総理の機能を代替する「役割分担」がない日本
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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が7月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢によって急騰している小麦相場について解説した。
ロシアによるウクライナ穀物の輸出妨害で小麦相場が8%高
飯田)ロシアがウクライナ産穀物の輸出再開を妨害しているため、小麦相場が8%急騰しています。直接日本の調達に影響するものではないかも知れませんが、食料安全保障も考えなくてはいけませんよね。
松井)本当にそうですね。なりふり構わない感じになってきました。
飯田)ロシア側の動きが。ウクライナ産の小麦は中東やアフリカなど、比較的所得の多くない国に回っている傾向があります。日本も食料に関しては、輸入に頼る部分が多い国です。
意義のあった岸田総理の中東歴訪
松井)経済安全保障に関し、食料の部分が日本にどこまで影響があるかは別として、東アジア情勢を考えたときにエネルギーの問題、例えばガソリンの値段を1リットル当たり10円~15円下げることにお金を使うのがいいのかどうか。それとも、いざというときの備蓄や融通体制をつくるのがいいのか。日本としてどうするのか、よく考えなければいけないと思います。
飯田)補助金を出すことに使う方がいいのかどうか。
松井)野党では批判する人もいますが、今回、岸田さんが中東に行かれたことは、とてもよかったと思います。中国も近寄ってきていますから、エネルギー安全保障上、中東とのパイプをつなぎ直すためにも、日本の首相が中東に行くのはとても大事だと思います。
総理が外遊中に国内で災害などが起きた場合は、副総理級の人間が総理の機能を代替する役割分担が必要
松井)日本は天皇制の国だから、あまり比較に意味はないのだけれど、例えばフランスなどは大統領がいて、首相がいるわけです。
飯田)そうですね。
松井)総理の仕事において、外交はとても大事です。日本の総理大臣の仕事をどう分担するか。総理の外遊中に国内で災害が起こったとしても、総理には外交に徹してもらった方がいいのです。その上で被災地に手を差し伸べ、早い段階で特別交付金を出すというような判断を、できるだけ早く行う。
飯田)災害が起きた場合は。
松井)そういう意味では、総理の外遊中は臨時代理を置いているのだから、副総理級の人間が総理の機能を代替するなど、役割分担をしなくてはいけません。
飯田)内政と外交をどう分けていくか。安倍政権の時代は安倍さんが外遊し、何かあったときは菅さんが官房長官として仕切るというような役割分担がありました。もちろん、その下には副長官や副長官補がいたと思いますが。
松井)そうですね。
飯田)そう考えたら、意外とこの国は属人的だったのだなと思います。官邸の機能改革を進めていた松井さんから見ても、この辺りはやはり属人的にならざるを得ないのでしょうか?
松井)日本における副総理は、いても1人であり、形式的ではないですか。麻生さんの場合は少し違ったかも知れませんが。
飯田)実質も伴っていたかも知れない。
松井)総理経験者ですからね。そういう副総理や上級大臣のような人を置いておくべきなのです。他の国は違いますが。
分担体制でチームを組めるようにするべき
松井)日本の場合、内閣府特命担当大臣は何人もいますが、皆さん若いので、各省へ積極的に指示が出せない。なかには甘利明さんなど、指示できる人もいました。茂木敏充さんが経済再生担当大臣だったときも、若干そういう感じでした。
飯田)茂木幹事長が。
松井)制度的に副総理ぐらいの感覚で総理の権能を分担し、チームワークを組む。バラバラに動いてしまうと、逆に混乱して権力争いになってしまうから、チームとして動かせるようにする。安倍政権の前半はそういう感じがあったと思います。安倍、菅、麻生、甘利さんの4人で動かしておられた。
飯田)3A+Sなどと言われましたね。
松井)その方々については、いろいろな評価があると思いますけれど、そういう分担体制でチームを組めるようにしておくべきです。
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