

松井)いいことは果断に行えばいいと思うのですけれど。もう少し与野党できちんと議論したり、大切なことは与野党の党首会談を呼びかけて、「協力してくれないか」と話し合えばいいと思います。もともと民主党政権のときに言っていた話です。

飯田)マイナンバーに関してもそうですよね。

松井)最初の鳩山政権のときに、私たちがこの議論を始めたのです。実は知っている人は知っているのですが、知らない人は知らない、あるいは知らなかったふりをするという。内閣人事局の話も私が言い出したのに、「あんなものは諸悪の根源だ」と民主党系の人たちが言うとかね。

飯田)民主党系の人が。

松井)「あなた方が言った話でもあるし、自分たちが受け継いでいまやろうとしているのだから、与野党で協議しよう」と。「国民生活にかかわる話だから」と言って、法律にする必要は必ずしもないかも知れないけれど、国会で俎上に載せ、党首会談を行った上で議論して欲しい。それが野田さんの言っていることなのです。野田さんは立派な人ですけれど、政策的な細かいことを言う人ではありません。でも、大きな判断は間違えないのが野田佳彦さんという人です。

飯田)あるべき議論もきちんと見据えて。

松井)国民として、元総理として、元総理大臣を送る場に欠席することはおかしいと。それはまともな判断です。

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top