中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が6月16日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。鉄道車両の防犯カメラ義務化による安全効果について解説した。
鉄道車両の防犯カメラ義務化
鉄道車両で乗客が襲われる事件が相次いだことを受け、国土交通省は6月14日、新幹線全線と利用者数が一定の基準を上回る3大都市圏(東京、大阪、名古屋)を中心とした在来線への防犯カメラ設置を義務付ける方針を固めた。関係者によると9月にも義務化に必要な省令改正を行う見通しで、新たに導入される車両に設置が必要となる。
飯田)小田急線や京王線での事件などを受けて行われるようです。
野村)防犯カメラを設置することで抑止しようという話だと思いますが、どのくらい抑止効果があるのかは考えないといけませんね。
防犯カメラの設置によって「証拠が残る」ことがどれだけの抑止効果になるのか
野村)防犯カメラは証拠が残ります。だから捕まりやすくなるので、悪いことをしにくくなるという意味での予防効果はあるでしょう。しかし、防犯カメラはリアルタイムで見るわけではありませんよね。
飯田)録画しておいて、あとから確認する。
野村)これだけ多くの車両に設置するものをリアルタイムで見るのは、物理的には難しい。そうなると、見られている感覚よりも「証拠が残る」という感覚でしかないので、抑止効果はどうなのか。
飯田)証拠が残ることで、どれだけの抑止効果があるか。
野村)何かが起こったときに、例えばサイレンが鳴るようなシステムがあれば、抑止効果は少し高まるかも知れません。ただ、技術的にそこまでは到達しない可能性があります。
カメラを同時並行的に見ることは難しい
野村)また、防犯カメラを付けたことによって、運賃が上がることが想定されます。
飯田)コストは上乗せになりますものね。
野村)いまのところは各社、運賃はただちには上げないようですが、どこかで上がる可能性はある。自分たちのコスト負担と、安全性が見合っているのかは気になるところです。
飯田)警察関係の方に話を聞くと、昔は忌避されていたけれども、これだけ防犯カメラが受け入れられるようになったので、捜査はしやすくなったそうです。ただ、予防という意味では、本来ならいろいろなところに付いているカメラを同時並行的に見ることができますが、日本だと法律上でもプライバシー上でも難しい。
野村)そうですね。
飯田)中国のように全部を管理するわけにはいかないですからね。
防犯カメラの設置は1つの手段だが、それで安全が確保されるわけではない
野村)やはり過去に起こった事件がどういう原因だったのかを考えてみると、凶器を持ちこむ犯行が多い。それを防げるかどうかがいちばんの問題ではないでしょうか。
飯田)どう凶器の持ち込みを防ぐか。
野村)電車に乗って凶器を振り回されたり、火を付けられたりしてしまってから、その状況が映っていても安全性は確保できません。そういう行為をしようとしている人を、どうやって見つけ出すのか、どうやって捕まえるのかという話が残るわけです。
飯田)どのように見つけて捕まえるのか。
野村)私が危惧するのは、「防犯カメラを設置したので安全性が高まりました」と考え、安心してしまうことです。過信してはいけませんよね。本当の犯罪抑止を考えれば、防犯カメラは1つの手段ではあるけれど、万全ではないので、これで「やりました」という話にはして欲しくないです。
AIカメラなどを使って犯人を特定することはできるのか
飯田)諸外国で行っているところもありますが、持ち込ませないことを突き詰めて考えれば、手荷物検査ですね。
野村)それがいまの日本の鉄道環境でできるのかという問題もありますし、先ほど出てきたプライバシーとの関係を考えてもどうなのか。
飯田)そうですね。
野村)例えばスリの人などは同じ駅を何度も行き来しますが、そういう人をAIカメラなどを使って探知できるのかどうか。まだ技術的にはわかりませんけれど、工夫の余地はあるのかなという気がします。
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