ジャーナリストの佐々木俊尚が5月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。トラス前英首相の台湾訪問について解説した。
イギリスのトラス前首相が台湾訪問
飯田)イギリスのトラス前首相が、5月16日午後に台湾を訪問しました。台湾との連帯をアピールし、中国に対抗する狙いがあるとみられ、各紙が国際面で触れています。
佐々木)イギリスは中国に対して、かなり親和的な政策をずっと取っていたけれど、だいぶ急展開ですね。
飯田)そうですね。
佐々木)特にジョンソン元首相のあと、一瞬だけ首相を務めたトラスさんは、かなり強硬な反中国派です。現首相のスナクさんは親中だと言われていたけれど、「親中だ」と言った瞬間に支持率が落ち、選挙を戦えなくなりそうだったので、慌てて首相選挙の前に反中政策を打ち出すなど、かなり揺れ動いていました。
EUを離脱したことで「自由で開かれたインド太平洋」に寄り、TPPにも加盟したイギリス
佐々木)イギリスは先日、TPPへの加盟が承認されたではないですか。ボリス・ジョンソン政権のときにEUを脱退しましたが、日本から見ると「イギリスはEUからいなくなったのか」など、「遠い国で何かやっているな」というくらいにしか思っていませんでした。
飯田)EU離脱に際して。
佐々木)それが回り回って、EU離脱によりイギリスが孤立したことで、急に自由で開かれたインド太平洋戦略の方に寄ってきた。
飯田)空母エリザベスを寄こしたり。
佐々木)TPPに寄ってきたことも含め、イギリスのEU離脱は「日本にとってよかったのか」というような不思議な感じになっていますよね。
イギリスのEU離脱とウクライナ侵攻がきっかけで全世界が東アジアの危機的な状況に注目 ~日本にとっては不幸中の幸い
佐々木)EUからいなくなることで、イギリスがインド太平洋に近付いてきている。ある種の新しいパワーバランスができ上がってきたのかも知れません。
飯田)この地域に目を向けると、経済的な部分だけではないところで中国の存在が見えてきます。
佐々木)そこにウクライナ侵攻が起きて、「ロシア・中国連合が脅威だ」ということがヨーロッパでようやく認識されるようになってきた。ウクライナ侵攻は大変な話ですし、イギリスもEUから離脱していろいろと苦しい目に遭ったと思います。
飯田)苦しい目に。
佐々木)その2つの出来事がきっかけで、東アジアの危機的状況が全世界的に注目されるようになったのは、日本にとっては不幸中の幸いとしか言いようがないですよね。
米バイデン大統領は来日するのか
飯田)そして、このタイミングで日本が議長国を務めるサミットが開催されます。
佐々木)バイデン大統領が来るのかどうか。
飯田)一応、来るという話になり、18日にも来日すると言われていますが。
佐々木)例の債務上限問題でアメリカ国内が大混乱しているので、収拾がつかないと第2の金融危機が勃発する可能性があり、バイデン大統領は来日しないかも知れないという報道もあります。
飯田)しかし、ホワイトハウスが打ち消しに入りました。
ウクライナ問題でロシアに対してどう対抗軸をつくるのか ~重要な局面のなかで開催されるG7広島サミット
佐々木)今回のG7はウクライナとロシアの問題があり、どうやってロシアへの対抗軸をつくっていくのかという、非常に重要な局面での開催です。イギリスも含めて、どういう議論があるのか注目されるところです。
飯田)中国に対してもウクライナの文脈のなかから、「同じことをしたら大変なことになる」という状況を見せなければいけない。
佐々木)台湾有事に対して、G7各国はどのぐらい協力してくれるのか。例えばイタリアはG7で唯一、「一帯一路」計画に参加しています。イタリアはどうするのかという問題もあります。
飯田)一帯一路と少し距離を置くような動きを見せているという報道もありますが。
「G7対ロシア」を見守るアフリカや中東、南アメリカなどのグローバルサウスの国々 ~海外からの期待値の高い岸田総理
佐々木)「世界中がロシアに対して制裁している」とみんな思っているけれど、実際のところはG7、いわゆる西側諸国だけです。
飯田)実際は。
佐々木)グローバルサウスと言われるアフリカや中東、南アメリカなどは、ロシアと距離を置いているわけでもなく、どちらかと言うと「G7対ロシア」を見守っている感じもあります。そこでG7の団結をきちんと示すことが重要だと思います。議長国のリーダーとして、岸田総理への期待感は高いと思います。
飯田)国内よりも、むしろ海外からの期待が高いという話があります。
佐々木)結果的には、やはり岸田さんは外交に強かった。最初は「検討使」などと揶揄され、何もしていないと言われましたが、ウクライナ訪問も含めてやることはきちんとやっているので、支持率も上がってきている。意外と安倍さん並みの安定した長期政権になるのではないか、という話もあります。
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