「プール熱」はプール以外の場所で感染する
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東京都医師会理事で「ささき眼科」院長の佐々木聡氏が7月10日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。夏に多いとされる「プール熱」について語った。
「咽頭結膜熱(通称・プール熱)」 ~現在はプールではなく、日常生活での飛沫感染と接触感染から罹患する
飯田浩司アナウンサー)夏を迎えましたが、この時期の目の病気について伺います。まず、熱が出たり、目が赤くなる「プール熱」について。プールで感染するイメージがありますが、どういう病気なのでしょうか?
佐々木)「プール熱」は、正確には「咽頭結膜熱(PCF)」と呼ばれる病気です。
飯田)咽頭結膜熱。
佐々木)おっしゃるように、以前はプールの時期に流行ったところから、「プール熱」と呼ばれるようになりました。
飯田)「以前は」とおっしゃいましたが、いまは違うのですか?
佐々木)そうですね。以前は水質管理が十分でなく、プールの水で感染したこともあったようですが、現在は水質管理がしっかりしているので、プールで感染する心配はほとんどなくなりました。
新行市佳アナウンサー)逆に、現在の感染経路は何ですか?
佐々木)飛沫感染と接触感染です。
発熱から喉の痛み、結膜炎と順番に症状が出る
飯田)どのような症状が出るのでしょうか?
佐々木)咽頭結膜熱という名前の通り、咽頭の炎症と結膜炎と発熱です。
飯田)発熱や結膜炎は一気にやってくるのですか?
佐々木)まずは急な発熱で発症することが多いです。それから喉が痛くなり、結膜炎が起きて、目の充血、痛み、かゆみ、目やにと、順番に出てくることが多いです。
「アデノウイルス3型」によって発症するウイルス感染症
飯田)原因は何でしょうか?
佐々木)ウイルスによる感染症です。アデノウイルスのなかでも3型で発症することが多いです。
新行)子どもに多い理由は何ですか?
佐々木)子どもはいろいろな感染症に接して、免疫を獲得していく時期であることと、子ども同士はどうしても直接触り合いますよね。接触する機会が多いのもあると思います。
7月~8月が流行のピーク
飯田)発症するのは夏がメインなのですか?
佐々木)6月ごろから徐々に増加し始め、7~8月がピークで、10月くらいに収まってくるという流行パターンが多いようです。
飯田)まさに学校でプールの授業が行われる時期ですね。
佐々木)そうですね。ただ、温暖化の影響でアデノウイルスも1年中活動するため、夏だけの流行というわけでもありません。
感染した場合、主要症状がなくなってから2日間は登校禁止
飯田)感染した場合、学校へ行ってもいいのですか?
佐々木)これは学校伝染病になりますので、主要症状がなくなってから2日間は登校禁止です。
新行)重症化する心配はないのですか?
佐々木)まれにですが、肺炎を起こすというようなことも言われています。
不用意にいろいろなものを触らない、その手で顔や目に触れない
新行)予防法はどんなことが挙げられますか?
佐々木)不用意にいろいろなものに触らない、特に人のタオルなどに触らない。また、何かを触った手で自分の顔や目に触らないということです。
飯田)守る方としては。
佐々木)うつす側の注意点として、目が充血している、目やにが出ている、喉が痛いなどの症状があって「怪しいな」と思ったときは、人との接触を避けるような行動を取ってください。
対症療法での治療
飯田)ワクチンはあるのでしょうか?
佐々木)残念ながらアデノウイルスに対するワクチンはありません。
飯田)薬で治療するということですか?
佐々木)基本的にはウイルスに効く薬がありませんので、充血したら充血を抑える、目が傷ついたらその傷を治すという、対症療法の積み重ねです。身体がウイルスをやっつけてくれるのを手伝う形になります。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます