ジャーナリストの佐々木俊尚が7月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。7月18日に閉幕したG20財務相・中央銀行総裁会議について解説した。
G20財務相・中央銀行総裁会議が閉幕、共同声明は見送り
インド西部のガンディナガルで開かれた20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は7月18日に閉幕した。ロシアのウクライナ侵略をめぐり、多くの国とロシアの間で歩み寄りは見られず、侵略以降、今回も含め6回連続で共同声明の採択が見送られている。
中露がウクライナ問題に関して同意するわけがない
飯田)一方で、インドが公表した議長総括は世界経済の成長の鈍さを指摘し「なお不均等だ」としています。グローバルサウスの代表格として、各国の債務や気候変動問題などで先進国への不満をにじませています。
佐々木)ロシア・中国と西側のG7諸国が同席するという意味では、いま国連が殆ど機能していないなかで、貴重な場ではあるのだけれど、やはり何も決まらない。「当然、そうなるだろうな」という結果でした。ウクライナ問題に関しては、中国・ロシアが同意するわけがありません。
ポイントは途上国の債務問題 ~ドル建てで債務を持っている場合、スリランカのようにデフォルトする国が出てくる可能性も
佐々木)ポイントは、途上国の債務問題でしょう。いまアメリカがインフレになって利上げしているではないですか。ドル建てで債務を持っている場合、債務負担が非常に重くなるのです。
飯田)そうですよね。ドル高が進むということは、その国の通貨が安くなってしまい、調達が難しくなる。
佐々木)そうなると、スリランカのようにデフォルトする国が出てくる可能性があるので、債務負担については考えなければいけません。
債務整理してデータ化しようとするも中国がうしろ向きでまとまらず
佐々木)ただ、1つの国でいろいろなところに債務があるわけです。アメリカにもあれば中国にもあるし、日本にもある。そのため「債務整理をしましょう」と、まるで多重債務者に対応するような感じで、それぞれの国がどんな債務を持っているかデータ化しようとした。
飯田)債務を整理してデータ化する。
佐々木)どれくらい中国から借りているのか、アメリカから借りているのか確認しようとしたのだけれど、最大の債権国である中国が「嫌だ」という感じなのです。
飯田)スリランカの債務整理に関しては、フランスや日本などは合意して進めようとするのですが、中国がうしろ向きで実施できない。
佐々木)そうなのです。結局、それもうまくまとまらない。中露とその他の国の温度差が明らかになるだけだったかなと思います。
債務問題はグローバルサウスの国々に先進国が手を差し伸べるいいチャンス ~日本やヨーロッパなどが協調して債務問題に取り組む姿勢を見せておくべき
佐々木)一方で債務問題は、いわゆるグローバルサウスと言われるような南半球中心の途上国に対し、北半球の先進国が手を差し伸べるいいチャンスでもあるわけです。ここで中国が合意しなくても、G20の場ではなく、日本やヨーロッパなどが協調して債務問題に取り組む姿勢を見せておくと、よりいい顔ができるのではないかと思います。
日本が「法の支配」を前面に出してまとめる
飯田)しかし先進国、特にアメリカは「民主主義国でなければ貸せない」とか「人権があるから貸せない」などと、厳しすぎるのでそっぽを向かれてしまう。
佐々木)途上国は独裁国が多いので、そこにリベラルデモクラシーを持ってくると難しくなります。だから日本が「法の支配」を前面に出し、「デモクラシーは関係ないですよ」と対応するのがいいのではないかと思います。
飯田)いい単語をひねり出しましたよね。
佐々木)「法の支配」という言葉はいいですよね。
飯田)Rule of Lawだと。
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