「ワグネルの乱」が起きてもプーチン政権は崩壊しない
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が6月30日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ワグネルの乱によって少なからず混乱したプーチン政権について解説した。
「ワグネルの乱」に思う「物事は希望的観測で言ってはいけない」ということ
飯田)6月23日に、プリゴジン氏率いる「ワグネル」による反乱が起きました。
宮家)一連の動きを見ていて感じることは、「物事は希望的観測で言ってはいけない」ということです。
飯田)物事は希望的観測で言ってはいけない。
宮家)「こうなって欲しい、プーチン大統領も年貢の納めどきだ」など、いろいろな意見があるわけではないですか。そう思いたい気持ちはわかるけれど、歴史に学ぶと「現実は必ずしもそうではない」のです。
独裁者が危機に陥った場合、逆に強くなることもある ~独裁国家は簡単に潰れない
宮家)危機においては、民主主義国家であれば政権は弱体化しますが、独裁国家で独裁者が危機に陥った場合、逆に強くなるときもあるのです。
飯田)独裁国家の場合は。
宮家)独裁国家は簡単には潰れません。なぜかと言うと、政敵を殺してしまえばいいのだから、これほど簡単なことはありません。選挙などを行う必要もない。危機が迫って大変だと思ったら、逆に問題もわかるわけです。
これからロシアでの粛清が始まる
宮家)いまロシアは戦争の最中であり、内輪揉めしても仕方がないので、一応収めたふりをしますが、実はこれから粛清が始まるのです。
飯田)これから粛清が。
宮家)粛清すれば、もちろん弱体化する部分もあることは事実だけれど、短期的には強くなります。それを念頭に入れなくてはいけないと思います。
ロシアの歴史上、ほとんどの反乱軍は失敗している
宮家)ロシアの歴史には、意外と非正規軍のような反乱軍が出てくるのです。ロシア皇帝の時代からコサックが出てきたり、いろいろあります。
飯田)ロシア皇帝の時代から。
宮家)「ニューヨーク・タイムズ」に書いてあったのですが、反乱軍の末路は哀れだと。いままでの反乱軍はほとんど失敗しているわけです。なぜかと言うと独裁国家だから・・・、独裁者の方が強いわけです。
飯田)反乱軍よりも。
宮家)みんな晒し首になっている。反乱軍で成功したのは、最近ではボリシェヴィキくらいでしょう。
飯田)ロシア革命の。
「危機が体制を弱くするとは限らない」という反論にも耳を傾けるべき
宮家)ソ連が崩壊したことは、もう1つの例ではあるけれど、長いロシアの歴史のなかでは必ずしも反乱軍が強いわけではない。両方のことを考えると、我々が「プーチン大統領も年貢の納めどきだ」と……。
飯田)倒れればいいと。
宮家)そう思いたくなる気持ちはわかるけれど、やはり物事を冷静に見ていくと、必ずしも危機が体制を弱くするとは限らないという反論にも耳を傾けるべきだと思います。
飯田)「これを機にウクライナが攻め上がればいい」と思ってしまうのですが。
宮家)逆なのです。混乱しているときに敵を攻めると、敵は一致団結するのです。
飯田)なるほど。
宮家)「混乱している敵を叩いてはいけない」という格言もあるくらいです。危機の段階では両論あり得るということを、我々は忘れてはいけません。
飯田)確かにそうですよね。歴史の教科書で学んだのは、ロシア革命が起こり、それに干渉しようとして日本もシベリア出兵などを行ったけれども、かえって結束してしまった。そして、それはソビエト連邦が成立していく過程だった。
宮家)イラン革命があったときに、サダム・フセインが「これは好機」と思ってイラン・イラク戦争を始めたら、結局はイラン革命が成功してしまった。それがいまでも続いています。このことを忘れてはいけないのです。
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