数量政策学者の高橋洋一が4月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月の月例報告について解説した。
月例経済報告 ~一部に弱さがみられるものの緩やかに持ち直している
政府は4月25日に発表した4月の月例経済報告で、国内景気の総括判断を「一部に弱さがみられるものの緩やかに持ち直している」とし、1月から4ヵ月連続で同じ表現に据え置いた。個人消費や設備投資で回復基調が続き、住宅建設や公共投資も底堅い動きで推移していると表現した。
飯田)一方で倒産は増加傾向だということです。足元の経済はどう見たらいいですか?
100兆円のコロナ対策によって景気の底が抜けなかった ~それが効いてきている
高橋)安倍・菅政権の時代に100兆円のコロナ対策を行いました。これは世界最高水準だったのです。これについて「無駄だった」という批判があるけれど、無駄でも何でも、お金を出したから景気の底が抜けていないことは間違いありません。
飯田)100兆円のコロナ対策を行ったから。
高橋)底が抜けずに回復すれば、それは普通の国より有利だと思うのですが。
飯田)他の国より。
高橋)この話をすると「無駄遣い」などと言われますが、ジョン・メイナード・ケインズは「景気が悪いときは穴を掘って埋めればいい」と言っています。
飯田)経済学者の。
高橋)有効需要の原理をわかりやすく説明しているのです。本当に穴を掘って埋めればいいとは思っていませんが、そういうものにも「実は意味がある」という言い方をしたわけです。
インバウンドが回復傾向に
高橋)無駄と言えば無駄なのでしょうけれど、有効需要の観点から見れば、そこそこやったわけです。それがようやく効いてきて、底割れしなかったから、いまインバウンドが急速に出てきましたね。
飯田)海外からの観光客などが。
高橋)私は新幹線で毎週、大阪に行っていますが、新幹線のなかでも座っている人が多くなりました。以前は1つの車両に1人~2人しか乗客がいないときもありましたが、いまは隣に必ず人がいます。
飯田)ほぼ埋まっている。
高橋)インバウンドを見てもわかりますが、いろいろな国から来ていますよね。
有効需要の観点から見れば無駄ではない
飯田)先ほどの穴を掘るという比喩ですけれども、穴を掘るにあたって人員がたくさん必要になるし、その人たちに給料を払えば、彼らがお金を使ってくれるので経済が回る。そしてまた埋め戻すときにも人員がいると。私は経営学部だったので、1年生のときに習いました。「君たちは無駄だと思うだろう。でも無駄ではないのだよ」と教授に教えられました。
高橋)無駄かどうかは、そのときの観点によるのです。
飯田)あとに残されるものがどうかという。
高橋)有効需要という観点から見れば、無駄ではないということです。
消費者物価指数は上がっているが、インフレを見るような指標まではいっていない
飯田)コロナ禍では、一部で強制貯蓄などとも表現されましたけれど、使おうと思っても使えず、預金として積み上がった部分がある。それが出てくることによって需要は高まるけれど、その分インフレになってしまうような状況が、アメリカやヨーロッパで起こったではないかと言われますが。
高橋)日本の場合は幸か不幸か、デフレマインドが強いので、そこまでは到達していません。消費者物価はもうピークを過ぎたと思います。今年(2023年)の後半になると徐々に下がって、消費者物価指数は2%を割るかも知れません。2%ぐらいでしょうか、そのくらいになる可能性が高いです。
飯田)2%に。
高橋)有効需要の話で言うと、まだGDPギャップ(経済全体の総需要と供給力の乖離)があり、20兆円ぐらい足りないですね。だからもう20兆円ぐらい財政出動すると、いい感じの経済になると思います。
飯田)まだ需要の部分が弱い。
高橋)弱いですね。弱いから消費者物価は上がっていますけれど、GDPデフレーターという、本当のインフレを見る指標にはまだ至っていません。
飯田)消費に関しては「緩やかに持ち直している」という表現ですが。
高橋)ですので、たいしたことはないですよ。アメリカや欧州のように、消費者物価が6~7%になることはまずないですね。
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