北朝鮮の発表通り「人工衛星発射」の可能性も 狙いは米軍拠点と空母打撃群の位置把握か

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笹川平和財団の上席フェロー・小原凡司氏が5月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮による人工衛星の発射について解説した。

北朝鮮の発表通り「人工衛星発射」の可能性も 狙いは米軍拠点と空母打撃群の位置把握か

新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17」の発射実験を視察する金正恩朝鮮労働党総書記(手前)=2022年3月24日、平壌(朝鮮中央通信=共同) 写真提供:共同通信社

北朝鮮が人工衛星の発射を通報

政府は5月29日、北朝鮮から「5月31日午前0時~6月11日午前0時に人工衛星を発射する」と通告があったと発表した。政府は弾道ミサイルと見ている。通告によるとミサイルは北朝鮮から南側に向けて発射されるとみられ、南西諸島など日本の上空を通過する可能性がある。浜田防衛大臣はミサイルが日本の領域に落下した場合に迎撃できるよう、自衛隊に破壊措置命令を出した。これに関して、岸田総理大臣は「重要な問題だ」と強調した。

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岸田総理)衛星と称したとしても、弾道ミサイル技術を用いた発射。これは安保理決議違反であり、国民の安全に関わる重大な問題である。引き続き情報収集、警戒監視に全力を挙げるとともに、緊密な連携を図っていきたい。

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「軍事偵察衛星1号機が6月に発射される」と朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長が発表

飯田)北朝鮮の朝鮮中央通信は30日、李炳哲(リ・ビョンチョル)朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長が、29日に軍事偵察衛星1号機が「6月に発射される」と表明したと伝えています。今回発射されたのはどういうものですか?

発表通り軍事偵察衛星の可能性も ~米軍の拠点と空母打撃群の位置を狙うため

小原)日本政府は、これまでのように「人工衛星という口実を使って弾道ミサイルを発射するのではないか」と見ていますが、北朝鮮は2022年12月に、金正恩氏自身が「極力早い期間に軍事偵察衛星を打ち上げる」ということを言っています。そのため、今回は衛星である可能性もあると思います。

飯田)衛星だとして、どんなものを見る狙いがあるのでしょうか?

小原)北朝鮮も最近は人工衛星という口実を使わず、ミサイルを次々と撃っていますから、その能力はあります。ただ、ミサイルを持っていても「どこに撃つか」という目標がわからなければ撃てないわけです。大陸間弾道ミサイルのような大量破壊兵器で都市を狙うとなると、都市は動けませんから、それほど詳しい情報はいりませんが。

飯田)都市を狙う場合は。

小原)しかし、動いている船や空軍基地などを狙う場合は、空軍基地に航空機がきちんといるのか、船が予定通り動いているのかなどの情報を捉えられないと、何もないところにミサイルを撃つことになります。ですので、情報を取らなければなりません。

飯田)日本や太平洋のアメリカ軍の拠点などに向けて撃ってくることになりますか?

小原)アメリカ軍の拠点と、もう1つ北朝鮮が「狙っている」と主張したいのは、アメリカの空母打撃群だと思います。

ロシアが弾薬を北朝鮮から提供してもらう見返りに衛星技術を与えている可能性も

ジャーナリスト・有本香)北朝鮮の軍事偵察衛星は、どのぐらいの技術レベルがあるとお考えでしょうか?

小原)技術レベルは2022年に打ち上げたミサイルで、これが偵察衛星に使うカメラだというような情報を北朝鮮が出したのですが、解像度がものすごく悪いのです。あれでは使えないというのが一般的な見方です。

飯田)カメラの精度が悪い。

小原)1つ心配なのは、北朝鮮はロシアから弾道ミサイル技術を得ていますが、ロシアはいま弾薬などが足りずに困っているので、北朝鮮にもそれを提供するよう求めていると思います。

有本)そう報じられていますね。

小原)これは根拠がない話ですが、その見返りとして衛星技術などを与えている可能性があるのではないかと思います。2022年に金正恩氏が「極力早く打ち上げる」と言った理由は、「もう目途が立ったから」という可能性もあります。昨年からいままでの間に何かが変わったのでしょう。

中国と情報共有するほど関係性の深くない北朝鮮 ~独自の情報が必要

飯田)北朝鮮は、そもそも中国とは「血の友誼」の関係性だと言われます。例えばアメリカの空母打撃群の情報などを、中国はおそらく持っていると言われますが、情報共有はされていないのですか?

小原)情報共有と言っても、ポジションを教えるだけならば、そういうことをやると思いますが、リアルタイムでの情報共有はないと思います。

飯田)やはり北朝鮮は独自の情報が欲しい。

小原)中国もそこまで北朝鮮を信用していないと思いますし、リアルタイムでの情報共有はほぼ同盟関係になります。共同作戦を行うのであれば情報共有が必要ですが、いまの中国と北朝鮮はそこまでの関係ではないと思います。

飯田)その辺りは日米の関係性とはまったく違うのですね。

小原)違うと思います。

目標をターゲティングする能力を持っていることをアピールし、「そのステータスを認めた上で対話しろ」と韓国・日本・アメリカに求めている

有本)北側が「技術的に準備できたのではないか」とおっしゃいましたが、それ以外に今回、衛星を事前に告知して打ち上げることの終局的な目的は何なのでしょうか?

小原)ロケットは1段ロケット・2段ロケットなどを切り離すと必ず落ちてくるので、落下が予測される海域については通常、「ここは危険です」と警告を出します。しかし、北朝鮮にはもう1つ、「ミサイルの能力を見せつける」という目的があります。

飯田)ミサイルの能力を見せつける。

小原)周りからは「目標をターゲティングできていない」と言われていますから、「その能力を北朝鮮はきちんと持っている」とアピールする。それによって北朝鮮は戦略核兵器だけでなく、北朝鮮の周辺にある米軍基地や米軍の部隊、あるいは同盟国の部隊等を「いつでも叩ける」というステータスを示す狙いもあると思います。その上でアメリカ、韓国、日本に向けて「そういうステータスを認めた上で対話しろ」と求めているのでしょう。

飯田)今回は南に向かって撃つと言われています。前回もそうでしたけれど、地球の自転を考えたら「南に向かって撃つよりは」と思うのですが、成功・失敗の可能性はどうでしょうか? やはりリスクは上がりますか?

小原)リスクはあると思います。ただ、目的によってどの方向に撃つかは変わってくるので、東や北に撃ったのでは、周回軌道に乗っても欲しい情報が取れないのかも知れません。欲しい情報が取れるような軌道に乗せたいのだと思います。

北朝鮮が暴れることで「自ら国際秩序をつくる」とする中国の長期的な狙いを妨げて欲しくない

有本)北朝鮮がミサイル技術などを上げることは、もちろん我々にとって大きな脅威なのですが、同時に中国やロシアにとっても脅威だと思うのですが。

小原)中国は「自分が撃たれる」とは思っていないでしょう。ただ、北朝鮮が暴れると国際社会の目が集中するので、中国はそれを嫌がっていると思います。「北朝鮮に対して中国は影響力を持っているだろう」と責められるのも嫌がっている。中国にはやりたいことがあり、「それを邪魔するような行動はするな」という思いが北朝鮮に対してあるのでしょう。

飯田)いままで、例えば台湾有事において北朝鮮が陽動的に動き、二正面を強いるような可能性も言われたりしましたが、むしろ「目立つな」ということですか?

小原)いまの段階では、中国はすぐに軍事力を使うというよりも、国際秩序を自らつくるという長期的な投資をしていると思います。

飯田)長期的な投資。

小原)中国は国連や国際社会で、「グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)」や「グローバル発展イニシアチブ(GDI)」などを主導すると主張しています。そこで「軍事力を使う北朝鮮を押さえていないよね?」「北朝鮮を支援していますよね?」と言われると、ステータスが崩れる可能性がある。ですから、北朝鮮がそのような行動をすることは、いまは嫌なのだと思います。

有本)それは、中国も北朝鮮をハンドリングできていないことの表れでもあるのでしょうか?

小原)そうですね。以前の話だと「北朝鮮はズボンを脱いで駄々をこねる子どものようだ」と言う人がいました。なかなか思い通りにはいかないのだと思います。

飯田)なるほど。

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