アメリカが台湾に望むことは「現状維持」 「独立」と言った瞬間に中国は武力行使せざるを得ない

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾・頼清徳副総統の訪米について解説した。

アメリカが台湾に望むことは「現状維持」 「独立」と言った瞬間に中国は武力行使せざるを得ない

米ロサンゼルス郊外での会談後、記者会見した台湾の蔡英文総統(左)とマッカーシー下院議長=2023年4月5日(ゲッティ=共同)

台湾の副総統が12日にアメリカへ出発

2024年1月の台湾総統選の有力候補でもある頼清徳副総統が、南米パラグアイの大統領就任式に出席する際、アメリカのニューヨークとサンフランシスコに立ち寄ることが8月2日に発表された。12日にニューヨークに立ち寄ったあと、南米パラグアイを訪れ、帰路は16日にサンフランシスコに立ち寄る予定。

飯田)中国側はこれに反発しているそうです。

宮家)台湾の副総統が行くということで、アメリカが政府のどのような人に会わせ、どのように連絡を取るのか、あるいは取らないのか。これが中国の本当の関心事だと思います。

アメリカが台湾に望むことは「現状維持」

宮家)以前、蔡英文総統が訪米したときは、マッカーシー下院議長が出てきました。そういうことをすると中国はまた断固反対、強烈な不満を言うわけです。アメリカは台湾に現状維持をさせたい。台湾に望むことはただ1つ、「独立なんて言うなよ」ということです。本来、民進党の人たちは独立系なのですが、そこは封印すると思います。台湾が独立と言った瞬間に、中国は武力行使をしてきますからね。

飯田)台湾側が現状変更をしようとしているではないかと。

宮家)武力を使わざるを得ない、戦争せざるを得ないのです。中国としてはやりたくないでしょうし、台湾もそこはわかっているので、昔のように「台独」などとは言いません。

麻生氏「戦う覚悟が求められる」 ~戦う覚悟がなければ抑止はできない

宮家)私が目を引いたのは、麻生さんが訪台して「戦う覚悟が求められる」と言ったことです。「よく言った」と思いました。

飯田)国際フォーラムでの演説でしたね。

宮家)「戦う覚悟」ということを、いままで誰も言わなかったかも知れませんが、戦う覚悟がなかったら抑止などできません。例えば飯田さんが私を殴ろうとしたとき、私が殴り返す覚悟がなかったら殴られるだけでしょう?

飯田)叩かれ放題になってしまいますよね。

麻生氏の発言に与党間での反発はない ~公明党を含め調整した上での発言か

宮家)殴り返す覚悟があるのは、抑止の基本中の基本です。実際に麻生さんの側近の人は、きちんと政府内部を含め調整したと言っています。公明党も含めて調整したのでしょう。ですので、日本国内では反発が出ていませんよね。

飯田)日本国内だと、野党の幹部は挑発的だというような話をしていましたが、与党間では何もありませんでした。

宮家)それは本音です。こういうことが言えるようになったけれど、それは当たり前のことなので、反対しない方がいいのです。「戦う覚悟がなかったら抑止なんてできない」と言いたいですね。

処理水の問題を政治化させて揺さぶりを掛ける中国 ~優位なポジションを取ったら「黙っていてあげる」というメッセージ

飯田)内部調整は「公明党も含めて」ということですが、一方で公明党は、山口代表が8月末に中国へ行こうとしています。その際、岸田総理に習近平氏宛ての親書を要請しました。行く前にこのような発言があっても、ある意味で「硬軟」のようなものだという考え方なのでしょうか?

宮家)軟だけでなく硬もあり、「日本との関係をどうするつもりなのだ?」と言えばいいのだと思います。中国はいま、福島の処理水のことで揺さぶりを掛けてきています。処理水の話は言いがかりでしかないと思いますが、彼らとしても、そんなことわかった上で政治化させているのです。

飯田)目的は政治。

宮家)中国も日本も、ある意味で関係改善しようとしているのは間違いありません。そのため、できるだけ優位なポジションを取って、日本が譲歩したら「黙っていてあげる」というメッセージです。

飯田)優位なポジションを取ったら。

宮家)それに対して、「何を言っているんだ。そんなことは中国もやっているではないか。政治化すればするほど、日本はアメリカの方に行くけれど、それでもいいのか? やるなら他の方法でやれ」というのが私のメッセージですが、向こうはわかってくれないでしょうね。

逆効果となる中国の強気な姿勢 ~かつての台湾総統選もミサイルを撃って逆効果に

飯田)北風と太陽で言うと、北風ばかり吹かせようとする感じですか?

宮家)彼らの典型的な政治手法ですが、とにかく言いがかりをどこかでつける。「言うことを聞いたら言いがかりをやめてあげる」という方法です。

飯田)台湾の総統選だけで考えても、かつてはミサイルを発射させ、結局は李登輝さんが当選した。毎回逆効果になっていますよね。

宮家)逆効果なのですよ。なぜ毎回、逆張りばかりするのか。

飯田)国内的にあまり弱腰は見せられないなど、そのような要因があるのでしょうか?

宮家)あれが「最も効果的だ」と信じているのだと思います。それ以外に説明がつきません。

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