ジャーナリストの佐々木俊尚が7月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。菅前総理のインド訪問について解説した。
菅前総理がインド訪問、モディ首相と会談へ
自民党の菅義偉前総理大臣がインドでモディ首相との会談などをするため、7月4日午前、羽田空港を出発した。菅氏の訪問団には、日本の経済界から現地企業を含めた54社が参加し、日本の新幹線方式を採用した高速鉄道の建設現場を視察する他、インド経済界との懇談も予定している。
飯田)菅さんはいま、公益財団法人「日印協会」の会長なのですね。
佐々木 )首相だったときも、日米豪印の枠組み「クアッド」の会議でモディ首相と会っています。日本国内の政界の中枢にいる人間としては、インドとのつながりが深いため、インドに派遣されたのでしょう。
飯田)菅さんが。
「法の支配に基づく国際秩序」
佐々木)日米欧の軍事同盟的なものに近付くのか、それとも上海協力機構のような中露の軍事同盟に近付くのか。イデオロギー対立や軍事同盟同士の対立という枠組みのなかで捉えようとすると、インドは「どちらにもつけない」という微妙な立場だと思うのです。
飯田)そうかも知れませんね。
佐々木)ただ、特に岸田さんが総理になってから日本外交が打ち出しているのは、「法の支配に基づく国際秩序」です。イデオロギー対立ではなく、「国際法に基づいた秩序が続くようにしましょう」と。
飯田)法の支配に基づく。
佐々木)法に従うのであれば、中国・ロシアであろうが、アメリカ・西ヨーロッパであろうが、インドであろうがどこでも構わないという打ち出し方をしています。インドとつながるには、その哲学が重要なのではないでしょうか。
独裁国家であろうが、国際法を守ってくれれば仲間として認める ~インドとしても受け入れやすい
飯田)法の支配を認めさえすれば、統治体制は何でも構わないという間口の広さ。
佐々木)「独裁国家であろうが、国際法を守ってくれれば仲間として認める」というような、非常に懐の広い考え方です。
飯田)独裁国家であろうが。
佐々木)なおかつ、それなら他国とも同調しやすい。「日本やアメリカの仲間に入ってください」ではなく、「法の支配に基づいてお互い仲よくしましょう」というところが、インドとしても受け入れやすいのではないかと思います。
欧米型民主主義の価値観を押し付けようとするアメリカに辟易する部分もあるグローバルサウスやアジアの国々 ~価値観を押し付けるのではない形でお互いに協力していくやり方は大事な考え方
飯田)アメリカの民主党などが進めようとすると、例の「民主主義サミット」のように踏み絵を踏ませる形になってしまうから、うまくいかない。
佐々木)アメリカはイラク戦争の時代からそうなのですが、自分たちが「民主主義の擁護者だ」というようなところがある。「欧米型民主主義を世界中に広げるのが我々の役目」というような。
飯田)欧米型民主主義を。
佐々木)さすがに最近はそういうことを言わなくなりましたが、根強い哲学のようなものがあるわけです。それに対して、グローバルサウスをはじめ日本やアジアの国々も辟易している部分があります。
飯田)あなたの価値観を押し付けるなと。
佐々木)これから、特にアメリカや西ヨーロッパが少しずつ国力を低下させていくなかで、価値観を押し付けるのではなく、お互いに協力していくというのは大事な考え方だと思います。
グローバルサウスの国への橋渡しを上手くできるのが日本
飯田)アメリカの民主党系の人は、それをナチュラルに思っているところが……。
佐々木)そういう人がいますよね。
飯田)以前、エマニュエル駐日米大使を取材したことがあるのですが、「グローバルサウスの国はついてこないではないですか」というようなことを言ったら、「何を言っているんだ。民主主義はこんなに素晴らしいのだから、みんなそのよさがわかるはずだ」というようなことをおっしゃっていました。
佐々木)その発想で、日本に対してもLGBT問題を押し付けようとしているところがある。価値観の押し付けはやめて欲しいと思いますね。
飯田)アジアにはアジアの価値観もあるし。日本はうまくやれるかも知れないですね。
佐々木)日本はそこを上手く橋渡しできるいい国だと思います。
飯田)かつて「白黒つけないのはダメだ」と言われていましたが、むしろそれが……。
佐々木)つけない方が、いまの時代に合っているという。
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