評価急上昇の長田智希、バックス最年長の山中亮平 ラグビーW杯代表入りをかけて若手とベテランが切磋琢磨

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、開幕が迫るラグビーW杯フランス大会へ向け、日本代表入りを目指す選手たちにまつわるエピソードを紹介する。

評価急上昇の長田智希、バックス最年長の山中亮平 ラグビーW杯代表入りをかけて若手とベテランが切磋琢磨

【ラグビー リーグワン2022-2023アワード】新人賞とベストフィフティーンに選出され、笑顔でフォトセッションに臨む埼玉の長田智希=2023年5月22日 東京都港区 写真提供:産経新聞社

ラグビーW杯フランス大会開幕まで、あと1ヵ月と少し。日本代表33枠をかけたラストサバイバル、「リポビタンDチャレンジカップ2023」5連戦も、残すところ29日のトンガ戦(大阪・花園ラグビー場)、8月5日のフィジー戦(東京・秩父宮ラグビー場)の2試合を残すのみだ。

ただ、1戦目のオールブラックスXV(フィフティーン)戦(秩父宮ラグビー場)はノートライの完敗。同じくオールブラックスXVと戦った2戦目(熊本・えがお健康スタジアム)は3トライを奪ったものの、27対41でやはり完敗。

札幌ドームで行われた第3戦のサモア戦は大黒柱のリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)が危険なタックルがあったとしてレッドカードでの退場処分に。試合の大半を1人少ない14人で戦う苦しい展開で、22対24と2点差での惜敗。ここまで3連敗と厳しい船出となった。

そんな苦しい展開で俄然、勢いがあるのは若手、および初代表組だ。

前節サモア戦では、ロックのアマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京)が代表初キャップ獲得の試合で見事な先制トライ。また、埼玉パナソニックワイルドナイツの23歳コンビ、フランカーの福井翔大とセンターの長田智希もサモア戦で揃って途中出場を果たし、代表初キャップを記録。とくに、リーグワン新人賞を受賞して勢いに乗る長田は、軽快なステップで単独突破を狙い、試合会場の札幌ドームを大いに沸かせてくれた。

そして迎える29日のトンガ戦。初先発に抜擢されたのは前節で評価を高めた長田。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は試合前のオンライン会見で何度も長田の名前を出し、そのポテンシャルを大いに評価した。

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『長田はオールブラックスXV戦でポテンシャルを見せてくれ、サモア戦ではプレッシャーに対応できるところを示してくれました。スタート(先発)として出るにふさわしいと思っています。次のトンガには元ワラビーズ(オーストラリア代表)や元オールブラックス(ニュージーランド代表)がいる。こういう試合でプレーができることは、長田にとって大きな経験になると思います』

~2023年7月27日、試合前オンライン会見でのジェイミーHCの言葉

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その長田は、初代表が決まった5月末、最終メンバー入りを目指してこんなコメントを語っていた。

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「センターですし、海外の選手たちとのフィジカルバトルで戦えることを見せていくのは大事です。あとは自信を持ってプレーできるか。代表の先輩たちからは、『俺は強いんだ』という自信を感じます。そういったメンタルの部分でもアピールできれば、最終メンバーに近づけるかなと思います」

~2023年5月24日、日本代表入り記者会見での長田の言葉

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この会見で「80%の選手は固まっている」と語ったジェイミーHC。残りの20%に滑り込むためにも、トンガ戦での長田のプレーは要注目だ。

もちろん、若手の勢いにベテラン勢がどう抗うか、という点は洋の東西、競技の枠を超えて普遍的なテーマだ。その意味で注目したいのは、2大会連続でのW杯出場を目指すバックス陣最年長の35歳、山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ)。前節サモア戦で今季ジャパン初出場を果たすと、29日のトンガ戦でもフルバックでの先発出場が発表された。

サモア戦での山中は、得意のロングキックを遺憾なく発揮し、試合途中までは出色の出来。だが、1人少なくなったことも影響したのか、試合後半に自陣からの脱出を図るキックをチャージされてしまい、そのままトライを許す手痛いミスもしてしまった。

それでも、W杯の重み、代表の重みを知るベテランには、チームを鼓舞する意味でも期待は大きい。

そんな山中に対して、4年前のW杯日本大会が終わった直後に「4年後」をどう捉えているのか、聞く機会があった。

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「4年後はまだ考えていないです。35歳でバックスは難しいものがあります。だから、『4年後も出ます』とは簡単にはいえないけど、現役は続きます。まずは神戸での次の優勝に向けて、目標を切り替えていきたい。もちろん、日本代表に呼ばれれば参加しますが、先のことよりも目の前のことに全力を尽くしたいです」

~2019年10月30日、山中亮平へのインタビュー取材で

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その「目の前のことに全力」を4年間繰り返した結果として、35歳のいまも代表入りをかけた戦いができている。むしろ、左足から繰り出すロングキックの精度は、さらに凄みを増しているようにすら思う。

長田はセンターかウィング。山中はフルバックかスタンドオフ。ポジションは明確に被ってはいないが、くしくも同じ早稲田大学出身。代表入りをかけて譲れない思いは強く持っているはずだ。

前回のベスト8を超え、ベスト4以上を目指す日本にとって、そろそろW杯本番に向けて「勝利」という結果を手にしたいところ。そのなかでアピールをするのは誰になるのか? ラストサバイバルは、まさにここからがクライマックスだ。

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