「北朝鮮との直接対話」となると出てくる「いろいろな人」とは距離を取るべき 有本香が指摘

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ジャーナリストの有本香が5月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮による日本人拉致問題について解説した。

「北朝鮮との直接対話」となると出てくる「いろいろな人」とは距離を取るべき 有本香が指摘

口径600ミリの超大型放射砲の「贈呈式」で演説する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(朝鮮中央通信=共同) 撮影: 2022年12月31日、平壌

北朝鮮の外務次官、「朝日両国が会えない理由はない」と表明

朝鮮中央通信によると、北朝鮮のパク・サンギル外務次官は5月29日、岸田総理大臣が日朝首脳会談実現のために高官協議を行いたいと述べたことを受け、「日本が新たな決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が会えない理由はない」と表明した。

飯田)一方で、人工衛星と称する弾道ミサイルの発射を予告しています。

有本)弾道ミサイル、一説には「軍事偵察衛星」と言っていますね。

日朝首脳会談を条件を付けずに開催 ~踏み込んだ発言の岸田総理

有本)総理は日朝首脳会談について「条件を付けずに」と発言し、問題に少し踏み込んだと言われています。確か菅前総理も、「条件を付けずに」と同じようなことをおっしゃっていたと思います。そういう流れなのでしょう。

北朝鮮に対する人道支援まで含めて、「あらゆるチャンネルで救出を探って欲しい」と言う方向に舵を切らざるを得ない家族会

有本)もう1つ考えなければならないのは、拉致問題の国民集会がありましたよね。そのなかで、いまの家族会の方々が「北朝鮮に対する人道支援も含め、あらゆるチャンネルで救出を探って欲しい」と言っています。いままでは、「北朝鮮に対して妥協してはいけない」と言い続けていたのです。

飯田)そうですね。

有本)家族が帰って来ないなかで「日本政府よ、毅然としてくれ」と言い続けられたご家族。それも立派なのですが、ここへ来て「人道支援も含める」という方向へ舵を切らざるを得ない状況です。つまり、どうにもこうにも事態が動かないわけですよね。

「北朝鮮との直接対話」となると「いろいろな人」が出てくる ~上手く距離を取りながら独自に直接対話する形をつくるべき

有本)岸田総理や総理の周辺も、何とか北朝鮮と直接対話を行い、事態を打開したいという思いがあることは確かです。しかし、私が取材した範囲では「北朝鮮との直接対話」となると、いろいろな人が出てくるのです。

飯田)なるほど。

有本)官邸の近くでも、いろいろと出てくる人がいます。はっきり言って邪魔になりかねない。外務省ではもう話にならないのです。

飯田)外務省では。

有本)周りにいろいろな人が出てくるでしょうけれども、上手く距離を取りながら、独自に直接対話する形をつくるべきです。できるだけ早い方がいいでしょう。

米朝首脳会談でトランプ前大統領が拉致問題について強く提起したが進まず ~トップとの直接交渉以外に事態は動かない

飯田)ここまでいろいろな模索があり、もちろん外交の正規チャンネルもあります。ただ、それでは最高指導者まで本当に伝わるかどうかわからない。情報機関の部分、「カウンターパートで進めた方がいい」などの模索もありました。

有本)ありましたね。以前行われた米朝首脳会談でも、拉致問題について強く提起されていました。

飯田)トランプさんが。

有本)しかし、そこから先に進むことができなかった。こうなれば、日本の首脳が直接乗り込むなりという手段が必要です。

飯田)共産・権威主義の国家は中国などとも似ていますが、外務大臣とされる人には……。

有本)「権限があるのか」ということです。中国で拘束されている日本人の救出についてもそうですよね。やはりトップと意思疎通ができないと、おそらく救出されません。

飯田)日本では「大臣」と翻訳するけれども、彼らは行政を司る人間であって、党の部分では動けない。

有本)実際の意思決定はほとんどせず、実務を行っているのでしょう。だから直接対話が絶対に必要だと思います。それ以外に事態を動かす方法はありません。

日本国内の過去の調査結果などを少しずつ公表するべき ~国民への注意喚起にもなり、北朝鮮へは「これだけ知っている」と示すことになる

飯田)安保理決議などもあって、当然ながら制裁も掛かっていますが、実効性は……。

有本)実効性は確かに疑問で、いろいろな抜け穴があります。しかし、日本側が制裁を緩めることよりも、揺さぶりをかけるという意味では、日本国内での過去の調査結果など、いろいろなものを少しずつ公表すべきではないかと思います。

飯田)過去の調査結果などを。

有本)わかっていることはたくさんあるはずです。例えば横田めぐみさんの拉致に関しても、「特定失踪者問題調査会」の荒木さんが本を書いていますが、これまで伝えられてきた拉致の様子とは違う情報がたくさんあるのです。

飯田)伝えられてきたものと違う情報が。

有本)「声を聞いた」など、いろいろな証言者もいます。実際にめぐみさんがいなくなった直後、管轄の警察署の署長は元公安関係を担当していた人でもあるので、「外国勢力によるものではないか」という予想を最初に立てたそうです。

飯田)そうなのですね。

有本)捜査体制も敷いたと言われています。でなければ、中学生の女の子が単に行方不明になっただけでは考えられないような捜査体制だった。そういうことも含めて、当時の情報や日本国内にいるであろう協力者……もう亡くなっている可能性もありますが、そういう人たちに関する情報を国民に公開していくべきではないでしょうか。

飯田)資料は膨大に残っているはずです。

有本)国民に対しての注意喚起になりますし、一方で北に対しても「これだけのことがわかっているのだ」と示すことにもなります。

飯田)「俺たちは情報を掴んでいるのだぞ」と。

「北朝鮮との直接対話」となると出てくる「いろいろな人」とは距離を取るべき 有本香が指摘

「非常設衛星発射準備委員会」を現地指導する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(右)=2023年5月16日(朝鮮中央通信=共同)

その上で首脳同士の直接対話を行う ~拉致問題が風化することを待っている北朝鮮

有本)「世論をもう1回喚起するぞ」と示す。北朝鮮は日本の世論を非常に恐れていると言われますから、合わせ技で動いていき、その上で直接対話するべきです。

飯田)確かに、拉致から帰国した方も当初は一時帰国でした。それに対して、世論が「なぜもう1回戻すのだ」と声を上げた。

有本)「なぜ返すのだ」とね。

飯田)彼らは世論の威力というものを……。

有本)知っていますから。世論がこの問題を忘れ、風化していく。あるいはご家族が高齢化し、亡くなっていくのを待っていると言われています。

「条件なしで首脳会談を行う」という岸田総理の意思は強い

飯田)総理の「日朝で条件なしで会う」という発言を考えれば、意思は相当強いということですね。

有本)向こうもそれに対して、一応は応えていますからね。答えはこちらとして納得できるものではないけれど。つまり「日本側が一方的に関係を悪化させた」などと言ってはいますが、向こう側もどうやら会う意思があるようですから。

飯田)G7広島サミットにゼレンスキー大統領が参加したり、あるいは各国首脳が原爆資料館に行き、献花しました。その辺りの外交に対する岸田さんの思いを見ていたのでしょうか?

有本)見ていたでしょうね。

米中対立が厳しくなれば日本からの援助もなくなる可能性 ~「いま対話しておかなければならない」という北朝鮮の考えも

有本)アメリカも本気でいま中国と対峙しているではないですか。世界の潮流の変化を北朝鮮も見ていると思います。もし、このままアメリカないし西側が中国に厳しく対峙する体制が固まってくると、彼らが西側、とりわけ日本から得ようとしていたいろいろな援助も絵に描いた餅になる。その辺りは読んでいるでしょうね。

飯田)なるほど。

有本)だから早めに対話する方がいいという考え方もあります。

飯田)「いまのうちに対話しておかないと」という認識は、向こうにとっても同じ。

有本)向こうにもあると思います。もう1つはアメリカ大統領選があるから、またさらに体制が変わると、アメリカが北朝鮮に対してもっと強硬になる可能性もありますよね。

飯田)そうですね。

有本)ですから北朝鮮も「ここで日本と対話しておくか」と思ったのかも知れません。対話したからといって簡単に要求が通るわけではありませんが、向こうの出方を見るという意味でも、直接対話にはそれなりに意味があると思います。

北朝鮮と言うといろいろな人が出てくる ~そことは距離を置いて独自に進めるべき

有本)総理の周辺や総理官邸もやる気があるのです。やる気なのですが、北朝鮮と言うと、やおらいろいろな人が出てくる。ご本人たちはよかれと思っているのでしょうが、むしろ、それが邪魔になる可能性が高い。周りのものは全部距離を置いて、独自で進めるべきでしょうね。

飯田)確かに、タイミング的に米中は新冷戦と言われていますが、これで陣営が固まってしまったら対話どころではなくなる可能性もある。

有本)もう動かないですからね。いまのタイミングしかないのかも知れません。

飯田)あとは本当に邪魔なく動かせるかどうか。拉致されていた5人が帰ってきたときも、「約束しているのだから返すべきではないか」と言った方もいました。

有本)「返せ」などと言う人がいるし、また絶対にそういう意見が出てくるのですよ。

飯田)当時も官邸で激論があり、中山恭子さんや安倍晋三さんが体を張って頑張った。

「拉致問題解決には人道支援しなければならない」という勢力も

有本)人道支援云々について、拉致被害者のご家族もいろいろなことを考えて言及するに至っていますけれど、今度はそれに前のめりになる勢力も出てきますからね。

飯田)なるほど。

有本)「人道支援ありきだろう」というような。

飯田)「拉致問題解決のためには、人道支援を行わなければならないだろう」という人たち。

有本)「対話する」と言うと、すぐさま向こうに何かをあげたくなる人がいるわけですよ。「とりあえず話をしよう」と言っているだけなのですが。

飯田)こちらとしては、それをカードとして使うべきなのに、安売りしてしまう。

有本)そうです。

それによって不利益を被る人がいても、拉致問題の情報は公開するべき

有本)日本国内で持っている、拉致が行われたときのさまざまな情報があり、それを公開すべきです。不利益を被る人間がいるかも知れないけれど、仕方がありません。

飯田)それはある意味……。

有本)断罪されてしかるべきですよね。

飯田)完全な人権侵害であり犯罪行為だから、それに加担したのなら。

有本)普通の犯罪ではなく、主権の侵害ですからね。それに加担した人たちは、どういう立場で加担したかにもよりますけれど、そろそろこの真実を国民に明らかにするべきですよ。そして世論をもう1回喚起するべきです。

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