代表に選ばれずも……トライ王・尾崎晟也が追い求める「次の高み」と「その理由」

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は2年目のシーズンを終えたラグビーリーグワンで「最多トライゲッター」のタイトルを獲得した東京サントリーサンゴリアス、尾崎晟也選手にまつわるエピソードを紹介する。

代表に選ばれずも……トライ王・尾崎晟也が追い求める「次の高み」と「その理由」

【ラグビー リーグワン2022-2023アワード】最多トライゲッターを受賞した東京SG・尾崎晟也=2023年5月22日 東京都港区 写真提供:産経新聞社

2年目のラグビーリーグワンでトライ王=「最多トライゲッター」のタイトルに輝いたのは、18トライを決めた東京サントリーサンゴリアスのウイング、尾崎晟也だ。

ちなみに、リーグワン初年度に尾崎が決めたのは4トライ。4倍以上のトライ増の背景にあったものは何か? 今季、何度となく話を聞かせてもらったなかで尾崎が繰り返し語っていたのは【身体強化】【ワークレイト】【コミュニケーション】の3つだ。

まずは【身体強化】。故障しがちだった足首をむしろ武器にすること。そして、チームメイトで日本代表でもある松島幸太朗ら、俊足ランナーの走りを研究して自身の走り方改革を実行したという。

「プレシーズンから、自分のフィジカルで伸ばさなきゃいけない部分を意識的に鍛えました。とくに地面を強く蹴るための足首の使い方の部分。もともと足首の怪我が多いことが悩みだったので、その改善にもつながったと思います。また、以前までは腿(もも)に頼った走りをしていたのを、しっかりお尻を使った走り方ができるように。幸太朗さんのように速い選手ほどしっかりお尻を使って走っていますから」

この身体強化によって、シーズン終盤になってもスピードが落ちにくくなったという尾崎。さらに、故障しにくい体を手にしたことで、リーグ戦16試合とプレーオフ2試合の計18試合で出場時間がトータル1400分に到達し、今季リーグワン全体での出場時間1位を記録した。試合に出続けることができたことでもトライが増えた、と言える。

「足首の不安が消え、シーズン18試合すべてに出場することができたのかなと。毎試合ベストなコンディションに持っていくことを意識しましたし、多くの出場時間につながったのは嬉しいですね」

そして2つめのこだわり、【ワークレイト(運動量)】。これまで以上にチームのために走り続けることを意識したシーズンだった。

「無駄走り、じゃないですけど、走らないことにはチャンスは生まれないですし、愚直に走り続けたことでトライも増えたと自分では思っています。重視したのは味方へのサポートラインのところ。たとえボールをもらえる可能性が低くても、そこに対して走る。いつボールが来てもいいような準備を毎回の練習で繰り返しました」

また、ボールをどのようにもらうか、の部分でも試行錯誤を続けたという。

「サイズの大きな外国人選手や足の速い選手はたくさんいるなか、サイズも決して大きくない(※174cm)自分が違いを生み出すとなると、ボールをもらった瞬間にはトップスピードで相手を抜きさるだけ、という状況にいかに持っていくか。この点はすごく考えましたし、工夫した部分です。練習で徹底的に意識したことで、試合のなかでもだんだんできるようになりましたね」

そして、いかにボールをもらうか、そこで重要になるのが【コミュニケーション】だった。

「自分の欲しいタイミングはどこか。細かいコミュニケーションの部分でより一層磨きをかけたシーズンでした。また、ウイングという最もスペースが見えるポジションにいるので、チームがいま、どういう状態にあるのかを内側の選手たちに伝えることも重要な役割。それがうまくいったときにトライが生まれていると思います」

このように、【身体強化】【ワークレイト】【コミュニケーション】の向上によって積み重ねた18トライ。そのなかで象徴的なトライとして挙げてくれたのは、ハットトリックを決めた2月5日の東芝ブレイブルーパス東京戦の1本目だった。

「(松島)幸太朗さんからのパスの受け方、周りを生かしながらのフェイント、最後まで走り切ってのトライ……と一連の動きがよかったんじゃないかと思います」

5月24日、9月開幕のラグビーW杯へ向けた日本代表36人と同候補10人が発表された。だが、そのなかにトライ王・尾崎の名前はなかった。目標と掲げていたW杯は遠ざかったかも知れないが、それでも尾崎は立ち止まらない。

原動力の1つは、自分自身の活躍によって合併によって名称が変わった母校「伏見工業ラグビー部」の名前が世に出るからだ。

「伏見工業でやってきたことは自分の誇り。その名前が今は消えてしまったなかで、自分が活躍すれば『伏見工業出身』と出ますし、そういう思いでやっている部分もあります。僕がキャプテンを務めた代は京都大会決勝にも進めず、19年ぶりに京都府ベスト4という残念な結果に終わりましたが、それでも『ラグビーを楽しむ』という原点を教えてくれたのが伏見工業です。どんな状況でもラグビーを楽しむことは忘れないでいたいですね」

その『ラグビーを楽しむ』姿勢とともに、目指すのは今季成長を遂げた部分をさらに進化させ、来季もトライ王になることだ。

「毎試合毎試合トライが取れるわけではないですけど、いかに確率をあげるか、という部分では、愚直に走り続けること。ワークレートを重視して味方のサポートラインに入ること。その回数をどんどん増やしていくことがトライにつながると思います。このサイズでもトライ王になれるんだ、ということを来季も証明したいです」

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