カルロス・ゴーン氏のような「再生請負人」には「その先」が見えなかった

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ジャーナリストの佐々木俊尚が7月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏の会見について解説した。

カルロス・ゴーン氏のような「再生請負人」には「その先」が見えなかった

【ゴーン被告再逮捕へ】都内の弁護士事務所を後にするカルロス・ゴーン被告=2019年4月3日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

カルロス・ゴーン氏がオンラインで会見 ~日産などを提訴

飯田)日産自動車の元会長であるカルロス・ゴーン氏が7月18日、オンラインで会見を行いました。日産と複数の同社関係者を相手取り、10億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こしたことを明らかにしています。

佐々木)逮捕状が出て逃げているのに、何を言っているのかという感じがしなくもありませんが、2000年代にこれほどもてはやされた経営者はいなかったでしょう。社長に就任したのは2000年ですよね。

コストカットで利益を上げ「素晴らしい経営者だ」ともてはやされた

佐々木)まさに平成の長い不況の落とし子のような経営者でした。高度経済成長で会社が大きくなり、バブル期を迎え、余計なコストを大量に使いまくっていたのは事実です。

飯田)バブル期に。

佐々木)そこから引き締めに転じ、「グローバリゼーションに対応して筋肉質な会社につくり変えなければいけない」という考え方になったのは、90年代後半からです。2000年に入るころにはそれが定着してきた。

飯田)2000年に入って。

佐々木)人件費をカットして非正規雇用に変え、国内において賃金の高い工場を閉鎖し、海外に工場を移していった。まさにそれを行ったのがカルロス・ゴーン氏で、日産は村山工場という旗艦工場だったところを……。

飯田)武蔵村山市に大きな工場がありました。

佐々木)それを潰して海外に移転させた。確かにコストカットすれば利益が出るのは当たり前の話ですけれど、それでもてはやされ、「素晴らしい経営者だ」と言われ続けた。あの時代はコストカットでもてはやされた、似たような社長がたくさんいました。

不採算部門を切ってスリムにするというファンドの発想 ~社長がやってはいけない

佐々木)いまとなってはコストカットしただけで、そのあとの新商品の開発や、素晴らしいイノベーションは何も生み出していないではないかと思います。

飯田)コストカットはしたけれど。

佐々木)見た目上はコストカットを行い、売り上げを出しているように見えるわけです。当時、「再生請負人」というような表現をされていました。

飯田)ありましたね。

佐々木)あれはある意味、ファンドの発想なのです。要するに不採算部門を切り、スリムにつくり変えることが再生請負だとよく言われていた。2000年代ぐらいの話ですね。確かにいいのだけれど、再生請負の場合、その次が見えてこないのです。

その先が見えない再生請負 ~新規開発にも本腰が入らずネガティブなスパイラルに

飯田)ファンドの場合は、そうやって企業価値を高めた上で、最終的に売り抜けてしまえばいいという発想だから、その先における20年~30年の発想がなかった。

佐々木)そうなのです。それを社長がやってはいけません。「再生請負人」と言いながらファンドと同じことをやって、結局は先が見えていないから、ゴーン時代に「いつリストラされるかわからない」と社員のモチベーションがかなり下がってしまった。

飯田)いつリストラされるかと。

佐々木)そうすると新規開発にも本腰が入りません。予算も十分になく、ネガティブなスパイラルに入り込んでしまった部分があるのではないでしょうか。

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