ジャーナリストの須田慎一郎が5月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。アメリカの債務上限問題について解説した。
アメリカの債務上限問題、バイデン大統領と野党側が協議へ
アメリカの債務上限の引き上げをめぐる問題で、5月12日に予定されていたバイデン大統領と野党側の協議が延期され、今週にも実施される予定。双方の協議は難航しており、このまま合意に至らなければ、アメリカ国債が6月1日にもデフォルトに陥る恐れがある。
飯田)デフォルト(債務不履行)になれば大混乱してしまうと、イエレン財務長官などが指摘していますが、どうなるのでしょうか?
須田)デフォルトになってしまうと、銀行は多量の米国債を持っているので、いま話題になっている銀行不安の問題に大きく影響します。満期まで持っていることを前提にした簿価会計なのです。時価では会計しないという状況なのですが、これが時価になってしまうと、預金を返済できないのではないかということで、不安が不安を呼んで預金流出につながってしまうのです。
飯田)預金を返済できないのではないかと。
須田)国債価格が大暴落すると、場合によっては紙屑になる可能性もないわけではないので、銀行の経営不安問題がドミノ倒しのように広がりかねない。それがまず1つのリスクとして指摘されています。
バイデン大統領とマッカーシー下院議長らとの交渉は水面下で継続 ~決裂してはいない
須田)では現実問題としてどうなるのかということですが、12日に予定されていたバイデン大統領とマッカーシー下院議長など議会首脳との会談は、今週に延期になっています。しかし、だからと言って決裂しているわけではなく、水面下では事務方の調整作業や交渉が行われています。
飯田)水面下で。
須田)この週末にも行われていると聞いていますので、交渉は決裂していないのだと思います。
背景にトランプ前大統領に絶対的な忠誠を誓う議員で構成される「フリーダム・コーカス(自由議連)」の存在
須田)ただ、共和党サイドとしては悩ましいところがあって、議会・共和党は必ずしも一枚岩ではないのです。大きく分けると4つのグループに分かれていて、「フリーダム・コーカス(自由議連)」と呼ばれる保守強硬派のグループがあり、ここが頑ななのです。
飯田)フリーダム・コーカス。
須田)気候変動に関する予算の削減や、メディケイド(低所得者向けの公的保険制度)の減額、あるいは教育費の削減などを主張しています。いずれもバイデン政権の目玉政策なので、これに関して「削減しろ」と言われても飲めない相談なのです。
飯田)バイデン氏側としても。
須田)その背景にいるのが誰なのかと言うと、トランプ前大統領です。フリーダム・コーカスというのは、トランプ前大統領に絶対的な忠誠を誓っている議員集団なのです。
CNNに登場して「アメリカ政府はデフォルトするべきだ」と発言するトランプ前大統領
須田)トランプ前大統領は先日、7年ぶりにCNNに登場して、「大統領選挙に不正があった」と未だに言っています。そのなかで、デフォルトの問題についても触れているではないですか。
飯田)そうでしたね。
須田)「アメリカ政府はデフォルトすべきだ」と。当然、2024年の大統領選挙を意識した上での登場です。だからこそ、CNNという天敵の掌の上に乗っかったという状況もある。あのようなメッセージを出した以上、トランプ前大統領の私兵もそのように動くことしかできない状況になっているのだと思います。
フリーダム・コーカスに配慮するマッカーシー下院議長
飯田)マッカーシーさんを下院議長に選出するときも、ギリギリまで反対したのがフリーダム・コーカスでしたよね。
須田)そうなのです。
飯田)マッカーシーさんもバイデンさんに会う前に、共和党内での足元が難しいのですか?
須田)マッカーシーさんもフリーダム・コーカスには非常に配慮しています。
飯田)共和党の総意というよりは、そこへの配慮で強硬策を言わざるを得ない。
とりあえず債務上限を凍結して、デフォルトを避け、時間を稼ぐマッカーシー下院議長ら
飯田)妥結していく道のりは厳しいのですか?
須田)マッカーシー議員の議会スタッフから話を聞いているのは、とりあえずここでは妥結せずに、凍結すると。利払いなどで凍結することはないので、上限の設定を凍結する。それを超える。
飯田)上限の設定を凍結して超える。
須田)アメリカは債務に上限があるという珍しいスタイルを取っています。上限そのものを凍結させるのはイレギュラーなやり方なので、いずれ元に戻らなければなりませんが、その間、少し時間的な猶予をもらう。それが1つの落としどころではないか、という言い方をしています。
飯田)新しい法律を通すことも難しい。だからと言って、このままクラッシュさせるわけにもいかない。時間稼ぎのようなものですか?
須田)時間稼ぎですね。このまま協議しても、フリーダム・コーカスの了解を得るのは難しい相談なので、一旦、上限の設定を凍結させるのが最も現実的な解決方法かなと思います。トランプ前大統領は2024年の大統領選挙を意識しているので、「強硬策だ、バイデン大統領の足元をすくえ」というところで動いています。
バイデン大統領と交渉する前に、共和党内をまとめるために時間が掛かっているマッカーシー下院議長
飯田)共和党内が4つに割れているということですが、フリーダム・コーカスの人たちは仕方がないとしても、残り3つは「凍結で何とかなれば」という感じなのですか?
須田)何とかなればいいですが、その後の議会運営を考えると、共和党は多数派と言ってもギリギリ多数派のようなものではないですか。
飯田)確かに、上下両院ともにそうですよね。
須田)フリーダム・コーカスの協力がないと議会運営がままならないのです。ですので、そこで反発を喰らいたくない。
飯田)しかも下院議長に選出される際、いろいろな約束をして、1人でも反対がいると解任動議のようなものを出せなどと言われますよね。それがいま足枷になっているのですか?
須田)マッカーシー議長が最も配慮しているのは、フリーダム・コーカスです。そこをどのようになだめすかしながら進めていくのか。ですので、バイデン大統領との交渉ではなく、党内交渉なのです。
飯田)バイデンさんと会うのは、むしろセレモニー的なところがあって、実質的には共和党内をまずまとめなくてはならない。それで時間が掛かっているのですね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。