河野太郎デジタル担当大臣が7月26日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。マイナンバーカードの現状と今後について訊いた。
マイナンバーをめぐる問題、26日の参議院で閉会中審査
マイナンバーをめぐる相次ぐトラブルを受け、参議院の地方創生・デジタル特別委員会は7月26日、閉会中審査を開く。2024年秋に健康保険証を廃止し、「マイナ保険証」に一本化する政府方針に野党は批判を強め、論戦でも最大の焦点となりそうだ。ここでは、河野太郎デジタル担当大臣にマイナンバーカードについて訊く。
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これまでのマイナンバーの紐付けの仕方をそれぞれの自治体などに調べてもらい、その回答を仕分けしている
飯田)マイナンバーカードについて、他の人と名前が入れ変わってしまったり、別人の口座番号が紐付けられてしまうなど、いろいろなことが言われています。いま、まさに総点検している最中だと思いますが、進み具合はいかがですか?
河野)まず、なぜ間違いが起きているかと言うと、例えば飯田さんのマイナンバーを調べなければいけない場合、健保組合がJ-LISというシステムに検索を掛けます。
飯田)J-LISというシステム。
河野)名前・生年月日・性別・住所で検索を掛け、「4つとも合っている」ということであれば、間違いありません。
飯田)すべて合っていれば。
河野)ところが日本の住所は、例えば「港区赤坂1丁目2番3号」と書いてくれる人はいません。「港区赤坂1の2の3」と書いたり、あるいは「の」の部分をハイフンで書いたり、数字だったり漢字だったりします。ですので、住所で検索を掛けるとはじかれてしまうのです。しかし、名前と生年月日だけで検索を掛けると、同姓同名の人がかなりいらっしゃる。
飯田)いますよね。
河野)いま何を総点検しているかと言うと、「これまでマイナンバーを紐付けするときに、どうやっていましたか?」と。「名前・住所・生年月日・性別を必ず毎回チェックしていた」ということであれば、間違えることはないのです。
飯田)4つすべてチェックしていれば。
河野)ところが、「実は名前と生年月日だけで検索を掛けていた」という場合は間違っている可能性があるので、「個別のデータを全部1回洗い直してください」とお願いする必要がある。それぞれの保険者や自治体に調べてもらい、回答が戻ってきていますので、いま仕分けしているところです。
人間を介さず機械的に紐付けできるようなシステムをつくっていかないといけない
飯田)報道などではマイナンバーカードの登録に関して、「デジタル庁は何をやっているのだ」、「河野大臣は何をやっているのだ」と言われています。しかし、地方自治体の1つひとつの箸の上げ下げまで、デジタル庁が見ることはできないよな、と思ったのですが。
河野)どこかが一元的に国民の皆さんの声を受ける。それがデジタル庁だという気がしていますので、お叱りはデジタル庁にいただいています。
飯田)お叱りも。
河野)いま自治体や保険者に過去を振り返ってもらっています。人間がやることですから、どうしても間違いは0にはならないのですが、丁寧に対応すれば、限りなく0に近付けることはできると思います。なるべく人間を介さず、機械的に紐付けできるようなシステムをつくる必要があると思っています。
「人が人に寄り添う、温もりのある社会」を日本の地域社会のなかでつくる
飯田)マイナンバーのシステムそのものは、ある意味のツールであって、目指す先は「どうやって新しい社会をつくっていくか」ということだと思います。河野さんが先に出されたPHP新書の『日本を前に進める』という本の最後、8章のところは、まさにデジタルの話でした。「温もりを大切にするデジタル化」と書かれていましたが、どういう社会にしたいとお考えでしょうか?
河野)いま、日本は人口が急速に減少し、社会全体の高齢化が進んでいます。いままでと同じことを今後も続けていけるかと言うと、どこかで行き詰まることになります。これからの世の中を考えると、人間がやらなければいけないものは人間がやる。逆に言えば、人間がやらなくてもいいものはAIやロボットなど、コンピューターに任せる。
飯田)人間がやらなくてもいいものは。
河野)それによって人間は、人間がやらなければいけないことに集中する。ゴールは何かと言うと、「人が人に寄り添う、温もりのある社会をいろいろな日本の地域社会のなかでつくっていく」ということになります。
高齢の方や障害を持っている方に質の高い医療を早く受けられるようにするためにも、マイナンバーカードは必要 ~受けている医療や薬の情報が救急先でも共有でき、的確な対応が取れる
河野)そのための1つのツールとして、デジタル化を行っているわけです。例えばご高齢の方、あるいは障害を持っている方が、質の高い医療をなるべく早く受けられるようにしていきたい。
飯田)ご高齢の人や障害を持っている人が。
河野)そういう方にマイナンバーカードを保険証として使っていただくと、いろいろな医療や薬の情報などが共有されます。救急時にマイナンバーカードを見ることで、「この人にはどういう病歴があるのか」を救急先でも知ることができ、的確に対応することができます。
飯田)薬を出したいけれど、こういう病気があり、こういう薬を飲んでいるから一緒に使ってはいけない、というようなことが即座にわかる。
河野)それがマイナンバーカード保険証のメリットですので、ご高齢の方にサービスを積極的に受けられるよう、環境を整備していかなければなりません。
病院や薬局で1回受付を体験すれば「簡単である」ことがわかるはず
河野)だから「こういうメリットがある」と地道にお伝えする。また、マイナンバーカードを持っていらっしゃる方にも、病院や薬局に協力していただき、「マイナンバーカードを持ってきてください」とお願いする。カードリーダーに置き、顔認証を体験していただければ、「これだけでいいんだ」ということがわかると思います。
飯田)こんなに簡単なのだと。
河野)1回試していただければ、「1回やったから大丈夫」と思えるでしょうし、そういうことを地道に進めていくしかないかなと思っています。
震災などでカルテが散逸してもクラウドに置いておけば呼び出すことができる
河野)ただ、なかなかマイナンバーカードを取得しづらいところがあるので、丁寧にご説明していく。また自治体にお願いし、出張申請も含め「どうすれば取得しやすくなるか」を自治体と一緒に考えていくしかないと思っています。
飯田)災害が起こったとき、カルテが散逸してしまう問題が東日本大震災でも言われましたが、クラウドに置いておけば呼び出すことができるわけですよね。
河野)そうです。先日、中東に出張したのですが、例えばUNHCRでは、難民キャンプにいる難民の医療記録をクラウドでシェアできるようにしています。
飯田)データの呼び出しは顔認証なのですか?
河野)いや、スーパーマーケットに行ったときに「目の虹彩をチェックして、その人の口座から金額を引き落とす」という試みを、もう10年ぐらい前からやっていますので、目の虹彩で呼び出しているのかも知れません。
飯田)本人確認のやり方はいろいろあるわけですね。
河野)配給切符を配らなくてもいいのです。配給切符が偽造されたり、盗まれたりすることがないので、必ず本人の分が本人に毎月渡る。それを使って必要な小麦粉や油などを買い、難民キャンプでも生活が成り立つシステムになっていました。
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自分の情報を確認することができる「マイナポータル」
飯田)インタビューの前後でも話す機会があり、結局「この話は名寄せのトラブルではないですか」と。「番号と名前が一致しない状況は年金でもありましたよね」という話の流れで、当時は「ねんきん定期便」を出し、みんなに確認してもらったから「同じことをやったらどうですか?」と聞いたのですよ。
数量政策学者・高橋洋一)ねんきん定期便ですね。
飯田)そうしたら「マイナポータル(ウェブサイト)があるから、いちいち定期便を出さなくても全部見ることができるし、確認できるのです」とおっしゃっていたので、「それをもっと言えばいいではないですか」と言ったのです。
第1次安倍政権時に行った「ねんきん定期便」のシステム ~情報を国民に開示してチェックしてもらう
高橋)ねんきん定期便を行ったのは第1次安倍政権の時代でした。「オレンジレター」を参考に、私があの仕組みをつくったのですよ。
飯田)高橋さんが携わっていたのですね。
高橋)こういう話で重要なのは、政府の持っている情報について、もし不都合があったときは国民に開示し、国民にチェックしてもらうのが大原則なわけです。当時はマイナポータルがなかったから、定期便という形にしました。
飯田)手紙の形で、必ず誕生日の直後ぐらいに来ますよね。
高橋)最初に特別便を出し、それから定期便として出しました。戻ってこないものは、とにかく集中的に調べるというやり方でした。戻ってきたものは大丈夫だから。そうやってフォーカスし、きちんと対応しなければならないのです。
飯田)まず「どこに不具合があるか」を特定するところから始める。
高橋)今回の話で言うと、保険組合が対応しているのだけれど、その保険組合にまたチェックさせるのは大変だから、マイナポータルを使う。マイナンバーカードを持っている人は8割ほどいるはずなので、もし間違っていたら、間違っているかどうか自分でサイトを見て、健康保険組合の番号をチェックできるのですよ。
マイナポータルで自分の情報をチェックし、間違っていたら申告してもらう ~「申告してくれた人に1万ポイント差し上げます」という方法も
高橋)間違っていたら、すぐ申告をお願いする。「申告してくれたら1万ポイント差し上げます」という方法がいちばん簡単です。みんな必死になって調べますよ。
飯田)もし間違いがあれば、ポイントがもらえますものね。
高橋)ヒューマンエラーは意外と少ないのです。宝くじ程度のレベルの話だから、この方法を行ったとしても、掛かる費用は小額で終わってしまいます。
飯田)行動経済学的なアプローチですけれども。
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