フラットな賃金体系下で、「○○歳になった」理由での大減給はおかしい

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元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が7月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。名古屋自動車学校の元従業員が起こした再雇用格差訴訟について解説した。

フラットな賃金体系下で、「○○歳になった」理由での大減給はおかしい

再雇用基本給訴訟 原告側会見 原告・青山治彦さんが会見=2023年7月20日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

「再雇用格差訴訟」最高裁が差し戻し ~「年収が4割以上低下」するケースも

正社員と再雇用者の基本給格差をめぐり、名古屋自動車学校の元従業員が起こした訴訟で、最高裁は「定年退職時の6割を下回るのは不合理」と判断した高等裁判所の判決を破棄し、審理のやり直しを命じた。原告らは2013年~2014年に定年退職し、嘱託として再雇用された元社員2人。定年時に約16万円~18万円だった基本給は、再雇用後に4割~5割程度、約7万円~8万円に減った。最高裁は判決で、嘱託職員の基本給は「正社員とは異なる性質や支給の目的があるとみるべきだ」と指摘した。

シニア世代が定年前まで年功序列で貰っていた「年功賃金」は若い人たちの視点から見て正当だったのか

飯田)同じ仕事をしているのにここまで減らされてはたまらない、というのが訴訟の趣旨ですが。

松井)私たちの世代は切実ですよね。ただ、この自動車学校の方々は違うかも知れませんが、考えなくてはいけないことがあります。「同一価値労働同一賃金」と言うのなら、シニア世代が定年前まで年功序列で貰っていた給料は、若い人たちの視点から見て、本当に正当だったのかどうかということです。

賃金体系を見直すという前提で、同一労働同一賃金を議論しなければいけない ~現役のときはバブル時代の給料を貰っていて、それを定年後も維持するというのは、少し虫のいい話

松井)「相当な年功賃金だったのではないか」というところは、考えなくてはいけないでしょうね。その上で、日本の賃金は低迷していますから、もちろん生産性アップもしなければいけないけれど、全体的に賃金アップを図るべきです。賃金体系を見直すという前提で、同一労働同一賃金を議論する必要があると思います。

フラットな賃金であるならば、それを何歳になったという理由で大きく減らすのは、おかしい ~人材供給源の1つであるシニア世代を正当に評価するべき

松井)シニア世代の本来の仕事の中身から言うと、現役のときにバブル時代の給料を貰っていて、それを定年後も維持するというのは、少し虫のいい話です。

飯田)それは虫がいいと。

松井)ある程度、きちんとした同じような仕事をそれぞれ行っていて、フラットな賃金であるならば、それを何歳になったからという理由で「ガクッ」と減らすのは、おかしいのではないか。今回の最高裁差し戻しでは、その辺りの微妙な判断があったのだと思います。自動車学校の先生は、職員の方ですか?

飯田)指導員だった方です。

松井)この方々について言うと、比較的フラットな給料であったとしたら、これからの時代、それを年齢差別で大きく下げるというのは見直すべきだと思います。

飯田)フラットな給料であったならば。

松井)女性は人材供給源だとよく言われます。専業主婦だったような人たちがだいぶ参加していますが、その1つはシニア世代です。健康寿命も延びていますし、この方々をしっかりと正当に評価するべきだと思います。

若い教授を解雇して給料の安いシニアの「特任教授」を雇う大学も ~若い人たちの雇用が圧迫されるケースが出てきている

松井)大阪で大学の先生を務めていたある方がおっしゃっていましたが、シニア世代の先生の給料は、若い先生より安いのです。「特任教授」などという肩書きになると、大学は「ガクッ」と安い金額で雇えます。

飯田)教授ではなく。

松井)事情はよく知りませんけれど、ある大学では、若い人たちの雇用義務に縛られるよりも、毎年1年単位で安い給料で雇えるシニア教員を集めているのです。

飯田)どこかを退官されたような方々を。

松井)そして、逆に若い人たちの首を切るようなケースが起こっています。

飯田)若者の雇用が圧迫されるケースが出てきているのですね。

松井)それはやはり変な話ですよね。ある種のダンピング的なことが起こっている。

アメリカのように年齢差別禁止も視野に置きながら進めていかなければならない

松井)雇用体制、賃金体系全体を見直すなかで、日本の場合、アメリカのように年齢差別禁止までは急に進めないかも知れない。でも、そういうことを視野に置きながら考えなければいけないと思います。

飯田)「年功序列」がいままでのキーワードでもあり、若いときに低い賃金で働かされたのは、年齢が上がればそれ以上に貰えるからである。だからシニアの人たちは「貰って当然」となるけれど、もはやそういう時代ではないので、そこを変えなければいけない。

松井)そのカーブを変えていった上で、いままでは年功序列分をずっと維持できないから、ある年代になったら「もう取り戻したでしょう」と、大きく下げていた。しかし、それをもう少しフラットにしたら、ある年齢で大きく下げる必要もなくなってくると思います。

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