衆院解散は「秋ごろ」である「これだけの根拠」
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ジャーナリストの鈴木哲夫が4月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。衆議院解散・総選挙の時期について解説した。
岸田総理、衆議院の解散について「いまは考えていない」と発言
岸田総理大臣は4月26日に行われた衆議院経済産業委員会で、衆議院の解散・総選挙について「いまは考えていない」と述べた。総理は「いまは重要法案あるいは重要課題に1つひとつ結論を出していくことが重要で、それに全力を尽くすべきだ」と強調した。
飯田)日本維新の会の遠藤良太氏が「年度内の解散はあり得るのか」と質問しました。
鈴木)それに対して「別に時期がどうのこうのではなく、いま解散は考えていない」と答えた。時期を聞いているのですけれどね。いまとは昨日(26日)のことを言っているのか。何が言いたいかと言うと、解散は「やります」と言ってやるものではないし、いつやるかわからないから解散カードは有効なのです。永田町では「総理は解散については嘘をついてもいい」と言われるではないですか。
飯田)そうですよね。
鈴木)岸田さんはいろいろなことを考えて、勝つタイミングで解散を打つのは間違いありません。「いまはやらない」と言っているけれど、本当にやらないかどうかは、額面通りに受け取ることはできないと思います。いつやってもおかしくないのです。
通常国会の終わりくらいに解散するのではないかと囁かれているが
鈴木)しかし、本当に早期解散できるのか。いま言われているのは、今回の補欠選挙の結果がそれなりによかった。さらにいまは支持率が回復してきています。そのため、岸田さんはサミットが終わったら、通常国会の終わりぐらいに解散するのではないかと。なぜならば、いまなら勝てるからです。野党もまだまだ準備ができていない……というようなストーリーが語られています。
飯田)解散風のようなものが吹いているのかどうか。
鈴木)4月23日の統一地方選の投開票日に、東京都内で自民党の区議会議員選挙などをやっていたでしょう? かなり有名な自民党のある女性議員が、その選挙事務所を回りながら「解散あるよ!」と高揚した感じで言っていたそうです。
飯田)なるほど。
鈴木)区議からすると、「まだ我々の投票が済んでいないのに何を言っているのだ?」と思ったと。そんなこぼれ話を区議から聞きましたけれども、そういうムードにもなっているのです。
中身は厳しかった補選の「自民4勝1敗」 ~自民党の内部分裂で負けた和歌山1区
鈴木)今回の4勝1敗という補選の結果は、圧勝のように聞こえるけれど、中身をきちんと見ると実は「厳しかった」と思います。自民党の元選対幹部議員の方も言っていましたが、和歌山で負けた際、この負け方が悪いのですよ。自民党の内部分裂でしょう?
飯田)内部分裂で。
鈴木)それがなかったら勝っているのに、調整が効かない。現場で揉めるのは自民党ではよくあることだけれど、負けてしまうぐらい揉めるのであれば中央から入っていって、総裁や幹事長などが、かなりギリギリと調整するわけです。
飯田)中央が「これでいくのだ」と。
中央のガバナンスが効かない組織になってしまった自民党
鈴木)ガバナンスと言うのでしょうか。安倍さんや菅さんのときにはそれがありました。二階さんが幹事長だったり。
飯田)当時は。
鈴木)しかし、いまの自民党は中央のガバナンスが効いていない。10増10減の調整もそうだけれど、体制的にガバナンスが効かない組織になっています。こういうなかでの選挙はなかなか厳しいのではないでしょうか。
安倍元総理のときは約10万票を取っていた山口4区 ~今回は約5万票しか取れなかった
鈴木)山口は圧勝と言われているけれど。
飯田)山口2区と4区。
鈴木)例えば4区で言うと、安倍さんが総理のときは約10万票を取っていました。総理を辞めたあとも、少し減って約8万票。それが今回は約5万票ですよ。
飯田)吉田真次さんが立ったけれども。
鈴木)それから、元フジテレビ記者の岸信千世さん。
飯田)山口2区ですね。
鈴木)5000票差ですよ。
飯田)平岡さんと一騎打ちでした。
鈴木)勝ったとはいえ、5000票差なんていつでもひっくり返ります。そういう意味でも、4勝1敗だから「よし、勢いがある!」という感じにはならないですよ。
大阪市議会でも過半数を割り厳しい状況の公明党 ~そのなかでも解散はあり得ない
鈴木)もう1つのポイントは、実はあまり言われていませんが、公明党だと思います。
飯田)公明党。
鈴木)公明党はここ数年、党の勢いが弱ってきていたので、今回の統一地方選は必死だったのです。しかし、要の地方議員がかなり落選している。
飯田)公明党は地方議員を本当に重視しますよね。そこから根っこをつくると。
鈴木)それが公明党の最大の売りですし、市議や町議など、地方議員は各政党のなかでも圧倒的に多いぐらいです。それが相当、苦戦している。しかも今回、統一地方選の前半戦では、維新が大阪市議選で単独過半数を獲りました。
飯田)そうですね。
鈴木)維新は大阪で何かやる場合、いままでは過半数がなかったから、公明党にいろいろと協力をお願いしていたわけです。
飯田)都構想などはまさにそうでしたよね。
鈴木)その代わり、公明党の現職国会議員がいるところには、維新は候補を立てない。つまりバーターですよね。でも、今後の大阪市議会では維新の単独で何でもやれるのだから、もう公明党に気を遣う必要がないのです。
飯田)実際に維新の幹部も「白紙、リセットだ」とおっしゃっていますね。
鈴木)公明党の現職のところにも「次の選挙では候補を立てますよ」と匂わせています。これは公明党にとっては脅威なのです。維新は強いから。
飯田)関西は公明党にとっても大事なところです。
鈴木)公明党にとっても牙城であり、厳しい状況になっています。そのなかで「解散をやろう」と考えますか?
飯田)そうですよね。
鈴木)公明党としては「ちょっと待って、いまではないでしょう」と思うだろうし、立て直す時間も欲しい。いま岸田さんが「解散する」と言ったら「ふざけるな」という話になると思います。やはり公明党の支えがないと、自民党も「50人落選する」などという見方もあるぐらいです。
飯田)特に小選挙区だと、1~2万票が乗る。先ほどの5000票差がひっくり返る話とは逆で、大きいですよね。
鈴木)そんなところに勢いのある維新が出てきたらどうなるか。そういう意味でも、いまは解散する環境にはないと思います。
次期総裁選を考えると解散は秋くらいか ~6月に解散すると1年以上空いてしまう
鈴木)もう1つ、来年(2024年)には総裁選があるでしょう。
飯田)自民党の。
鈴木)そこで再選したければ、喫緊の総選挙で勝って「岸田さんでいいね」という流れをつくらないといけない。それにはまだ早すぎるのです。
飯田)あと1年以上空いてしまう。
鈴木)1年4ヵ月ぐらいあります。来年の総裁選のときに「1年4ヵ月前に私は勝ったので、皆さん信任してください」と言っても、「昔の話ではないか」ということになるのです。
飯田)なるほど。
鈴木)だから、いますぐの解散はないと思います。秋ぐらいではないでしょうか。
飯田)とは言っても、総裁選に近い年明けとなると……。
鈴木)それはダメです。総裁選が近いと、翌年の選挙のことを考えたら「岸田さんの顔でいいのか」という話になってくるので。しかも増税論議もありますから。
飯田)そうですよね。来年1月の通常国会の時期になると。
鈴木)だから秋ぐらいかなと思います。そういう意味では、サミットが終わったら、岸田さんはいつでも解散できるカードを持ったという状況です。やるかどうかについては、私の取材では「いますぐ」という見方には懐疑的な感じがあります。
飯田)もし秋に行われると考えると、その前に内閣改造と党役員人事があるかも知れない。
鈴木)やるでしょうね。(任期は)9月でしょう。
飯田)フレッシュな顔にして。
鈴木)だから、いまはなかなか難しい。取材するとそんな感じです。公明党と自民党における、今回の勝ち方の中身の問題です。
飯田)公明党のメッセージがしっかりと伝わるのかどうか。
鈴木)岸田さんもそこは配慮するでしょう。
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