経済アナリストのジョセフ・クラフトが8月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。広島市の平和記念公園で開催された平和記念式典について解説した。
広島「原爆の日」、平和記念式典に111ヵ国が参加
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8月6日、広島市の平和記念公園で平和祈念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)が開催された。2023年の式典には、過去最多となる111ヵ国とEUの駐日大使らが出席した。
G7広島サミットでの「広島ビジョン」が核軍縮への機運を呼び起こした ~松井広島市長の発言には現実とのズレ
飯田)広島市の松井市長が行った平和宣言のなかで、「核抑止論は破綻している。それを直視するべきだ」ということが言われています。それについては、どうご覧になりますか?
クラフト)生存者が少なくなっていくなかで、この悲惨な出来事を忘れないために、毎年こうしたイベントを行うことは重要だと思います。今回、外国からの参加者が過去最高だったのは、5月の先進7ヵ国首脳会議(G7広島サミット)で国際的な機運を呼び起こしたことが大きかったのではないかと思います。
理想論と核抑止のバランスを取り、同時に発信することが重要 ~唯一の被爆国の日本が掲げる理想論には重みがある
クラフト)松井市長の平和宣言については、確かに言っていることは理解するのですが、海外からの視点で言うと、現実は理想論とは少しズレがあります。
飯田)現実とのズレ。
クラフト)独裁者が理解するのは力だけです。従って、岸田総理が言ったように理想論と核抑止をバランスよく、同時に発信していくことが重要です。特に唯一の被爆国として、日本が掲げる理想論は非常に重みがあります。
飯田)日本の理想論は。
クラフト)一方で、海外の国々は抑止論や現実論で議論しているわけですので、そこを無視して理想論だけで議論すると上手くいかない。今回のG7は、両方のバランスを取って海外の意識を高めた。そこは評価できるのではないかと思います。
海外の見解も踏まえて、現実的な政策や議論が必要
飯田)G7広島サミットに合わせて出された核軍縮に関する文書「広島ビジョン」には、「すべての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界」という記述があります。これが批判を生む部分でもありますが、現実の面でもバランスを取ろうとすると、ある意味ではこういう表現になってくる。
クラフト)そうだと思います。被害に遭われた方にとってみれば不十分かも知れませんが、海外で会話をしていくなかでは、それぞれ違った意見がたくさんあり、1つの見解だけでは取り組んでいけません。
飯田)1つの見解だけでは。
クラフト)ここは、うまく日本が柔軟に海外の見解も踏まえて進める。最終的に理想とするのは核のない世界ですが、そこにたどり着くまでには、現実的な政策や議論が必要ではないかと思います。
原爆資料館を訪れ、悲惨な光景に衝撃を受けたバイデン大統領 ~アメリカのリーダーに「こういうことは2度と起こしてはならない」と思わせたG7は意義のあるサミットだった
飯田)ジョセフさんは日本とアメリカの両方で育ち、いまもお仕事をされています。アメリカ側には「戦争を終わらせるために核が必要だった」という意見もありますし、一方では日本からすると「これだけ悲惨なものを2つも落とした」という感情の部分が当然ある。この辺りについてはどうご覧になりますか?
クラフト)G7広島サミットではアメリカのバイデン大統領を広島に呼び、原爆資料館を見てもらいました。アメリカの言い分もわかるのだけれど、「それがこういう結果を生み出したのだ」ということを直視させた。米国務省の高官は、大統領が実際に見て「ものすごい衝撃を受けた」と言っていました。
飯田)バイデン大統領が。
クラフト)核が悲惨だということは頭ではわかっているのですが、実際に原爆資料館で悲惨な光景を見て、ハートでそれを感じ、アメリカとしても「こういうことは2度と起こしてはいけない」とリーダーが思う。そういう意味では、非常に意義のあるG7サミットだったのではないかと思います。
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