作家で自由民主党・参議院議員の青山繁晴が4月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。停戦が延長されることになったスーダン情勢について解説した。
スーダンから新たに邦人家族5人が退避
外務省は4月27日、戦闘が続くアフリカ北東部スーダンから、新たに退避を希望した邦人ら5人が周辺国のジブチに出国したと発表した。スーダンの首都ハルツーム近郊の空軍基地からカナダ軍の航空機で退避した。スーダンから退避した邦人とその家族は、合わせて65人となった。
飯田)戦闘を続けるスーダン軍と準軍事組織ですが、27日いっぱいまでが期限の停戦を72時間延長することに合意したと、それぞれ発表しました。停戦期間は30日までとなります。ただし、停戦中も首都ハルツームなどでは交戦が続いていたようです。
停戦期間に武器を新たに買い、弾薬を補充する ~「準軍事組織」はワグネルのような民間軍事会社
青山)停戦期間の間に武器を新たに買い、弾薬を補充しているのです。
飯田)ここで言う停戦は。
青山)通常の停戦だと、それをきっかけに「戦争や戦闘自体をやめましょう」となりますが、全然違う話です。「準軍事組織」というのは軍事会社で、ロシアの民間軍事会社である「ワグネル」のアフリカ版と考えた方がいいと思います。
民間軍事会社に武器を売る「死の商人」の存在 ~中東にいる人たち
青山)昔からあるのです。では、そういうところに「誰が武器を売っているのか」と言うと、「死の商人」という言葉がありますけれど、私の知り合いのなかにもいます。
飯田)死の商人が。
青山)アブダビやドバイなど、ドーハの辺りにいる人たちです。
飯田)中東ですね。
青山)ありのままに言うと、私は武器のカタログを見せられたのです。「見たい」と言ったわけではありませんが、中東ですから、夕食を食べながらオレンジジュースを飲んで、そういう話をするのです。
飯田)お酒ではなく。
対立するアフリカの部族などに武器を売る ~弱い方に武器を無償で与える死の商人のビジネス方法
青山)それを見るとカタログのいちばん上に、アメリカのF16にそっくりな戦闘機が載っていたのです。私が「このF16はどこから持ってきたのですか?」と聞くと、「これは偽物です」と言うのですよ。
飯田)偽物があるのですか。
青山)「売れたのか」と聞いたら「シリアに売れた」と。それで「どうなったのか」と聞いたら、「落ちた」と言っていました。
飯田)落ちた? そんなものを平気で売るのですね。
青山)酷い話ですが、スーダンも含めて、アフリカは部族対立が激しいではないですか。そのため、死の商人は弱い方に武器をタダであげるのです。
飯田)タダで、ですか?
青山)これも彼らから聞いた話ですけれど、武器を貰えば強くなるではないですか。すると、今度はいままで勝っていた政府軍が「武器が欲しい」と言い出す。政府にはお金があるので、高く売れますよね。
飯田)そうですね。
青山)こうして値段を順繰りに釣り上げていき、どんどん儲かるようにするのです。今回は部族紛争とは違いますが、そういう背景があります。「停戦」と言えば、日本人の9割9分の人は本当に“Cease fire(停戦)”だと思うでしょう。
飯田)「これから平和につながっていくのだ」と。
壊れやすい武器を売って新品を買わせる ~戦闘は簡単には終わらない
青山)弾薬はすぐなくなるし、銃も撃っているとすぐに壊れます。だいたい長持ちする武器は売っていませんから。長持ちすれば売れないので。
飯田)次から次へと新品を売っていくためには、壊れなければいけない。
青山)そういう大きな背景があるので、今回も簡単に終わるわけがないのです。ワグネルが有名になりすぎて、ここで言う「準軍事組織」にワグネルが関わっているという情報もあります。戦争がますますビジネス化していくと、アフリカの一般の方々が犠牲になっていくわけです。犠牲になった人数は報道で出ているよりも多いと思います。
ウクライナ戦争の影響で国連の専門機関が世界の紛争地域で支給していた小麦が支給できなくなった ~戦闘の陰で飢えて亡くなっている人も
飯田)そもそもスーダンのここ最近の流れを見ると、小麦の値段が高騰し、独裁的な軍事政権が倒されるような形で、民主化プロセスに移行している最中に、いまの紛争が起きた。一方では、ロシアによるウクライナ侵攻で小麦がなくなったことが報じられていますが、その辺りは関係があるのでしょうか?
青山)関係はありますが、やはり次元の違う話だと思います。ウクライナの穀物は支援食料のもとになっていたのです。
飯田)国連などで、ですか?
青山)スーダンのようなところも含めた世界の紛争地域で、国連の専門機関が支給していた穀物が足りなくなったり、異常に値段が高くなってしまった。国連も予算に限りがありますから、支給できなくなっていて、戦闘の陰で飢えて亡くなっている人も出ているのです。それは報道されませんが。
飯田)そうなのですね。
青山)ウクライナ戦争の余波がこんなところにも出ています。ロシアによる侵略はそんなことまで引き起こしているわけです。
食料安全保障的なこともG7の議題にするべき
飯田)食料安全保障なども、G7の議題になりそうですか?
青山)しなければいけないですよね。G7は比較的、議題にした話が表に出てくる話し合いです。例えば先日の米韓首脳会談のように、1対1で行う会談だと本当の中身は出てきませんが、G7はテーブルに出して、みんなに見せるように行います。
飯田)G7では。
青山)「死の商人」という言葉をあえて使いましたけれど、武器ビジネスの横行、あるいはウクライナ戦争の影響で食料支援が細っている限りは、日本も含めて食料を増産し、それを支援に充てなければいけません。そのためにG7が行われるのですから。
広島開催のG7サミットだからと「核廃絶」だけを言えばいいわけではない
飯田)G7サミットについてですが、ロシアが核に手をかけようとしている一方で、今回のG7は広島で開催されます。岸田さんは広島選出の国会議員であり、「核廃絶」にも踏み込むのかどうかと言われています。タイミングとしてはいかがでしょうか?
青山)私もそこは懸念しています。核廃絶を目指すことは断固、正しいです。ただ、いま核を持っている国が仮に核を放棄することになれば、テロリストが喜ぶだけですし、北朝鮮は大喜びですよね。それこそ(核技術への)値段が上がりますから。
飯田)核ビジネスとしての。
青山)その辺りの現実も踏まえないと、実際に人間を助けることにはならないのです。スローガンだけで終わってはいけないと思います。
飯田)スローガンだけで終わっては。
青山)ただ、広島や長崎の無残な現実があります。非戦闘員を溶かしたわけですから、そう考えると、広島開催のG7で「核廃絶」という言葉が出るのは当然だと思います。
「テロリストや北朝鮮のようなテロ国家が喜ぶような形にしてはいけない」ということも同時に盛り込まなければいけない
青山)ただし、「核廃絶」と言っていればいいのではなく、テロリストや北朝鮮のようなテロ国家が喜ぶような形にしてはいけないということも、同時に盛り込まなければいけない。実際には弊害もあるわけですから、広島出身の総理だからといって、きれいごとだけで済ませてはいけません。現実も踏まえたG7のまとめにしていただきたいと思います。
飯田)テーブルに乗せたものが出てくる会合だからこそ、メッセージも明確に出るわけですものね。
青山)そうです。
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